2018年10月

総務部エリコのひとり言

健康経営を推進し、企業価値を高めよ! の巻

ある日、社長から「うちの会社でも“健康経営”に取り組んでいきたい」という言葉を聞いたエリコ。健康面に不安を抱える社員を、最近実際に目にしたこともあり、エリコ自身も健康経営の重要性を実感し始める。
総務部長からの後押しもあり、具体的なプラン策定に取り組むエリコ。果たしてこのミッションを成功させることができるのか?

健康経営、一体何から手を付けるべき?

「最近の総務部の活躍は目覚ましいな!」と、社長が日ごろの労をねぎらう意味を込めて、総務部のメンバーを集めて食事会を開いてくれた。働き方改革を推進する取り組みなど、さまざまなプロジェクトで成果を出していることを評価してくれたらしい。おいしい料理とお酒のおかげか話も弾み、普段なかなかできない深い話を社長と交わすこともできた。宴もたけなわという頃、顔を真っ赤にした社長が、みんなに向けて神妙な面持ちでこんなことをつぶやいた。

「うちの会社、業績も上がっているし、将来的には上場も狙っていきたいと考えている。そのためには企業価値をもっともっと、高めていかなければいけない。そのためにも、いろんな取り組みをしたいと考えているんだけど、手始めに“健康経営”なんてどうかな?」

「健康経営」。確かに最近よく耳にする言葉だ。以前、ネットの記事で読んだ記憶では、企業が従業員の健康増進に力を入れ、生産性向上を目指していく経営手法のことだったはず。

食事会が終わり、帰り道が同じ部長と駅のホームで電車を待っていると「そういえば設計開発部の田所くん、不摂生がたたって倒れちゃった事件があったよね」と、まるでひとり言でもつぶやくように話しかけてきた。

確か1カ月くらい前、私が設計開発部のエースエンジニアの本間さんと打ち合わせをしていたとき、本間さんの携帯に「田所さんが入院した!」という急な一報が入ったことがあった。本間さんがその対応に急きょ奔走することになり、打ち合わせも途中で中止になったからよく覚えている。

倒れた田所さんは設計開発部の中心的なメンバー。過労で倒れたというわけではないらしく、急な体調不良が原因らしい。普段から暴飲暴食気味の食生活で、健康診断でもあまり芳しくない結果が出ており、周囲の人たちからは心配されていたらしい。幸い二日ほど入院して現場復帰してきたが、医者からは摂生するようきつく絞られたみたいだ。

部長の一言でそのことを思い出して、確かに健康経営は今、取り組むべき価値があるテーマかも……と思った。そんな空気を感じ取ったのか、「うちの会社でどんなことができそうか、エリコさんちょっと考えてみてくれない?」という部長の一言。仕方ない、乗りかかった船だし、ひとつ考えてみるか!

そういえば明日、大学スキー部の大先輩でもあり、総務部社員としての先輩でもある社労士・小岩さんと、近況報告を兼ねた食事の約束をしていたのを思い出した。健康経営に取り組むに当たっての心構えなどを、聞けるかもしれないな……?

中堅・中小企業こそ健康経営に取り組むべき?

エリコ
小岩さん、遅れてしまってすいません。ちょっとした残業をこなしていました。しかし、今日はまた変わった趣向のお店ですね。
小岩さん
エリコさん、お気になさらず。今日は野菜と穀類だけのビーガン(ヴィーガン)料理です。今回は“健康”に関わる話になりそうなので、こういうお店も面白いだろうと思って。
エリコ
なるほど、そういうチョイスですか。実は今回、社長から「健康経営」にチャレンジしたいと言われたんですけど、どういうことから始めればいいか、なかなか検討がつかなくて。
小岩さん
それではまず、エリコさんに質問です。そもそも、企業がなぜ「健康経営」に取り組むべきなのか。その理由は分かりますか?
エリコ
やっぱり、従業員が元気に働けるような環境を作るためじゃないでしょうか。働く人が元気でなければ、マンパワーも充実しないし、会社の業績も上がらないと思うんです。
小岩さん
そうですね。企業が成長するためにも、従業員が働きやすい職場を作るための努力は必要不可欠。そのために、企業の「働きやすさ」を示す一つの指標として、社員の「健康」をバロメーターとして捉えるわけです。
エリコ
社員がみんな健康に働くことができれば、それだけ生産性もアップするというわけですね。
小岩さん
そのとおり。健康経営の効果はほかにもあります。例えば社員が健康になれば、個人が負担する医療費も削減できますし、社員の定着率も向上します。ひいては優秀な人材の採用につながったり、企業イメージやブランド力の向上にもつながったりするわけです。
エリコ
なるほど。うちの社長が「企業価値を高めるために健康経営に取り組みたい」と言っていた意味が分かりました。社員が健康になることで、企業のトータルの価値も高まっていくのですね。
小岩さん
そういうことです。経済産業省も今、健康経営推進に向けてさまざまな取り組みを行っています。例えば経済産業省と東京証券取引所が共同で取り組んでいる「健康経営銘柄」の選定。これは上場企業の33業種から、1業種につき1社ずつ、健康経営に特に力を入れて取り組んでいる企業を選んだものです。
エリコ
選ばれたら株価の向上にもつながりそうですね。
小岩さん
ほかにも「健康経営優良法人認定制度」というものもあります。これは上場企業に限らず、健康経営に尽力する企業を選定し、「健康経営優良法人」として認定する制度。主に規模の大きい企業を対象とした「大規模法人部門(ホワイト500)」と中堅・中小企業などをメイン対象とした「中小規模法人部門」の二つの部門があります。認定された企業は自社ホームページに掲出するなど、ブランディングに活用しているところも多いですね。
エリコ
中堅・中小企業も「健康経営優良法人」の対象になるんですね。
小岩さん
もちろん。2018年には、大規模法人部門539法人、中小規模法人部門775法人が健康経営優良法人に認定されています(2018年8月現在)。むしろ中堅・中小企業の方が多いくらいです。日本にある企業全体の約9割が中堅・中小企業といわれていますし、今後も健康経営に力を入れて取り組む中堅・中小企業は増えていきますよ。
エリコ
私の勤める山シロ株式会社も、規模的には中小の部類ですが、健康経営に取り組むには、具体的にどんなところから手を付けていけばいいのでしょうか?
小岩さん
まずは、従業員へのアンケート調査を行うことですね。従業員のリアルな意見をベースに、どのような健康増進の取り組みが自社に必要か、考えていくのがよいと思います。
エリコ
なるほど。
小岩さん
ほかには例えば、基本的な健康診断は毎年行っていると思いますが、それだけで病気を把握できるかといえば、そうとはいえない。そこで人間ドックなど、より精密な検査を従業員が積極的に利用できるよう、会社が一部負担してあげるとか。従業員が給与の中から一部会費を納め、企業も拠出金を負担することで、福利厚生の財源を充実させる「企業内共済会」という制度もあります。
エリコ
共済会……知りませんでした。
小岩さん
後は、「カフェテリアプラン」なんかもオススメですね。これは商工会議所などが提携している外部の団体に福利厚生をアウトソーシングするサービス。従業員一人一人が、人間ドックの利用補助やスポーツクラブの利用補助など、自分の好きな福利厚生を自由に選択できるようになります。リーズナブルな費用のプランも多いので、中堅・中小企業にもオススメです。
エリコ
社員が好きな福利厚生を選べるなんて、自由度が高いのはうれしいですね!
小岩さん
最後に。福利厚生を充実させても、売り上げには直結しないので、短期的に見ればコストに見えてしまうかもしれません。しかし長期的な目線で見ると、従業員のモチベーションアップや優秀な人材の確保など、生産性向上や利益アップにも必ずつながってきます。管理職以上の社員にも、そういう意識を持って取り組んでもらうことが大切です。

長期的な目線で、企業価値を高めていく

小岩先生からのアドバイスを基に、「健康経営」を進めるに当たっての方針を簡単な報告書にまとめ、総務部長へ報告。GOサインが出たので、まずは世代や部署の異なる従業員を20名ほど選び、福利厚生や自身の健康面に感じていることなどについてヒアリングを行った。

その結果、「運動不足」に対する不安と「食事面の充実」という要望が多く寄せられた。オフィス移転を機に(2018年6月号「会社の引っ越しを成功させよ!」参照)、自社ビルから共同ビルに移ったこともあり、かつてあった自社の社食というものがなくなってしまった。独身の一人暮らしが多い山シロの社員の中には、社食を恋しがる人も多いようだ。

これらの調査結果を基に、部長と細かく具体案を擦り合わせ、あらためて社長にプレゼンをすることに。「カフェテリアプラン」の導入と「共済会」の設立を軸とした提案だ。これらの取り組みを足がかりに、次のステップとして「健康経営優良法人」への認定を目標としていくことを社長に力説。提案の内容はもちろん、私たちの熱意にも社長なりに感じるところがあったようで、「すぐに取りかかってくれ」と笑顔で後押ししてくれた。

最初に着手したのが「カフェテリアプラン」の導入。従業員の「運動不足の解消」と「食事面の充実」の二つを中心に、最適なカフェテリアプランを提供している企業や団体を選定すべく、複数を比較検討。提携フィットネスジムの費用を一部負担してくれるプランと、週一で栄養バランスの取れたケータリングサービスを会社まで提供しに来てくれるプランを有する団体と契約した。

「共済会」を設立するに当たっては、最初に共済会の適用範囲などを明確に規定。年間の支出額や事業経費などを予測し、会費を算出した。社員の給与面から一部支出することになるので、負担にならない程度の金額に抑えつつ、総務部長が中心となって従業員に経緯と内容を説明。社員代表の了解を得た後、加入した社員に対しては、人間ドックや脳ドックの検査料の一部を、会費から負担する運びになった。

これらの取り組みを始めて数カ月後には、各種制度を活用する人も多くなり、従業員の健康への意識も大きく変わってきた。社食の利用者だけでなく、人間ドックなどを受診する従業員も増えてきている。以前、倒れて入院したあの田所さんも、制度を活用してジムで定期的に体を動かし、健康的な食事メニューを心掛けるようになるなど、今ではすっかり元気になったそうだ。定期的に人間ドックなどの検査にも足を運ぶようになったらしい。

これを山シロの健康経営の第一歩として、長期的な目線で、企業価値をより高めるような取り組みをこれからも根気よく続けていけたらと思う。

エリコのひとり言

短期的な損得にとらわれず、長期的な視野で考えることが、結局は大きな利益につながる。健康経営に取り組むときの大事な考え方!

監修/小岩 和男

特定社会保険労務士・人事労務コンサルタント。

大学卒業後、私鉄系不動産企業に入社。20年近く総務人事業務に携わった後、社会保険労務士として独立。都内、日本橋に事務所を構え、上場企業から新設企業まで幅広いサポートを行う。メディアへの寄稿実績も多数。

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