2018年 1月

総務部エリコのひとり言

仕事と子育ての両立支援で、女性が働きやすい職場をつくろう! の巻

エリコが勤める山シロ株式会社は、女性社員の割合が2割ほどと少なめ。また結婚や出産を機に辞めてしまう人も多く、女性の人材がなかなか定着しないのが会社としての悩みになっている。
そんなある日、女性管理職の黒木さんから「現状を改善する良いアイデアはない?」と相談を受けたエリコ。女性が働きやすい職場づくりのためにアクションを起こすことになったエリコだが、果たしてこのミッションを成功させることができるのか?

女性社員が定着しない会社、何が問題?

「うちの会社って女性社員の数が少ないと思わない? 現状を改善する良いアイデアはないかな」

広報部長の黒木さんからランチに誘われたときに、ポツリとそんな相談を受けた。黒木さんは私の会社でも数少ない女性管理職の一人だ。部署は違うけれど、入社当初からかわいがってもらっている尊敬する大先輩。家庭では2人のお子さんの母親でもあり、子育てをしながら苦労してキャリアを積んできた人でもある。

確かに、私の会社の女性社員の割合は2割程度と少ない。結婚や出産を機に退職する人も多く、女性の定着率や管理職の少なさは以前から問題視されている。私自身も今後のキャリアについてはよく考えるし、人ごとではないなあ……。

黒木さんの力にもなりたいし、「総務部として何かできることはないでしょうか?」と思い切って総務部長に話をもちかけてみた。顎(あご)に手を当ててしばらく考えていた部長だけど、決心したように「エリコさん、何か良い手立てがないか考えてみてくれないか?」とのこと。どうやら部長も以前から、何か手を打ちたいと考えていたみたい。

上司からのお墨付きをもらえたということで、まずは女性社員を集めて「今後のキャリア」や「子育てと仕事の両立」についてどんな不安があるかヒアリングを行ってみた。すると以下のような声が出てきた。

  • 子育てと仕事の両立に成功しているモデルケースとなる社員が少ない
  • 育児休業などの制度はあるけど、積極的に取得している人が少なく言い出しづらい
  • 復職できたとしても、これまでと同じように働けるか不安
  • 女性管理職が少ないので、こうした不安を気軽に相談できる人もいない

また各部署の管理職にも話を聞いてみることに。すると「女性社員は結婚・出産を機に辞めてしまう人が多いから、育成にあまり力を入れることができない」という声が多く聞かれた。これによって「そもそも女性社員を育成しようという意識が会社として希薄」という深刻な問題が浮き彫りになってしまった。

うーん、従来の古い考え方から抜け出さないと、女性が働きやすい職場にはほど遠いみたい……。だけど、どういうところから手をつけていくべきだろう?社外の意見も聞いてみたいし、ここはひとつ、大学スキー部の大先輩でもある社労士・小岩さんに相談してみよう。

まずは社員をマネジメントする管理職の意識改革を

エリコ
小岩さん、新年のごあいさつが遅くなりスミマセン。本年もよろしくお願いします。
小岩さん
こちらこそ、よろしくお願いします。それでエリコさん、何やら深刻そうな顔をしていますが、今日は一体どうしました?
エリコ
実はうちの会社、女性社員が定着しないという課題に直面していまして。「なんとかしなくちゃ」と良案を考えているんですけど、なかなか思いつかなくて。
小岩さん
同じような悩みを抱えている企業は、まだまだ日本には多いですよね。経営者や管理職といった上に立つ人が、いまだに男性中心な考え方から抜けきれていない会社も多いです。
エリコ
うちの会社にもそんなフシが見受けられます……。
小岩さん
そうした企業には大規模な意識改革が必要ですが、とりわけ社員をマネジメントする管理職の意識を変えていくことが大切です。ということでまずは、管理職を対象とした研修会などを開催してはいかがでしょうか?
エリコ
どのような内容の研修を行えばいいのでしょう?
小岩さん
例えば女性が働きやすい環境をつくるために、子育てと仕事の両立を支援することは有効ですね。しかし、それを行うために必要な予備知識を持っていない管理職も多い。
そこでまず、「労働基準法」「男女雇用機会均等法」「女性活躍推進法」「育児・介護休業法」など、法律や公的な制度がどうなっているのか学ぶことから始めるといいでしょう。例えばエリコさん、産前産後休業や育児休業がどのくらいの期間取得できるか、きちんと把握していますか?
エリコ
産前は出産予定日の6週間前から。産後は出産の翌日から8週間ですよね(注)。育児休業は子どもが1歳になるまで取得できて、保育所などに入所できないなどの理由がある場合、さらに1年の延長が可能だったはずです。
  • (注) 産後6週間を過ぎた後、本人が希望し、医師が認めた場合は就業可能。
小岩さん
さすが! 2017年10月から育児休業が最大2年まで取得できるようになりましたが(従来は最大1年半)、よく押さえていましたね。産休や育休の制度があること自体は知っていても、具体的にどれくらいの期間取得できるのかを把握している人は、意外と少なかったりします。
エリコ
だからこそ、研修会などが大切なんですね。
小岩さん
そのとおり。法律や公的な制度をしっかり理解したうえで、時短勤務制度や在宅勤務制度など、自社に合った働き方を取り入れていけばいい。また、スムーズに復職するためのサポート体制を整えておくことも大切です。
産休・育休の取得から復職までは長丁場ですから。本人の不安も大きいと思うので、会社側も長期的な目線で見守ることが大切です。
エリコ
そうやって女性が安心して働ける職場になったら、定着率も良くなるわけですね。女性だけじゃなく、男性社員の育児参加も増えていくかも……。
小岩さん
そうですね。現代は働き方に多様性が求められている時代です。一つの会社の中にも、いろいろな価値観や考え方をもった人々がいる。女性社員だってバリバリキャリアを積んでいきたい人もいれば、結婚して家庭に入りたい人だっている。
エリコ
そうですよね。
小岩さん
社員一人ひとりのライフプランをしっかり把握するうえでも、全社員のキャリアに関する意識調査を定期的に行うと良いと思います。そのうえで、それぞれに合わせた働き方をチョイスできるような会社になるといいですね。

プロジェクトチームを結成し、会社全体の意識改革に取り組む

小岩さんのアドバイスを受けて「会社全体の意識改革」に取り組むことに。とはいえ、自分一人ではどうにもできそうにない。そこで過去の経験(年度末までに社内コストを5%削減せよ! の巻)を生かし、女性社員中心のプロジェクトチームを発足。リーダーには黒木さんに就任してもらうことにした。ミーティングの内容などをグループウェアや社内報で発信し、「今後は女性社員のキャリア形成に会社として力を入れていく」ことを全社員に周知していく。

それとあわせて、管理職を対象とした「女性のキャリア形成を考える」研修会を開催することに。講師は、労務関連の法律知識が豊富な総務部長に担当してもらった。産休・育休の取得期間といった基本的な内容から説明してもらったが、「いやあ、知らないことが多くて勉強になったよ」と終わった後に他部署の部長から声をかけてもらった。「小さなことからコツコツと」という感じだけど、ちょっとずつ手応えを感じる。

この追い風ムードに乗って、新しい勤務制度の導入を人事部に提案。部署ごとのカラーに合わせて、仕事と子育ての両立をサポートするための柔軟な勤務制度を考える。例えば、在宅での仕事が比較的可能な設計開発部には、小学6年生以下の子どもをもつ社員を対象に週1回の「在宅勤務制度」を提案。フレキシブルな動きが求められる営業部には、1日5時間(10時から16時)の「時短勤務制度」を提案してみた。各部署の反応も良かったので、人事部長も前向きに検討してくれるとのことだった。

また産休・育休の取得前後には、必ず本人・上司・人事担当者による三者面談を実施することにした。復職前後の働き方や、今後のキャリア形成についても本人の意思を尊重できるよう、そこでじっくりと話し合い、最適な働き方を考えていく。産休・育休取得中にも定期的にお互いの現状を共有することで、休業者が孤立しないサポートを心掛ける。

それに加えてプロジェクトチームが主体になり、「女性のキャリアを考える勉強会」を定期的に開催することに。黒木さんをはじめ、子育て経験者の体験をそこで共有してもらい、女性社員の孤独感や不安感を払拭していく。男女問わず参加はオーケーなので、育児に関心がある若い男性社員も参加してくれるようになった。

プロジェクトチーム発足後、「この会社で長く働いていけるようなビジョンが持てるようになった」と女性社員から前向きな声が聞けるようになった。女性が働きやすい環境へ、会社がだんだんと変わっているような手応えを感じている。「女性の管理職もこれからもっと増えてくれたらいいね」と黒木さん。採用面でも大きなアピールポイントになる気がするので、これから魅力的な人材がたくさん入社してくれたらうれしいな。

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