この連載について

基本要素を用いながら、多面体形状をより具体的に設計する方法を解説する。また、主要な3D CADでの手法も併せて解説する。

シリーズ記事

  • *大塚商会では本稿で紹介している全ての製品を取り扱いしているわけではありません。
    お客様のご希望製品の取り扱いがない場合もありますのであらかじめご了承ください。

1.3D CADにおける面取りおよび角や隅の丸み形状作成手法

金属はもちろん、プラスチック成形品などにおいても加工の段階で端面の稜線(りょうせん)に必ずバリまたはカエリと呼ばれる毛羽(けば)が発生する。これらをそのままにしておくと組立作業者やユーザーが触れてけがをする可能性があるため、それを防ぐために処理をするが、それらを総称して「面取り」と呼ぶ。そしてこの面取りには、斜めに切り落とすような形状の45°面取り(通称として「C面取り」と呼ばれることが多い)と、丸みを付けるR面取りの2種類がある。

ほぼ全ての機械設計向け3D CADでは、機械加工に必須であるこの面取りおよび丸み形状を作成するためのコマンドが搭載されている。これらについては各CADともコマンド名はほぼ同一で、45°面取りを「面取り」、丸みのことを「フィレット」と呼んでいる。なお、フィレットは角および隅の両方に作成する場合があるが、どちらの場合も「フィレット」コマンドを使用する。

おのおの、CAD上での操作も同じで、面取りまたは丸みを付けたい稜線(CAD上では「エッジ」と呼ぶ場合が多い)を選択したらサイズを指定するだけである。そこで、ここでは作成の際の注意点を解説する。

2.面取り、フィレットともに操作は非常に簡単

まず、「面取り」および「フィレット」を作成する基本操作を以下に示す。
ここでは例としてAutodesk Fusion 360を使用しているが、どのCAD製品でもこの基本操作の方法については大差がない。

図-1はC面取り作成を行っているところである。「面取り」コマンドを実行したら、次に面取りを作成するエッジ(稜線のこと。以下エッジと呼ぶ)を選択し、面取りサイズを入力したら完了である。

図-1 C面取り作成の様子

図-2では、フィレットを作成している。出来上がる形状が異なるだけで操作は全く同じ。コマンド実行後にエッジ選択とサイズの入力で形状が作成できる。

図-2 フィレット作成の様子

3.エッジの選択順によって出来上がる形状が異なる:45°面取りの場合

上記のように、操作自体はエッジを選択するのみなので非常に簡単であるが、注意しなければいけない点がある。それは、三つ以上のエッジが交差する箇所の形状である。今回は、Autodesk Fusion 360、Autodesk Inventor、SOLIDWORKSを使用してC面取りを作成してみたところ、CADメーカーによって少し挙動が異なっているので、それも含めて説明する。

図-3はAutodesk Fusion 360で作成した例である。この図のように交差部分の形状を2種類から選択できるようになっている。(Fusion 360は厳密に言うと3種類の選択肢があるが、残りの一つは特殊な形状なのでここでは割愛する)同じオートデスク社製品のAutodesk Inventorもこの方式である。

物理的にこれら三つの稜線に沿って順に刃物を走らせて切削すると出来上がるのは、図-3の右側の形状である。

図-3 面取りの交差部分の形状 2種類

次にSOLIDWORKSであるが、オートデスク製品のようなオプションコマンドが存在しておらず、三つのエッジを使用して面取りを作成した場合は、交差部分が三角の平面状の形状になる。(図-4)

図-4 SOLIDWORKSで三つのエッジを選択して面取りを作成したもの

従ってSOLIDWORKSで図-3の右図のように交差部分をとがった形状にしたい場合は、2回以上に分けて作成する必要がある。その手順を図-5および図-6に示している。

手順としてはまず、図-5のように2カ所のエッジのみの面取りを作成する。その後、残る1カ所のエッジに対して面取りを追加すると、角がとがった形状で出来上がる(図-6)。

図-5 交差にかかっている三つのエッジのうち二つのみに面取りを作成した状態

図-6 残る一つのエッジに面取りを追加

ここで注意すべきなのは、実際には3D設計データとして図-3の二つの形状、どちらの状態で製造工程に渡したとしても、C1程度の小さいサイズの面取りであれば特に問題はないということである。この場合は面取りの目的が明らかに、角のバリをなくし手にけがをしないようにというものであることから、仕上がり形状が3D設計データと異なっていても設計に影響がないからである。

しかし、大きいサイズのC面取り(おおむねC5以上)の場合は、その形状に意味があると判断されるため、図-3の左、もしくは図-4のように三角形の平面形状で製造へ渡した場合は製造現場においてその形状に仕上げるための追加工数が発生することになる。

従って、角の形状は本当にそれで良いのか、モデル作成時に注意する必要がある。

4.エッジの選択順によって出来上がる形状が異なる:フィレットの場合

次にフィレットだが、これも面取りと同様に交差部の形状が作り方によって変わってくる。

図-7は、これもFusion 360の例だが、交差する三つのエッジを選択して作成する場合、「コーナーのタイプ」というオプションを使用して2種類の出来上がり形状を選択することができる。Autodesk InventorやSOLIDWORKSも、オプションの指定方法はおのおの異なるが、交差部分を同様の形状にすることができる。

そしてここでも、実際に加工すると角はどのような形状に仕上がるのかを知っておく必要がある。実際には、図-7左側の形状で仕上がる。

図-7 フィレットの交差部分の形状

同じくフィレットでも、隅にフィレットを付与する場合の注意点を述べる。隅が交差している部分へフィレットを追加する場合、エッジの選択順によって全く異なる形状ができる場合が多々ある。

図-8は、隅に先にフィレットを追加し、その後角にフィレットした例である。また、図-9は、先に角にフィレットを追加し、その後隅にフィレットした例である。これらはどのCAD製品を使用しても同じ結果となる。

図-8 (1)の隅にフィレット追加後、(2)の角にフィレットをさらに追加

図-9 (1)の角にフィレット追加後、(2)の隅にフィレットをさらに追加

おのおの交差部分の形状が明らかに異なっていることが分かる。このように隅が交差する場合は特に大きく出来上がり形状が異なることが多いので、想像したような交差部分形状にならなかった場合は、エッジの選択順を変更してみたり、エッジごとに分けて作成したりするなどの工夫が必要である。

ベースとなる形状がどのような形状かによってもフィレットや面取りの形状は異なるので、なかなか思いどおりの形状にならないときの王道となるような解決策はないが、一つの目安としては、半径値が異なるフィレットが交差する場合は大きい半径値のものから順に作成すると、比較的安定してきれいなフィレットを作成できるようだ。この点は使用しているCADでいろいろと試してみてほしい。

それでは、図-8と図-9の例ではどちらが「正しい」のかというと、これは加工者がどのような手順で加工するかにもよるので、どちらが「正しい」ということはない。設計的にも重要な機能を要求することはほとんどない、いわゆる相貫線であるため、モデルと実際の部品形状の相違について問題として取り上げられることはない。

しかし、面取り形状以外で加工できない形状のままモデリングし、製造現場から設計変更を迫られたり、図面に指示のない加工法によって継ぎはぎの部品が納品されたりすると、無駄な手戻り時間や大きなクレームが発生してしまうことになる。

設計者として3D設計データを提出する際には、出来上がった形状が実際には加工しづらい、または加工できない形状にしていないかどうか、この点を考慮してモデリングすることが肝要である。

次回はフランジ作成のコツや注意点を解説していく。

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