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1 シンガポールでRTC ASIA 2015
2015年9月10日から3日間、シンガポールでRTC ASIA 2015というイベントが開かれ、筆者も参加した。RTCはRevit Technology Conferenceの略でRevitユーザーが集まる勉強会だ。アジアでの開催は初めてで、200名以上のユーザーがアジアとオセアニア各国から集まった。日本からも10名近い参加者があった。
開会のスピーチをするRTC EVENT議長Wesley Benn(ウェスレー・ベン)
2 設計者による建物解説
RTC ASIA 2015最終日にはパークロイヤル ピッカリング ホテルでディナーイベントがあった。このホテルはシンガポールの設計事務所WOHA Architects and completedによって設計された、緑たっぷりの建物だ。もちろんBIMによる設計なのだが、このディナーの席で設計者兼BIMマネージャーであるWOHA のRichard Kuppusamy(リチャード・クップサミィ)がこの建物の設計意図について発表してくれた。写真(画像1)の建物は棚田から発想を得たと聞いて、なるほどと参加者はうなずいていた。
ちなみに筆者はこのRichard KuppusamyによるRevitテンプレートの作り方クラスにも参加したが、実にていねいで詳細な実務にすぐ役立つ内容だった。
画像1
昼(左)と夜(右)のパークロイヤル ピッカリング ホテル
3 グニャグニャの建物
シンガポールは地震や台風も少ないので、さまざまなデザインの建物を見ることができる。今回訪れたのはZaha Hadid(ザハ・ハディド)設計の高級分譲住宅のドリードン・コンドミニアムだ。「真っすぐに建てたらあかんの?」と思わず突っ込みたくなるように壁面が斜めでねじれている。(画像2、画像3)
たぶん日本では耐震上こんなグニャグニャの建物は実現できないだろう。BIMでコンピューターの中に自由に粘土細工のようにモデリングできるのは分かっているが、斜めの壁の意図は筆者には分からない。
ところで、高層階の2LDKの部屋の分譲価格が日本円で1億3,000万円ほどだった。プールやテニスコート、バーベキュー広場など居住者専用の設備を見ると納得のいく価格だ(と思う)。
画像2
1階から7階まで外壁が斜め
画像3
窓ガラスも斜め
4 プレキャストの柱ファミリ
さて本題だ。あらかじめ工場で造られた部材を建設現場で組み立てて建物を造るプレキャスト構造というのがある。筆者は今、仲間と共にこのプレキャスト構造の建物をBIMでいかに合理的に施工するかという課題に取り組んでいる。
今回はこのプレキャスト構造とBIMの取り組みを報告しようと思う。プレキャスト構造では梁は柱の「アゴ」(画像4内の赤枠部分)に載る。つまり梁の有無や「せい(高さ)」によってアゴの有無と位置が変わる。
BIMアプリケーションのRevitを使ってこのアゴを持つ柱のファミリを作成した。一つの柱ファミリで東西南北のどの面にも梁に合わせてアゴが配置されるような工夫をしてある。このような賢い柱を使えば、プレキャスト構造の建物躯体をかんたんにモデリングすることができる。
画像4
プレキャストの柱と梁
画像5
Revitで作られたプレキャストの柱