2019年 7月

実務者のためのCAD読本

親子関係を管理する【モデリング実践/第5回】

監修:山田学 執筆:草野多恵

フィーチャーベースモデリングにおいては「親子関係」をしっかりと意識し、自身でコントロールできるようにしよう。これにより作業効率が良く、かつエラーを起こしにくいデータを作ることが可能になる。今回は、具体的な例を紹介しながら失敗の少ない、効率的な親子関係を構築するコツを解説する。

この連載について

今回の連載「モデリング実践/全5回」では、モデリング手法の実例を元に、それぞれの仕組みを使用する実践方法を解説します。

シリーズ記事

1.親子関係を意図して設定すれば大いに効果的

モデリングを行う際には必ず既存フィーチャーまたは既存の参照平面(CAD製品によっては「データム平面」と呼ぶ)を参照して新しいフィーチャーを作成する。「参照」とは、例えばスケッチ平面を選択する、寸法を配置するなどの操作である。これらの操作を行うことで、参照先と参照元(これから作成しようとしているスケッチやフィーチャー)との間に親子関係が発生する。

【例1】:スケッチを作成するための平面を選択すると、その平面または平面を持つフィーチャーとの間で親子となる。(図-1)

図-1 スケッチを描く平面として既存フィーチャーの上面を選択している

これにより、既存フィーチャーの上面に乗せておきたいフィーチャーがあれば、高さが変わっても既存フィーチャーの上面に乗っている状態は維持されるので意図どおりに運用できる。(図-2)

図-2 土台(親)の高さを30mmから50mmに変更すると、上面が上に向かって移動すると共に、その上にある高さ30mmのフィーチャー(子)も移動している

【例2】:スケッチを描く際に、既存の円弧と同心の位置に円を描こうと既存の円弧エッジをクリックすると、その時点で親子となる。(図-3)

図-3 スケッチ拘束条件の「同心」により、既存フィレットのエッジを選択している

フィレットのサイズが変わると中心位置が移動するが、穴は常に同心位置に置いておきたいという意図を維持することができる。(図-4)

図-4 フィレットのサイズを変更すると、同心でそろえている穴の位置が連動して移動している

【例3】:スケッチ四角形と既存フィーチャーのエッジとの間に寸法を記入したその時点で親子となる。(図-5)

図-5 寸法コマンドを使用して既存フィーチャーのエッジから寸法でフィーチャーの位置を拘束している

四角形の大きさを決める際に、四角形の大きさを指定するのではなく既存フィーチャーの端からの幅を優先したいという意図で、既存フィーチャーから寸法を拘束しているので、既存フィーチャーの大きさが変わっても端からの寸法は維持される。(図-6)

図-6 土台の大きさを変更しても端からの幅は維持されている

これらの例は全て、意図的に行っているのであれば全く問題がないどころか、効果的な親子関係を形成している例であり、意図したとおりに親子関係を設定することで、親への変更が確実に子に伝わり、意図を維持することが可能となることが分かる。

2.親子関係を意識していないと思わぬエラーの可能性

では次に、あまり考えずに操作をした結果、意図しない親子関係が発生し、後になって困るという例を紹介する。図-7を見てみる。大きい円の配置寸法として、左端から50mm、上端から35mmとなっている。

図-7 大きい穴の位置を決定するための寸法を表示している

円の中心位置を決める寸法を部品の外形から拘束したいという意図でこのような寸法を記入すること自体は全く間違いではない。しかし3Dモデリングの中で操作をするに当たっては、注意したい点がある。この正面図には奥行きが存在しているという点である。図-8は、このパーツを斜めから見た様子で、50mmの寸法を配置している垂直線の位置を見ている。図-7では1本のラインであるが、実はここには三つの要素が重なっているのである。

図-8 部品を50mmの寸法を付与した方向から見ている

2本のエッジはともに、フィレットの接線エッジである。スケッチを描く際には通常、正面から見た状態で描くことが多いと思われるが、そのような場合に無意識でエッジがある位置をクリックすると、図-8の“エッジ1”が選ばれがちである。しかし通常、フィレットのエッジを参照として使用することは避けるべきである。フィレット フィーチャーはエッジに依存しており、後々そのエッジに関わる何らかの設計変更を行った際に、フィレットから参照を取っているとエラーの発生率が高くなるからである。例えば単にフィレットが不要になったからと削除すると、参照しているエッジがなくなるのでこの円形スケッチがエラーになってしまう。

従って通常は、フィレットからは参照しないように心掛けるようにしたい。このような場合、最も望ましいのは側面の「平面」から寸法を記入することである。ただし一部のCAD製品では寸法記入の際にソリッドの平面を使用できないものもある。その場合は、エッジを使用することになるが、図-8の例でいうと“エッジ2”を選択することが望ましい。なぜなら“エッジ2”はベースフィーチャーを構成しているラインであるので、子のエッジがなくなる可能性は無いに等しいからである。

なお、フィーチャーベースモデリングの基本としては、フィレットや面取りを追加するのは、ある程度形状が決まってからの方がよいとされている。部品形状を作り込んでいくと、エッジの形状や位置は移動したり見えなくなったりする可能性が高いので、早い段階で拘束を追加してしまうと結局後で修正をしなければならなくなる可能性が高くなるからである。この例の場合、フィレットを追加する前に大きい穴を作成するという順番で操作をしていれば、うっかりフィレットのエッジを選択してしまうということを回避することができる。

このように、フィーチャーを作成する際には一つ一つのクリックが参照関係を発生させるので、どのエッジ、どの平面をクリックしているのかということを常に意識する癖をつけるようにするとよい。面倒なことだと思うかもしれないが、寸法を記入する際には終始一貫して正面から見ているのではなく、状況によっては3Dモデルを斜めから見えるように回転させた状態にして作業をするようにと意識すると、おのずと選択する要素も意識できるようになる。

ここまで連載5回にわたって、CADの基本的な特徴を理解したうえで上手に使いこなす方法を具体例に基づいて解説してきた。実際の業務の中でぜひ活用してもらいたい。

シリーズ記事

執筆者紹介

草野多恵

大手メーカーの宇宙航空事業部門にて、設計から納品までのプロセス管理を担当。
製造業での実務経験を生かし、CADベンダーで約20年間一貫して製造業向けに3D CADの営業技術などを担当。
現在はフリーランスとして、効果的なCAD導入を支援する活動を行っている。

監修・執筆

山田学

ラブノーツ代表取締役、技術士(機械部門)。設計製図の企業内教育を種に活動。著書に『図面って、どない描くねん!』『めっちゃメカメカ! リンク機構99→∞』(共に日刊工業新聞社刊)など。

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