この連載について

基本要素を用いながら、より具体的な設計使用方法を解説する。また、主要な3D CADでの手法も併せて解説する。

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1.軸のテーパ形状

軸のテーパ部の形状を作成する場合、作成方法として考えられるのは「押し出し」または「回転」の2種類である。
テーパ部の設計をする場合、基本的にはテーパの角度は自由に設計することができるので、どのような思想で設計するかによってどちらの方法で作成するかを決定すればよい。その際には、「押し出し」および「回転」においておのおの以下の特長があるので選択の指針にすればよい。

押し出し

押し出し時にテーパ角度を同時に追加することができる(CADによって「テーパ」、「抜き勾配」等の表現あり)。角度を指定するので、テーパの大径と小径の寸法を基準にする場合には不向きである。

回転

回転体のスケッチ作成時にテーパを表現するため、スケッチ内での寸法記入をどのようにするかによって、角度の指定、または大径と小径の寸法の指定、どちらも選択可能である。

上記の点から、比較的「回転」を使用した方が作成しやすい。
ただし、現実的には加工や検査のことを考えて、JIS B 0612で規定されているテーパ比から選択するとよいとされている。

図-1 テーパ比1/10の軸端

テーパ比1/10は10mm長さが変化すると直径が1mm変化するということなので、回転で立体化するためのスケッチは図-2に示すように寸法を記入すると分かりやすい。
(図-2はあくまで一例であり、絶対的な方法ということではない)

図-2 テーパ比を表現するスケッチ寸法記入例

図-2内の「軸直径-1mm」は寸法値を直接入力せず、関係式を使用している。寸法に関係式を記入するテクニックについては、以前の連載『「パラメトリック」を理解する【モデリング手法/第4回】』および、『「パラメトリック」を使いこなす【モデリング実践/第4回】』を参照のこと。

「パラメトリック」を理解する【モデリング手法/第4回】

「パラメトリック」を使いこなす【モデリング実践/第4回】

2.止め輪などに使う円筒溝形状

C型止め輪(スナップリング)およびE型止め輪(Eリング)用の溝、Oリング用の溝については、その用途に違いがあるだけで形状としては本連載「軸部品の詳細形状モデリング(1)【基本要素形状のモデリング/第3回】」の「2.段差部に設ける隅の逃がし形状や隅の丸み」と同じであるため、「押し出し」または「回転」のどちらでも使用可能である。

軸部品の詳細形状モデリング(1)【基本要素形状のモデリング/第3回】

また、これらの止め輪およびOリング用の溝のサイズはおのおのJISで定義されているため、上記第3回で解説したパラメータによる計算式の設定も特に必要はない。

なお、軸部品によっては「せぎり」を付ける場合がある。せぎりは用途としては、セットスクリューを使ってローラーや歯車を固定する際にセットスクリューの先端部によって軸に傷がつくことで、分解する際にローラー内径と傷が引っ掛かり、外せなくなってしまうことを避けるためのものである。このような逃げのための形状であることから特にJISでサイズは定義されておらず、自分でサイズを決めることになる。例えば、6mm~10mm程度の軸のせぎりは、直径よりも0.5mm細くする。つまり以下の関係式になる。

d2=d1-0.5

図-3 せぎりの寸法例

この場合は、第3回で解説したようなパラメータによる計算式を用いるのも効果的である。実際の3Dモデル内での設定例を図-4に示す。軸の直径寸法に対して「軸直径」、せぎり直径寸法に対して「せぎり直径」とおのおの名前を設定し、せぎり直径の値に対して軸直径から0.5mm差し引く計算式を設定している。

図-4パラメータ設定の例

3.Dカット形状

Dカット形状は、用途としてはせぎり同様、傷による影響の回避であることから、これもサイズに関して特に定義はない。もしも目安の決まった数値がある場合は、せぎり形状同様にパラメータの関係式を設定しておくとよい。
形状作成方法については、本連載「軸部品の詳細形状モデリング(2)【基本要素形状のモデリング/第4回】」のキー溝と似ているのでこれと同じ作り方でもよいが、キー溝と違って幅は必要なく、切り落とし形状であることから、より簡単な方法も考えられる。

軸部品の詳細形状モデリング(2)【基本要素形状のモデリング/第4回】

図-5 Dカット形状

例として図-6のようなDカットを作成する場合の手順を示す。

図-6 Dカット形状の例

図-6のDカットの作成手順の例

(1)Dカット両端のどちらか片方の位置に仮想平面を作成する

(2)先の(1)で作成した仮想平面上にDカットの断面形状をスケッチする

Dカットの底面に当たる直線を作図。寸法値は、パラメータ計算式を使用するのであれば、この時点では適当な数値にしておいてよい。後で式を設定する。

(3)先の(2)のスケッチを使用してカット部分を押し出す

(4)計算式を設定する

上記はあくまで作業手順の一例である。

4.軸直角の穴やねじ

軸直角の方向に穴やねじ穴を開けるのは、部品の位置決めや歯車やプーリーなどの回転方向の固定、抜け止めのために、ピンを軸直角に配置したい場合である。そのピンを入れるための穴を作ることになる。ピンの種類は用途により、スプリングピンや平行ピンがあるが、ここでは用途にかかわらず、軸に穴を開ける方法を解説する。

どのような穴、またはねじ穴であっても3Dで作成する方法は、これもやはり前述の「軸部品の詳細形状モデリング(2)【基本要素形状のモデリング/第4回】」のキー溝と考え方は同じである。円周面から穴の深さを指定する場合は全く同じ方法で作成すればよい。これは特に、ザグリのある穴を作成する場合によくあることである。

ザグリがなく、軸に対して貫通する穴やねじ穴を作成する場合は、仮想平面を設定する必要がないので手順を減らすことができる。

以下、図-7に示すような穴を作成する際の手順の例を示す。(分かりやすいように半断面図にしている)

図-7 軸直角の穴の例

軸部品は、本連載「モデリング開始前の準備と基本知識【基本要素形状のモデリング/第1回】」で解説した。

モデリング開始前の準備と基本知識【基本要素形状のモデリング/第1回】

上記で解説したように原点の平面を基準に作成するべきであり、そのように作成している前提で以下解説する。軸の中心軸を通過している原点平面二つのうちどちらかをスケッチ面として選択し、穴を配置したい位置に点を作図する。

「穴」フィーチャで、「両側」、「貫通」(CAD製品によっては「全貫通」)で穴を作成する。
(本図はAutodesk Inventorの例)

最後に、繰り返しになるが3Dの形状作成方法において正解はない。大事なことは、いかに設計の意図を盛り込めるかという点である。設計の意図を盛り込むテクニックとしては、今回頻繁に使用した寸法パラメータ間の関係式が代表である。従って、いかに設計として守りたい寸法を記入し、関連するほかの寸法との間で関係式を設定することができるかがポイントである。

本連載はここまで全5回にわたって基本要素形状のモデリング、主に軸部品の形状作成手法について解説してきた。次回シリーズは引き続き、軸部品以外の基本要素形状モデリングについて解説する予定である。

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