2018年 8月

総務部エリコのひとり言

障がい者がやりがいを持って働ける職場を目指せ! の巻

エリコが勤める山シロ株式会社では、以前から障がい者雇用に力を入れて取り組んできた。しかし社内アンケートを実施した結果、障がい者スタッフの職場への満足度が低いことが判明。その原因究明と解決のために、エリコが調査に乗り出すことに。果たしてこのミッションを成功させることができるのか?

障がい者がやりがいを持てない職場になっていないか

毎年実施している従業員全員を対象とした職場アンケート。調査の結果を見て、気になる点があった。新オフィスに移転し、さまざまな働き方改革にも取り組んだ成果が出ているのか、社員の職場への満足度は前年比でアップしている。

それは良かったのだけど、障がい者スタッフの満足度だけを見ると、なぜかダウンしているのだ。気掛かりになったので、以前の調査結果もさかのぼって調べてみると、例年、障がい者スタッフの満足度はそこまで高くなかったことが判明した。どうして今まで気づかなかったんだろう……。

とにかくまずは現場の声を聞いてみたい。そこで、営業部で働いている障がい者スタッフの柴崎さんに話を聞いてみることにした。柴崎さんとは以前、営業部の同期を通じて飲みに行ったこともあるし、廊下でたまに会えば世間話もする。思い切ってランチに誘ってみた。

エリコ
柴崎さん、急にお誘いしちゃってすみません。というのも実は柴崎さんにちょっと聞いてみたいことがあって。
柴崎さん
エリコさんと話すのも久しぶりですね。一体どうしたんです?
エリコ
実はこの間の社内アンケート、障がい者スタッフの満足度が全体的に低かったんです。それが気になっちゃって……。うちの会社に改善して欲しいことがあれば、ご意見を聞いてみようと思って。どんなささいなことでも構いません。
柴崎さん
そうですね。うちの会社は社内の雰囲気もいいし、職場環境も整っているし、給与にも満足していますよ。ただ仕事が……。
エリコ
仕事内容ですか? 業務が大変なんですか?
柴崎さん
その逆です。入社して5年もたつのに、任されている仕事は、電話応対とか備品整理ばかり。ちょっと頭を使うものでも、フォーマットに沿って書類を作るくらい。ルーティン業務ばかりで、ちょっと退屈です。
エリコ
なるほど。柴崎さんって、もともとIT企業でシステムエンジニアをやっていたんですよね。
柴崎さん
そうです。バイク事故で、車いす生活になって、元の会社に勤められなくなっちゃって。それで障がい者雇用に力を入れていた山シロに入社したんです。
エリコ
上司にそうした不満を話したことは……?
柴崎さん
面談のときに話したことは何回かあったけど、全然リアクションがなくて、最近は諦めていますよ。周りの社員も、気を使って簡単な仕事を回してくれているのだと思うのだけど……。もう少し歯ごたえがあるというか、やりがいを感じられる業務をやりたいです。ほかの障がい者スタッフも、そう感じている人は多いと思いますよ。

どうやら仕事へのやりがいだったり、自分たちが会社の役に立っている実感を持てなかったりということが、問題の根本にあるようだ。このままでは、障がい者スタッフから離職者も出てしまうかもしれない。会社全体として障がい者雇用に対する意識改革に取り組む必要がありそうだ。

そういえば社労士の小岩さんから、ちょうどお茶のお誘いが来ていたところだった。甘いものでも食べながら、相談してみようかな……?

障がい者スタッフを「ゲスト」ではなく重要な戦力に

小岩さん
エリコさん、今日はお呼び立てしてすみません。このかき氷屋、前から一度来てみたかったんですけど、若い女性のお客さんが多いから、一人で訪れるのが少々気恥ずかしくて。付き合わせるような形になって申し訳ない。
エリコ
いえいえ、お気になさらず。最近暑いし、かき氷いいですね。それに私からも、ちょうどご相談したいことがありましたし。
小岩さん
確か今回は、障がい者雇用についてのお話でしたね?
エリコ
そうなんです。山シロでは、以前から障がい者雇用に力を入れてはいるんですが、障がい者の人たちが働きがいのある職場になっていないようなんです。
小岩さん
なるほど、ありがちな話ですね。ちなみに2018年4月から、企業の障がい者雇用で改定されたことが幾つかあるのですが、どんな点かご存じですか?
エリコ
ちゃんと勉強してきましたよ。一つは、障がい者雇用の法定雇用率が引き上げられたこと。民間企業では、2.0%→2.2%になりました。それに伴い、雇用義務の発生する企業の範囲も、従業員数50人以上から45.5人以上になっています。
もう一つは、障害者雇用義務の対象として、これまでの身体障がい者、知的障がい者に加えて「精神障がい者」も追加されたこと。大きく変わったのはこの2点だと思います。
小岩さん
さすが! 勉強してますね。こうしたことからも分かるように、国を挙げて障がい者雇用を推進するような動きが活発になっています。
ただ企業の中には、「法律で決まっているから仕方なく雇う」というように、義務的に障がい者を雇用しているところもまだまだ多い。そんな消極的な考えで障がい者を雇っても、働く側のモチベーションは当然上がりませんよね。
エリコ
うちの会社もまさに、そのような考えに陥っているのかも……。
小岩さん
障がい者雇用がうまくいっている企業に共通するのは、雇い入れる障がい者を「ゲスト」としてではなく、ほかの社員と同じように「会社の戦力」として考えているところ。私の顧問先にも「この人がいないと会社が回らない」というような、エース級の働きをする障がい者スタッフがいる会社がありますよ。
エリコ
それはすごい! そんな会社になるためには、どうすればいいのでしょうか?
小岩さん
一口に「障がい者」とくくっても、抱える障害やその重さも、人によってさまざまです。当然、向いている業務・向いていない業務もあるので、それぞれのスタッフに合わせて働き方を考える必要があります。それに定期的なリハビリや通院が必要な方は、そうしたことも考慮しなければなりません。
いずれにせよ、障がい者スタッフとしっかりとコミュニケーションを取ったうえで、それぞれに見合った柔軟な働き方を考える必要がありますね。なるほど。
エリコ
やっぱり会社として、大きな意識改革が必要そうですね。うまくいくでしょうか……。
小岩さん
不安なときは、公共機関のサポートなども利用してみるといいですよ。例えばハローワークでは障がい者雇用の各種支援策に力を入れていますし、アドバイスなどもくれるはずです。ほかにも「独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構」では、ジョブコーチ(職場適応援助者)を企業に派遣して、障がい者の雇用支援を行っています。
エリコ
そんな制度があること、初めて知りました! うまく活用しながら、意識改革に取り組んでみようと思います。

障がい者がイキイキと働けたら、会社の雰囲気もきっと変わる

翌日、総務部長の下へ行って、早速現状を説明した。障がい者雇用が形だけのものになっていること、障がい者スタッフがやりがいを持って働けるような会社になっていないこと……。アンケートの調査結果や、実際の現場の声なども伝えると、部長もすぐに手を打つべきだと同意してくれた。

善は急げと、小岩さんから教えてもらった外部機関に連絡。ジョブコーチを派遣してもらい、障害に対する知識の啓発や、具体的な職務内容の設定、障がい者への指導方法などについてアドバイスをもらう。勉強会のような形で、各部署の管理職にも参加してもらい、障がい者雇用に対する理解を深めてもらった。

また障がい者スタッフ全員に対して、上司との面談を実施。総務部の窓口になっている私も間に入っての三者面談を行った。通院の回数や勤務時間、業務の満足度、自分が本当にやりたい業務や、今後のキャリアについても詳しくヒアリング。障害の程度なども鑑みながら、一人一人に合った働き方やポジションを再調整した。

その結果、柴崎さんは以前の勤務先での経験を生かして、設計開発部に異動することになった。前職で培ったプログラミングの腕を生かして、最近は自社アプリの開発やシステム開発に熱を入れて取り組んでいる。パソコン前での作業がメインになるので、車いす移動のデメリットも軽減されたようだった。

エンジニア不足で困っていた設計開発部のメンバーも、「身近にこんな優秀な人材がいたなんて!」と驚きを隠せない様子だった。柴崎さんの存在が刺激になって、部署全体の活気も以前より増したようだ。
障がい者スタッフが以前よりやりがいを持って働くことができるようになって、心なしか社内全体の雰囲気も明るくなったみたいだ。笑顔で働く柴崎さんの様子を見て、私の方も「仕事頑張らなきゃ!」というやる気をもらった。

エリコのひとり言

「障がい者」と一くくりに考えるのではなく、それぞれの事情や特性にあった働き方を考えることが大切。障がい者スタッフを会社にとって必要不可欠な存在に!

監修/小岩 和男

特定社会保険労務士・人事労務コンサルタント。

大学卒業後、私鉄系不動産企業に入社。20年近く総務人事業務に携わった後、社会保険労務士として独立。都内、日本橋に事務所を構え、上場企業から新設企業まで幅広いサポートを行う。メディアへの寄稿実績も多数。

働く場所を選ばない「テレワーク」で、障がい者雇用もサポート

大塚商会では身近なITで始める働き方改革の一環として、テレワークの導入をサポートしています。タブレットやリモートアクセス、テレビ会議などを活用して柔軟な働き方を実現。働く場所にとらわれないため、障がい者雇用の観点からも、充実したサポートを実現します。

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