シリーズ記事
1 どこまでモデリングする?
BIMでどこまでモデリングするか悩んでいる。設計内容がそのまま施工に結び付き、建設コストにも関わるという「実施設計」段階でどこまでモデリングするかに迷う。
ここにドアを入れたいけど、このBIMアプリケーションに用意されているドアはちょっと違うなぁ。でも似ているからこれを入れておいて、文字で「◯◯タイプドアを使用」と書いておくかな。発注者に3次元モデルを見せて勘違いされたら困るから、時間がかかってもきっちりと3Dモデルを作ろうか?
という迷いである。どこまで設計するかという迷いではない。どこまで設計するかは決まっていて、ただ標準にはないドアを2Dの図面や書き込み文字で表現するか、3Dモデルまで作り込んで表現するかだ。ARCHICADで図のようなドアをユーザーが作成すると1日以上かかってしまう。
ユーザーによって作り込まれたドア
2 LODで決めているけど
どこまで設計するかはLOD(Level Of Development 設計のレベル)という指標で設計にかかる前に決めている。例えば、窓でLOD 300なら次のような仕様としている。が、しかしこれでいいのかという迷いが残る。
[窓のLOD 300仕様]
窓ユニットは決まった位置に基本サイズでモデリングされる。
窓枠の外形寸法とガラス部の寸法は3mm程度の誤差以内でモデリングされる。
窓の開閉方法が表現される。
非グラフィック要素として次の情報を持つ。
- 外観要素(仕上げ、ガラスタイプ)
- 特性(U値、風耐力、防爆性能、構造耐力、空気、温度、水、音)
- 機能(ハメ殺し、ケーシング、ダブル・シングル、吊り、オーニング、すべり出し、スライド)
LOD 300の窓の表現
3 保育所の木製ドアの場合
筆者の属している設計事務所BIM LABOの実施設計の例を見てみよう。建物内部の木製のドアに注目してみる。
実施設計段階のモデルだ。このモデルで入札も行われるので決定版とも言えるが、保育士との打ち合わせで決めた指詰め防止の切り欠きがモデリングされていない。引違いドアの敷居の部分に床との段差ができるのかこのモデルでは分からない。
3Dモデル
同時に発行された設計では建具表の備考欄に「引違い戸のみ指詰め防止のためFLから1,000mmまで小口カット」と記載がある。
建具表
着工してから、現場での打ち合わせでFLから1,000mmの小口カットの指示は950mmに変更になって、木製建具の製作会社から次のような製作図が提出された。情報が過不足なく伝わって2Dの製作図に表現されている。
製作図
そして施工後の写真だ。床に段差はなく、指詰め防止の切り欠きも施工されている。
施工後の写真
4 図面で表現してもいい
筆者は本連載でBIMでは「ある程度まで」の詳細モデリングで済ませ、残りは2Dの書き込みで仕上げる方法を解説した。
BIM再入門-最適なツールの正しい使い方 第2回:<RevitとARCHICAD>どちらも詳細図は2Dで作る?
今回は建築の工事各段階の目的に応じたモデリングでいいと提案したい。先の保育所の木製ドアの場合、保育士や保護者の間で床に段差がないことに注目されていたとしたら、ドアを開けた状態の3Dモデルで床に段差がなくフローリングが廊下まで続いていることを強調したモデルを作成すべきだろう。指詰め防止や子どもたちの安全が議論になっていれば、ドアの指詰め防止切り欠きを「これでいいですか?」という意味で発注者に確認する詳細なモデルにした方がいい。
一方、施工会社に対する指示としてはこれらのモデリングは不要だ。建具表や内部仕上表に専門用語を使ったテキストを記載しておけば十分だ。3Dのモデルも不要だ。初めから何から何まで3Dモデリング、建具部品を作ることから始めようなどと考えているとBIM導入に失敗する。
2Dの図面で表現した方が伝わりやすい相手と、その内容なら2Dの図面で表現すべきだ。
BIMモデルの断面(左)とモデルに2D要素を加筆して仕上げた図面(右)
5 PDFをBIMで使う-ARCHICADの場合
2D図面をBIMアプリケーションで使うときに必要なのがPDFの使いこなしだ。PDF図面をBIMアプリケーションに使う方法を紹介する。
まずはARCHICADでの手順だ。
- [ファイル]メニューから[外部参照]→[外部図面を配置]を選択する。
- 「図面を配置」ダイアログボックスで[ファイルの種類]を[PDFファイル(.pdf)]とし、使用するPDFを選択して[開く]ボタンをクリックする。
- ビューの適当な位置をクリックしてPDF図面を配置する。
- 表示されたPDF図面は「参照パレット」で表示方法をコントロールすることができる。
「参照パレット」を使って参照表示したPDFの一部を表示
6 PDFをBIMで使う-Revitの場合
Revitでも同じようにPDFファイルを使ってみる。実はRevitにPDFをいきなり読み込んで表示させることはできない。そこで使えるのがAutoCADを経由するテクニックだ。PDF→AutoCAD→Revitと2段の手順で読み込む。
- AutoCADの「PDF読み込み」(PDFIMPORT)でPDFファイルを読み込んでおいて、DWGファイルとして保存する。
AutoCADでPDFを読み込み
- Revitでは「CADをリンク」もしくは「CADを読み込む」でPDF図面を貼り付けられたAutoCADで作られたDWGファイルを指定して読み込む。これで寸法も正確でスナップも効く下敷きとして読み込むことができる。
RevitでDWGを読み込む