この連載について

基本要素を用いながら、より具体的な設計使用方法を解説する。また、主要な3D CADでの手法も併せて解説する。

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1.軸端部のねじ(めねじ、おねじ)

3D CADでは通常、「ねじ」という属性を付与して表現することができる。その際、通常はねじ山をモデリングしない。属性が付いているので必要な情報は保たれている。ねじ山をモデリングすると、非常に細かい形状であるためデータ容量が格段に増えるので、それを回避する目的もある。CAD製品によっては、ねじ山をモデリングするかどうかを選択できるオプションが付いているものもある。

1-1 めねじ

めねじは通常、穴作成専用の「穴」コマンドを使用する。「穴」コマンド内で、ねじ穴か否かの選択や、口元の処理(ざぐりや皿面取りの有無)を行い、穴のサイズを指定して作成する。実際に出来上がるねじ穴は、前述したようにねじ山は作成されないが見た目で分かる工夫がされていることが多い。(図-1)そして属性が埋め込まれているので、この部品を2D図面化した場合には、自動的にねじの情報を読み取ってねじ寸法を表示することができる。(図-2)

図-1 めねじをモデリングした例:穴自体の直径は谷の径、その外側に見える円は外径を表現している

図-2 ねじ穴をモデリングした部品の2D図面を作図した例

  • *JIS製図のルールでは、ねじを正面から見た投影図では、ねじの谷底の線の右上方の約1/4円を切り欠くのがルールであるが、3D CADシステムによっては忠実に投影図を表現できるまでには至っていない。よって、JIS製図のルールに従わずに、旧JISのように全円形状として作図することがある。企業ごとに対応方針が分かれるため、確認をおすすめする。

図-3では、穴のモデリングをする際のユーザーインターフェイスの例を示す。(Autodesk Inventorを使用)

操作としては基本的に、以下に示す三つを指定する。

(1)穴のタイプとして「ねじ」を指定する。

(2)ねじの種類を選択する。例として図の中では、ISOメートルねじ、サイズ 8、呼び径およびピッチ(「並目」「細目」という選択肢ではなく、ピッチの数値で選択するCADが多い)としてM8x1.25を選択している。なお、M8の並目ピッチは1.25である。

(3)深さの指定。貫通穴ではなく、深さを指定する場合はねじの深さと下穴の深さの両方を同時に指定できる。

図-3 めねじの穴を作成する際のユーザーインターフェイスの例(Autodesk Inventor)

1-2 おねじ

おねじの場合は、先にねじを切ることになる軸部分を円筒状で作成しておく。その表面に「ねじ」定義を付与する。

図-4の例は、円筒面にねじを設定しているところである。「ねじ」作成コマンドを実行して円筒面を選択すると、円筒の直径値を読み取ってサイズは同じものが適用される。図のように全ねじではない場合はオフセット量(ねじを切らない範囲)を指定することで調整が可能である。

図-4 おねじを作成する際のユーザーインターフェイスの例(Autodesk Inventor)

2.二面幅形状(小判形、四角形、六角形、すり割り・スリット)

工具を差し込んで締めたり、回り止めに使用したりする二面幅には、小判形、四角形、六角形がある。また、同じく二面幅の形状としてすり割り・スリットがある。こちらはマイナスドライバーを使用するための形状である。

これらの形状を3D CADで作成する場合の考え方は全て同じで、二面幅となる部分を軸本体に対して追加する手法で作成する。各形状の例を図-5に示す。

図-5 各形状を3D CADで作成したものの例

これらの形状の特徴は以下のとおりであるが、作成する際の考え方は全て同じである。

作り方の例として、四角形を取り上げる。

スケッチのポイントは三つである。各ポイントの場所は図-6に示す。

(1)軸本体の中心と、各平行線の中心を確実に合わせる。

(2)本体の稜線を各二面幅形状の外形線として使用するために、コピーする。コピーの際には稜線との関係性を保つ要素を追加するコマンドを使用し、万一本体軸の直径が変更されても追従するようにしておく。この機能のコマンド名は、各CAD製品によって異なる。
一部の例を示す。

SOLIDWORKS:エンティティ変換
Inventor:ジオメトリを投影
Fusion 360:プロジェクト

(3)全ての並行な直線間の幅寸法を確実に同一にするために、「同じ値である」ということを示すスケッチ拘束を設定しておく。これは必須ではないが、ミスを防ぐ手段として有効である。
これも一部の例を示す。

SOLIDWORKS:等しい値
Inventor:同じ値
Fusion 360:等しい

図-6 二面幅形状スケッチのポイント

スケッチができたらこれを押し出す。押し出す際には内側の領域だけを選択するように気を付ける。(図-7)

図-7 押し出す際に選択すべき領域

すり割り・スリットの場合は両端を残さず切り抜くので、図-7のような注意は不要である。くりぬく深さは決まりがあるので間違えないように気を付ける。

図-8 すり割り・スリットの作成例

3.キー溝(軸側と穴側)

キー溝は、軸側、穴側ともに、溝の深さを指定する位置がポイントとなる。図-9を確認すると、深さの基準位置は軸本体の外径位置から取っていることが分かる。(t1およびt2)
従って、この位置をポイントにしてスケッチを描き、押し出し形状を作成することになる。これは軸側、穴側問わず共通である。

図-9 キー溝の寸法

3-1 エンドミルを使用して切削するキー溝の場合

軸側のキー溝は、図-10のように終端を半円にしなければならない。これは円筒形状の刃物であるエンドミルを途中で止める工程になるからである。

図-10 軸側に作成したキー溝の例

このようなキー溝を作成するには、キー溝を上から見たスケッチを作成し、そこから押し出してカットする方法がよい。その際、スケッチはt1寸法を表現することができるようにする。つまりスケッチを描く平面を、円筒に接する位置に設定するということになるが、その位置には平面がないのでスケッチのための仮想的な平面を用意することになる。仮想的な平面は各CADによって呼び方が異なっている。

SOLIDWORKS:参照平面
Inventor:作業平面
Fusion 360:構築平面

図-11 軸にキー溝を作成するために事前に用意した平面

この平面にスケッチを描いて押し出しカットをしている例が図-12である。

図-12 円筒面に接する平面にスケッチを描いて押し出しカット

3-2 キーシートカッターを使用して切削するキー溝の場合

この場合はキーシートカッターの半径値に合わせた終端形状となる。(図-13)

図-13 キーシートカッターを使用した場合のキー溝

作成時のポイントは以下のとおりである。

(1)スケッチの際、円筒の外周を「稜線との関係性を保つ要素を追加するコマンド」を使用して取得し、その位置から深さを指定する。

(2)使用するキーシートカッターの半径値で作図する。もしくは任意の半径値でモデリングし、出図の際に「カッターR」とする。

(3)押し出す際に「対称」オプションを使用し、スケッチに対して均等に厚みがつくようにする。

3-3 上記1、2以外の場合

1、2以外の場合、これは特に穴側のキー溝で奥行きの指定なしで貫通させる場合である。このような場合は図-14のように溝の始点位置にスケッチを描き、押し出すのが最も簡単な方法である。

図-14 貫通させるキー溝の作成例

この場合のスケッチのポイントは3カ所である。

(1)二面幅のときと同様、稜線との関係性を保つ要素を追加するコマンドを使用して穴の外形線を取得する。

(2)t2寸法を得るために、穴の稜線の延長線上と中心線との交点を確実に拾うようにする。確実に拾うためには、交点の位置に「点」を追加しておくとよい。

(3)両端の垂直線の端点は、確実に円筒の稜線で止めておくと、この後の押し出し形状をきれいに作成できる。

キー溝の場合は作成する形状によって作り方が異なってくるので、最初に形状を確認し、どの作り方が適しているのかを判断することが重要である。

次回は引き続き、そのほかの詳細形状の作成手法やそのコツなどを解説する。

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