2018年 9月

総務部エリコのひとり言

職場からハラスメントを一掃せよ! の巻

エリコが勤める山シロ株式会社でパワハラが疑われる事案が発生した。実は、会社として、これまでハラスメント対策にあまり熱心に取り組んでいなかった山シロ株式会社。従業員が安心して働ける職場環境の実現に向けて、エリコはハラスメント防止に関するアクションを起こしていく。果たして、このミッションを成功させることができるのか?

社内でパワハラが発生! どう対処すべき?

営業部にいる入社5年目の山根さんから、総務部宛てにメールが入った。「うちの課のあるチームリーダーが、部下に対してパワハラ的な指導を行っている」という相談の内容。現状を確認するために、まずはメールをくれた山根さんにヒアリングを行うことに。話しやすさなども考慮して、山根さんと年齢が近い私が直接話を聞くことになった。

話によると、山根さんの親しい同期が所属しているチームのリーダーが、メンバーに対して度が過ぎた指導を行っているとのこと。営業目標を達成しないメンバーには、人格を否定するような罵詈(ばり)雑言を日常的に浴びせているらしい。山根さん自身は問題のリーダーとは別チームなので、直接被害を受けているわけではないものの、はたから聞いているだけでも、つらくなるぐらいひどい内容のものらしいのだ。

山根さんの親しい同期がとりわけやり玉に挙げられているらしく、メンタル的にもかなりダメージを受けているため、本人に代わってメールを入れたとのことだった。

問題のリーダーは入社以来、継続して優秀な営業成績を収め続けている社員。その実績を買われ、去年、異例のスピードでリーダーに抜てきされた人物だ。リーダー就任後も常にトップクラスの成績を収めているため、上司や同僚も強く注意できない空気が部署内に漂っているとのことだった。

そもそも、うちの会社はパワハラだけでなく、セクハラ、マタハラなど、ハラスメント全般への対策意識が薄い気はしていた。アットホームな会社のため、これまでそうしたハラスメント騒動が大きく取り沙汰されることはなかったが、その陰で見逃されてきたハラスメントも実は多かったのではないだろうか……。これまでハラスメント対策を真剣に議論してこなかったツケが、今回ってきている気がする。

山根さんから相談をもらった事案はもちろん、ハラスメント全般への根本的対策が必要なことを総務部長に報告。部長も事態を重く受け止めてくれたため、部を挙げて対策を練ることになった。

そういえば、休暇を取ってハワイに行っていた社労士の小岩さんから、「お土産があるので、暇なときに事務所まで取りに来てください」というメールが今朝届いていた。受け取りに行きがてら、ちょっとハラスメント対策の手立てについて相談してみようかな……?

指導かパワハラか、線引きを見極めるポイントとは

エリコ
小岩さん、休暇はエンジョイできましたか?
小岩さん
久しぶりにハワイに行って、リゾート気分を満喫してきましたよ。いつも手土産をもらっているので、今日はお返しということで、ハワイ土産のマカダミアナッツです。
エリコ
うわあ、おいしそう! お言葉に甘えていただきます。甘えついでに、さっきメールでもお伝えしましたが、ちょっとご相談が……。
小岩さん
事前に頂いたメールで、事情はある程度理解しました。エリコさんの会社で今、パワハラ問題が起きている。そこでまずエリコさんに質問なのですが、ハラスメントの代表例として知られているパワハラ、マタハラ、セクハラの三つのうち、直接的に取り締まる法律がないのはどれだと思いますか?
エリコ
何だろう……マタハラでしょうか? 問題視されるようになったのが三つの中では比較的最近のように思えるので。
小岩さん
残念! 正解は「パワハラ」なんです。セクハラは「男女雇用機会均等法」で、マタハラは「男女雇用機会均等法」と「育児・介護休業法」で防止措置等がそれぞれ規定されていますが、パワハラには実は、直接的に取り締まる法律がない。
パワハラに対処する場合、民法上の手続きを通して、会社に対する損害賠償や債務不履行責任を問うことなどは可能です。
エリコ
初めて知りました。なぜパワハラには直接的に取り締まる法律がないのでしょうか?
小岩さん
どこまでが教育的な指導で、どこからがパワハラなのか、客観的に見極める「線引き」が難しいというのが、理由の一つとしてあると思います。それでももちろん、指導とパワハラを見極める大切なポイントはあります。
エリコ
どのようなポイントを見極めるべきなのでしょう?
小岩さん
まずは、指導対象者の人権や人格を傷つけるような指導になっていないか。もう一つは、その指導が本当に部下の成長につながっているかどうか。成長につながる指導とは、簡単にいうと「動機付け」になるような指導のことです。
上司や管理職は、部下の成長を支援するのが役割です。部下の人格を傷付け、恐怖感や萎縮をもたらしてしまうようでは指導とはいえませんよね。
エリコ
なるほど。今回のうちの会社のケースは、部下に対してひどい罵詈雑言を投げつけているようなので、客観的にも明らかにパワハラだと断言できそうです。
小岩さん
問題のリーダーは、営業成績は抜群らしいですね。しかし、それとこれとは切り離して考えなければならない。野球で例えると、偉大な記録を残した名選手が、名監督になれるかというと必ずしもそうではない。プレーヤーとしての能力と、マネジメントの能力は別物だということです。
エリコ
なるほど。
小岩さん
またパワハラに限らず、あらゆるハラスメントは、企業にさまざまな悪影響やダメージを与えます。例えばハラスメントを受けた人はモチベーションが低下し、メンタル面にも悪影響を及ぼします。当然、退職など人材流出にもつながってくる。
ハラスメント加害者は周囲からの信用度が低下して、懲戒処分などで職場での居場所をなくす事態にもなりかねない。また直接的な当事者だけでなく、ハラスメントを目にしたほかの従業員の意欲低下なども避けられないでしょう。
こうした数々の悪影響によって、会社全体としての業績悪化や、優秀な人材の流出といった致命的問題にもつながりかねないわけです。裁判沙汰などになれば、企業イメージもガタ落ちですね。
エリコ
う~ん……うちの会社も早急な対応が必要みたいです。
小岩さん
ハラスメントが発生した場合、迅速な対応を行うことは欠かせませんが、もう一つ、再発防止のための体制づくりも重要です。
会社としてのハラスメント対策の方針を明確にして、大々的に社内に周知したり、就業規則などに記載したりして、従業員への啓発を図っていきます。ハラスメントのみに特化した就業規則を、別に作っておいてもいいくらいです。
エリコさんの会社では、ハラスメントが起きた際のオフィシャルな相談窓口などは設置していますか?
エリコ
それが実は設置していなくて……やはり必要でしょうか?
小岩さん
必ず設置しておくべきです。窓口がハッキリしていないと明確な対応もできませんし、相談者もどこに相談すればいいのか分からず、二の足を踏んでしまうかもしれない。どこの部署の誰が担当するのか、担当者もしっかり決めておいた方がいいですね。
窓口を設置するのにあわせて、社員のリテラシーを高める意味でも、ハラスメント防止の対策研修なども実施すると、より効果的だと思いますよ。
エリコ
研修を実施する場合、外部の講師に依頼すべきでしょうか?
小岩さん
厚生労働省のホームページから「職場におけるハラスメント対策マニュアル」という冊子が閲覧できます。分かりやすく、かつ網羅的にまとまっているので、これを活用すれば社員主体で勉強会を行うことも可能ですよ。
社労士のような外部講師に依頼するのももちろんアリですが、社員みんなで学びながらやるのも効果的だと思います。

ハラスメントを一掃するための意識を社内に芽吹かせる

小岩さんからのアドバイスでやるべきことが具体的に見えてきた。まずは事実関係を正確に整理するために、あらためてパワハラの被害者と加害者、また同じ部署のメンバーたちにヒアリングを実施。パワハラの詳細な実態を把握する。

また会社としてのハラスメント対策へのスタンスを明確にすべく、社長から「ハラスメント撲滅」にかけるメッセージを全社員に向けて送信してもらうことに。「ハラスメントは絶対に許さない」という強い意志を、社員一人一人にも実感してもらうことが狙いだ。

会社の方針を明確化するのにあわせて、ハラスメントへの具体的な対処方法・処分内容を就業規則に明記する。会社として厳正に対処していくことをここでも周知徹底するために、通常の就業規則とは別に、「ハラスメント防止規定」を策定。その内容を社内グループウェアなどで全社に共有した。

その後、役員会議が開かれ、策定した規定を基に、問題のリーダーへの処分も決定した。今回は「戒告処分」ということで厳重注意がなされると共に、マネジメント適性が問題視され、リーダー職からは外される運びになった。

一方、今後また別のハラスメントが発生しても迅速に対応できるように、私たち総務部にオフィシャルな相談窓口を設置することになった。窓口開設の旨は、グループウェアや社内掲示などで、大々的に周知した。

また総務部が主体となって、全従業員に向けてハラスメントに関する意識を啓発する研修会を実施。厚生労働省の「職場におけるハラスメント対策マニュアル」を読み込み、自分たち自身で勉強することで、ハラスメント問題を「自分ごと化」するような主体的な研修が実施できたように思う。私も講師として登壇させてもらったが、終わってみると、いろいろな人から「勉強になった」と声をかけてもらえた。

その後、山根さんから聞いた話によると、パワハラ被害を受けた例のスタッフは、リーダーが代わったことで、以前とは別人のようにイキイキと仕事に取り組むようになったらしい。先月には部内でもトップクラスの成績を挙げ、見違えるような活躍を見せている。部下のやる気をうまく引き出すリーダーに代わったのも功を奏したようだ。部下の成長は上司の働きかけ次第なんだと、強く実感する出来事だった。

今回、パワハラ被害を受けた社員はもちろん、会社としても新たな一歩を踏み出すようなキッカケを作ることができて本当によかった。「自分たちでハラスメントをなくしていこう」という自主的な意識が芽生えたことが、何よりの収穫だったように思う。
社員がのびのびと快適に働ける職場環境を実現するために、総務部としてできることをこれからも考えていこうとあらためて決意した。

エリコのひとり言

ハラスメントを放置すると、会社への致命的ダメージにつながることも。迅速な対応はもちろん、再発防止に向けた会社としての根本的な意識改革も、時には必要!

監修/小岩 和男

特定社会保険労務士・人事労務コンサルタント。

大学卒業後、私鉄系不動産企業に入社。20年近く総務人事業務に携わった後、社会保険労務士として独立。都内、日本橋に事務所を構え、上場企業から新設企業まで幅広いサポートを行う。メディアへの寄稿実績も多数。

大塚商会では多彩なラインアップのグループウェアを取り扱っています。

お客様のご要望と将来の拡張も考慮して、最適なグループウェアをご提案。ハラスメントの防止・対策に向けた情報通達や窓口の掲示など、社内からハラスメントを一掃するためのさまざまな情報共有もサポートします。

グループウェア