この連載について

シリーズ全5回のテーマを以下に設定した。BIMについて、アプリケーションの使い方やノウハウを中心に紹介したこれまでの記事から、少し違う方向にハンドルを切って「BIMでこう変えていこう」「BIMをこう変えていこう」と提案できるような記事にしていきたい。

シリーズ記事

1.なぜ複数アプリと連携するのか

建物をコンピューターの中で作り上げるのがBIM(Building Information Modeling)だ。作り上げた建物は、3Dのモデルや2Dの図面・書類を成果品として表現される。ユーザーはBIMアプリケーションRevitやARCHICADのみの操作方法に習熟しただけでは一人前ではない。構造計算ソフトウェアにもBIM連携を前提とした使い方があるし、BIMから2Dの図面を早く作成するには2DのCADを上手に使えないといけない。

BIMアプリケーションを使う設計者やオペレーターは、RevitやARCHICAD以外のアプリケーションを自由自在に使いこなせないといけない。BIMアプリケーションとほかのアプリケーションとの連携を取り上げて、さらにその使い方を紹介しよう。今回取り上げるのは次のアプリケーションだ。

2.AutoCADと連携する

BIMアプリケーションがあっても2DのCADは依然としてよく使われている。RevitやARCHICADとともに2DのCAD、例えばAutoCAD(筆者の場合はAutoCAD OEMのaddCad)を使う場面は多い。例えば断面詳細図上で、ある範囲を「部分詳細図による」と記入しておいて、その部分詳細図を別に2Dで作図するといった場合だ。

もちろんRevitやARCHICADにも2D作図ツールは用意されている。線を引いたり、線と線をフィレットしたりといった基本的な2D作図機能もある。ただしダイナミック ブロックを挿入して形を変えたり、PDFをトレースして図面にしたりというような特別に便利な機能はない。RevitやARCHICADでもできないことはないが、AutoCADなら簡単に短時間でできる作業の場合、どちらのアプリケーションを使うべきだろうか? 筆者ならAutoCADを使う。

図はARCHICADで断面詳細図の一部を部分詳細図記号で囲んでおいて、その範囲にAutoCADで加筆して、最終的にはARCHICADでの部分詳細図として仕上げた例だ。

断面詳細図の一部を部分詳細図範囲と指定(ARCHICAD)

AutoCADで加筆して仕上げる

AutoCAD図面を重ねて完成した部分詳細図(ARCHICAD)

3.一貫構造計算ソフトウェアと連携する

一貫構造計算アプリケーションとの連携を考える。ここではユニオンシステム株式会社の「Super Build/SS7」を取り上げる。

構造技術者は構造モデルを作って計算することを目的としている。その構造モデルが意匠モデルの中でどう使われるかという、意匠モデルとの整合性は軽視しがちだ。そのため、往々にして梁(はり)の寄り、梁のレベルなど直接計算結果に影響しない要素が後回しになってしまう。構造計算アプリケーションSS7側で入力できる梁の寄りや下がりを、意匠モデルに合わせてきちんと入力しておけばBIM連携が実現しやすい。構造モデルをSS7から作成して、意匠モデルと重ね合わせたときにきちんと整合する。

「部材の寄り」(Super Build/SS7)

「梁のレベル調整」(Super Build/SS7)

レベル(フロア)と通芯も大事だ。筆者は構造スラブの天端をSLとして基準レベルにするようにしている。そうすることで構造的にすっきりする。意匠側の仕上げ天端を示すFL表記は使わない。

通芯も同じで構造の壁厚や、鉄骨造の場合の胴縁サイズなどを先に決めておいて、柱芯が揺れ動かないようにする。もちろん通芯符号は構造も意匠も同じものを使う。

4.ビジュアル プログラミング ツールと連携する

この連載の第2回、第3回でビジュアル プログラミング ツールを使ったコンピュテーショナルデザインの手法を紹介してきた。

これからのBIMでは、何回もの試行錯誤やベテランの経験知に依存して得てきた解を、計算によって解く手法が必要になる。オフィスでの窓や机の適切な配置、先の記事で紹介しているような構造モデルにおける適切なスパンなどコンピュテーショナルデザインの守備範囲は広がるだろう。

ビジュアル プログラミング ツールとBIMアプリケーションの関係について表にまとめてみた。よくARCHICADユーザーならGrasshopper、RevitユーザーならDynamoと使い分けるように言われるがそうでもない。Grasshopperで計算し、結果をRhinocerosで形にしてRevitに読み込むというユーザーも多い。逆に、ARCHICADにDynamoの計算結果を読み込むという形は少ないかもしれない。

ビジュアル プログラミング ツールとBIMアプリケーション
(△は別途追加プログラムなどが必要)

BIMアプリできることDynamoGrasshopper
RevitRevitの要素を選択して計算対象に
計算結果をRevitモデルに直接反映
計算結果をRevitモデルにファイルとして読み込み
ARCHICADARCHICADの要素を選択して計算対象に×
計算結果をARCHICADモデルに直接反映×
計算結果をARCHICADモデルにファイルとして読み込み

5.Excelと連携する

WordやExcelというOfficeアプリケーションを使うスキルは必須だ。特にExcelは奥が深い。複雑な面積計算を分かりやすい表にまとめるということぐらいはすぐにできる。RevitでもARCHICADでもExcelに表を書き出すのは標準コマンドを使ってできる。

ここではRevitからExcelに書き出して、Excel上でデータを変更してさらにRevitに読み込むという作業を紹介しよう。図の梁伏図で「GX2」などとなっている梁符号全てに階を示す数字を追加して、例えば「5GX2」とする例だ。梁が50種類ほどあるので一つ一つ手作業でタイププロパティを変更するのは時間がかかるし、間違いも起きやすい。

Autodesk社のExtensionPack2021 for Architectureを使えば、そんな作業をアプリケーションが行ってくれる。手順は次のとおりだ

Autodesk®Revit ExtensionPack2021 for Architecture(Autodesk社のWebサイトが開きます)

  1. 「JP建築」タブの「建築」パネル「エクセル」→「エクスポート」を実行
  2. 書き出し範囲として「プロジェクト全体」を指定
  3. 「Excelエクスポート」ダイアログボックスで「構造フレーム」の「T:符号」プロパティを選択
  4. 図のようなExcelシートが作成される
  5. Excel上で式を作って「T:符号」の列の値を変更
  6. 「エクセル」→「インポート」で読み込むと全ての構造フレームの「T:符号」プロパティが変更される

「JP建築」タブの「建築」パネル「エクセル」→「エクスポート」を実行

「Excelエクスポート」ダイアログボックスで「構造フレーム」の「T:符号」プロパティを選択

構造フレームのプロパティが書き出されたExcelシート

「エクセル」→「インポート」で梁伏図の全ての梁記号が変更された

6.情報処理技術と連携する

BIMアプリケーションとは直接関係ないのだが、新型コロナ感染症の影響で、オフィスでの一人作業やクラウド、サーバーを使った作業が増えた。そうなるとインターネットやローカルのネットワークにトラブルがあったときに、情報システムの担当者を頼ってはいられない。

よくあるトラブルはこんなところだろうか。情報処理技術の初歩技術はマスターしておきたい。使用するコマンドはipconfig、nslookup、pingぐらいでいい。この三つのコマンドでネットワークが社内・社外でどうつながっているかが分かり、職場のネットワークトラブルはほぼ解決する。

Windowsのコマンドプロンプトでipconfigを実行

2D CAD、専門分野のソフトウェア、ビジュアル プログラミング ツール、Excel、情報処理技術と、BIMアプリケーションユーザーが使わなければならない五つの技術を例として取り上げた。これらはあくまで例だが、これらの技術に精通していれば間違いなく業務効率が向上するという例だ。いずれも難しい技術ではなく、新人研修で1項目1日として1週間でマスターできる内容だ。

新しい時代に、建築技術者像が新しく変わろうとしている。

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