2017年12月

総務部エリコのひとり言

社内にはびこる残業・長時間労働を改善せよ! の巻

エリコが勤める山シロ株式会社では最近、残業の常態化が問題視されている。「残業するのが当たり前」の意識が社員に生まれており、仕事を早く終えた人でも帰りづらい空気が漂っているようだ。
「こんな状態では人も辞めていくし、何より優秀な人材が集まらない!」と見かねた社長。働き方改革の気運が世間的に高まっていることも受けて、会社を挙げて残業削減に取り組むことに。総務部主導で行うことになったこのミッションを、エリコは成功させることができるのか?

まずは残業の実態を洗い出すところからスタート

最近、私が働く総務部でも残業する人が増えてきた。自分はテキパキ仕事をこなして早めに帰りたい派なんだけど、先陣を切って帰りづらい雰囲気……。なんとなく会社全体に、どんよりしたお疲れムードも漂っている。今回の残業削減プロジェクトを成功させて、このイヤな空気を一掃したい!

手始めに各部署でどれくらい残業が発生しているか、実態を洗い出す必要がありそう。というわけで、各部署の部長・課長など管理職にヒアリングをしてみることに。

日ごろから残業が多いらしいのは、どうやら自社製品の開発に携わる設計開発部。職人肌の社員が多いのでついつい仕事に熱中してしまうのと、お客様からの要望に十二分にこたえようと、残業になりがちらしい。

また営業部では、上司が部下の労働時間を正確に把握できていないことが判明。営業部長の話では「外回りからの直帰や直行も多いから、一人ひとりの労働時間を正確に把握できていない」とのことだった。管理職なのに社員の労働時間を管理できていないのも、残業がはびこる大きな原因みたい。

総務部内で話し合った結果、「ノー残業デーの実施」がアイデアに挙がった。一方で「業務自体が減るわけではないので、ノー残業デーに仕事を持ち帰るケースも出てくるのでは?」という懸念の声も。うーん、長時間労働の改善には、もっと根本的な改革が必要なのかなあ……。

上司や同僚と議論を重ねてはみるけど、働き方改革に取り組むのはみんな初めての経験。なかなか良いアイデアがわいてこない。こうなったら申し訳ないけど、大学スキー部の大先輩である社労士・小岩さんの力を借りようかな。

正しい知識を身につけて、自社にマッチする制度改革を!

小岩さん
お久しぶり、エリコさん。今回も上司から無茶(むちゃ)ぶりを受けたんですか?
エリコ
無茶ぶりというわけでもないんですけど……。残業を削減したり、長時間労働を改善したりする効果的な方法が思いつかなくって。例えば、最近フレックスタイム制なんてはやっていますよね。これって、うちみたいな会社でも導入できるんでしょうか?
小岩さん
十分可能だとは思いますが、そもそもエリコさん、フレックスタイム制は「変形労働時間制」の一つだということをご存じですか?
エリコ
恥ずかしながら、初めて聞きました。その「変形労働時間制」って一体何ですか?
小岩さん
労働基準法では、基本的に従業員の労働時間は「1日8時間・週40時間」を超えてはならないと定められています。これがいわゆる「法定労働時間」と言われるものです。
エリコ
はい。法定労働時間については、私も知っています。
小岩さん
この法定労働時間を一定期間ごとに平均化するのが、変形労働時間制です。大きく分けて、
  • 1カ月単位の変形労働時間制
  • 1年単位の変形労働時間制
  • フレックスタイム制
  • 1週間単位の変形労働時間制
  • の四つがあります。
    エリコ
    なんだか難しそうですね……。それぞれどのように違うのでしょうか?
    小岩さん
    そんなに難しく考えなくても大丈夫。一番分かりやすい「1カ月単位の変形労働時間制」で考えてみましょう。1週間の法定労働時間が40時間ということは、1カ月だと約160時間になりますね。
    エリコ
    そうですね。
    小岩さん
    1カ月単位の変形労働時間制」は、1カ月以内の一定期間、例えば4週間を1単位期間と考えると、次のように振り分けることが可能です。
    • 第1週 35時間
    • 第2週 35時間
    • 第3週 40時間
    • 第4週 50時間
    エリコ
    週目が50時間になっていて、法定労働時間を超えていますね。
    小岩さん
    そうですね。だけどトータルでは160時間を超えていないからOK。時間外手当なども必要ありません。月末に毎月納期が集中するような仕事においては、非常に適した働き方だといえます。
    エリコ
    なるほど! 「1年単位の変形労働時間制」と「1週間単位の変形労働時間制」もそれぞれ期間が違うだけで、同じ考え方ですか?
    小岩さん
    その通り。「1年単位の変形労働時間制」はより長いスパンで、1年以内の期間を平均化する。お中元やお歳暮などの繁忙期が決まっている小売店などで有効な働き方です。「1週間単位の変形労働時間制」は、曜日の繁忙期が決まっているような飲食店などに適しています。
    エリコ
    フレックスタイム制はどのような考え方になりますか?
    小岩さん
    フレックスタイム制は基本的に「1カ月単位の変形労働時間制」と考え方は同じ。しかし、各日の勤務時間を従業員側で自主的に決めることができるという特長があります。その分、社員の自己管理能力が重視されますが、研究職やクリエイティブ職には非常にマッチする働き方だと言えます。
    エリコ
    フレックスタイム制しか知らなかったけど、労働時間の制度にはいろいろな種類があるんですね。
    小岩さん
    それぞれの特長を見極めて、自分の会社や業界にマッチする制度を導入するのがベターです。くれぐれも制度が形骸(けいがい)化しないよう気をつけて。あとは、管理職の人たちに労働時間をしっかり管理する意識を根付かせる必要があるね。
    エリコ
    具体的にどうすればいいでしょうか……?
    小岩さん
    厚生労働省が定めている「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」というものがあります。管理職が理解しておくべき、労働時間の考え方についてまとめてあるガイドラインです。これを管理職のみなさんにしっかり読み込んでもらう。厚生労働省のホームページからガイドラインのファイルがダウンロードできるので、ぜひ参考にしてみてください。
    エリコ
    こんなガイドラインがあるなんて知りませんでした! とっても参考になりそうです。
    小岩さん
    働き方改革に取り組むなら、このガイドラインを頭に入れておくことは必須条件かも。そのうえで、自社に合った労働時間の制度やツールの導入を考えると効果的ですよ。

    厚生労働省|労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(PDFファイル)

    制度とツールの両面から攻めて、社内の意識改革を!

    小岩さんから教えてもらったガイドラインをしっかり読み込んで、手始めに労働時間の制度改革から取り組むことに。

    まずは実験的な取り組みとして、設計開発部でフレックスタイム制を導入してみることを提案してみた。自分たちの裁量で勤務時間をコントロールできた方が、製品開発にまつわるグッドアイデアも湧いてくるかもしれない。設計開発部からのリアクションも良いので、うまくいったら、他の部署でも導入するよう進言してみよう。

    また、クラウド型の勤怠管理システムを新たに導入。スマホなどから打刻できるので、直行・直帰の場合でも労働時間の把握が可能になった。これにより社員の労働時間が把握できていなかった営業部でも、しっかりチェックしてもらう。労働時間・業務量が的確に管理されることで、従業員側のメリハリもついて、生産性アップも期待できそう。また、どうしても残業が必要な場合には、事前申告制によって上司の許可をもらうことを条件にした。

    そして最後に、各部署の管理職を集めて「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を用いた講習を開くことに。せっかくだから、講師は小岩さんにお願いすることにした。自分の上司たちが顔見知りである小岩さんの講義を受けている姿は、なんだか不思議な感じ。だけど講習を終えて「本当に勉強になった」と口をそろえて言う姿を見て、私もすごく鼻が高かった。

    小岩さんからのアドバイスを一つひとつ実践したおかげで、長時間労働に対する意識が社内でも変わってきた気がする。仕事が早めに終わったときに、胸を張って帰れるようになったのがうれしい。これを機に、新しい習い事でも始めてみようかな!

    エリコのひとり言

    ノー残業デーやフレックスタイム制を検討するときは、形だけの導入にならないよう気をつけることが大切! 自社の業務内容や特徴に合わせて、ベストな改善策を考えないとね。