2017年 1月

実務者のためのCAD読本

世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術
6th STEP 第5回:振れ偏差の使い方/全5回

機械系CAD 講師:山田学

5 振れ偏差の使い方

前回は、位置偏差の「同軸度/同心度」と「対称度」、「位置度」について学んだ。
今回は、振れ偏差に分類される「円周振れ」と「全振れ」、さらに幾何偏差の相互関係について説明する。

1. 振れ偏差

振れ偏差とは、「対象となる形体がデータムに関連して、回転体の表面の指定された方向の変位が偏差の許容値内にあるかを規定する」と定義される。
姿勢偏差や位置偏差と同様に、データムを参照することが特徴である。

振れ偏差には、次の二つの幾何特性がある。

  • 円周振れ
  • 全振れ

今回、「線の輪郭度」と「面の輪郭度」の説明は割愛する。

1) 円周振れ

円周振れとは、「データム軸直線を軸とする回転体をデータム軸直線のまわりに回転したとき、その表面が指定された位置または任意の位置において指定された方向に変位する許容値」と定義される。

つまり、円周振れの評価対象となる形体は、「回転する円筒表面上の1断面」と認識すればよい。

円周振れが適用する公差領域は、次の1種類のみである。

  • 回転する円筒表面上の任意の位置における1方向の変位

円周振れの図面指示例を見てみよう。

1 円筒面のラジアル方向への円周振れ

回転機能を持つ軸の円筒面に円周振れを指示する場合、基準となるデータムは必ず中心線指示とし、対象となる直径の寸法線と指示線の矢を外し、幾何公差値にφは付けない(図1)。

図1

円筒面の円周振れ指示例

円筒面の円周振れ指示例

公差領域は、赤い領域になる(図2)。このとき、測定位置は任意である。

図2

円筒面の円周振れの公差領域

円筒面の円周振れの公差領域

真円度測定機を使った場合の円周振れ計測イメージを写真1に示す。
円筒軸の任意の1カ所の位置における変位を測定し評価する。

※本例は一例であり、他の計測方法も存在する。

写真1

円周面の円周振れの計測イメージ

円周面の円周振れの計測イメージ

2 円筒端面のアキシャル方向への円周振れ

回転機能を持つ軸の端面に円周振れを指示する場合、基準となるデータムは必ず中心線指示とし、対象となる円筒幅の寸法線と指示線の矢を外し、幾何公差値にφは付けない(図3)。

図3

円筒端面の円周振れ指示例

円筒端面の円周振れ指示例

公差領域は、赤い領域になる(図4)。このとき、測定位置は任意である。

図4

円筒端面の円周振れの公差領域

円筒端面の円周振れの公差領域

真円度測定機を使った場合の円筒端面の円周振れ計測イメージを写真2に示す。
円筒軸の任意の1カ所の位置における変位を測定し評価する。

※本例は一例であり、他の計測方法も存在する。

写真2

円筒端面の円周振れの計測イメージ

円筒端面の円周振れの計測イメージ

2) 全振れ

全振れとは、「データム軸直線を軸とする回転体をデータム軸直線のまわりに回転したとき、その表面が指定された方向に変位する許容値」と定義される。
つまり、全振れの評価対象となる形体は、「回転する円筒表面の全ての面」と認識すればよい。

全振れが適用する公差領域は、次の1種類のみである。

  • 回転する表面上の全面における変位

全振れの図面指示例を見てみよう。

1 円筒面へのラジアル方向の全振れ

回転機能を持つ軸の円筒面に全振れを指示する場合、基準となるデータムは必ず中心線指示とし、対象となる直径の寸法線と指示線の矢を外し、幾何公差値にφは付けない(図5)。

図5

円筒面の全振れ指示例

円筒面の全振れ指示例

公差領域は、赤い領域になる(図6)。このとき、測定位置は全面である。

図6

円筒面の全振れの公差領域

円筒面の全振れの公差領域

真円度測定機を使った場合の全振れ計測イメージを写真3に示す。
円筒軸の任意の複数の位置における変位を測定し、総合的に評価する。

※本例は一例であり、他の計測方法も存在する。

写真3

円周面の全振れの計測イメージ

円周面の全振れの計測イメージ

2 円筒端面のアキシャル方向への全振れ

回転機能を持つ軸の端面に全振れを指示する場合、基準となるデータムは必ず中心線指示とし、対象となる円筒幅の寸法線と指示線の矢を外し、幾何公差値にφは付けない(図7)。

図7

円筒端面の全振れ指示例

円筒端面の全振れ指示例

公差領域は、赤い領域になる(図8)。このとき、測定位置は全面である。

図8

円筒端面の全振れの公差領域

円筒端面の全振れの公差領域

真円度測定機を使った場合の円筒端面の全振れ計測イメージを写真4に示す。
円筒軸端面の任意の複数の位置における変位を測定し、総合的に評価する。

※本例は一例であり、他の計測方法も存在する。

写真4

円筒端面の全振れの計測イメージ

円筒端面の全振れの計測イメージ

2. 幾何偏差の相互関係

今回までの5回の連載で、四つの幾何偏差全てを学習してきた。
この四つの偏差のうち、三つの偏差には次のような相互関係がある。

位置偏差 > 姿勢偏差 > 形状偏差

つまり、位置偏差の公差の範囲内には自動的に姿勢偏差が含まれ、その姿勢偏差の公差の範囲内には自動的に形状偏差を含むという関係である。

機能上要求される場合は、位置偏差に対して、さらに厳しい姿勢偏差、そしてさらに厳しい形状偏差を与えることができる(図9)。

図9

偏差の相互関係

偏差の相互関係

振れ偏差は、回転機能を持つローラーやプーリー、歯車などに使えばよいことが分かった。

また、四つに分類される幾何偏差のうち、「位置偏差>姿勢偏差>形状偏差」という相関関係があることも分かり、それぞれの役割分担が理解できたと思う。

今回の連載の学習を通して、設計機能を表現する場合や加工崩れを未然に防止する場合に、適切な幾何特性を正しく図面に指示できるよう図面を描いていただければ幸いである。

以上で「世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術 6th STEP <全5回>」を完結する。