2019年 3月

総務部エリコのひとり言

有給取得率を向上させ、会社の生産性をアップせよ!

従業員の有給休暇の取得率が低い山シロ株式会社。昨今、声高に叫ばれている「働き方改革」や2019年4月から義務付けられる「年5日の年次有給休暇取得」などの流れを受けて、総務部のエリコが取得率向上の施策を考えることになった。果たして、彼女はこのミッションを成功させることができるのか?

まだまだ低い有休取得率! どのように活路を見いだす?

今日は総務部の定例会議。議題は、わが山シロ株式会社の「有給取得率」についてだ。ここ数年、社員の有給取得率が20%台と低い数字を記録している。

折しも、2019年4月1日から労働基準法が改正され、全ての企業において年5日の年次有給休暇の取得が義務化(対象は有給が10日以上付与される社員)される。そこで社長から「働き方改革を推進しているわが社で、この低取得率はいかがなものか。早急に改善策を考えてほしい」とお達しがあったのだ。

とはいえ、なかなか改善案が見いだせないまま、「次の定例までに各自アイデアを持ち寄るように」と総務部長から声が掛かり、その日は解散となった。

私自身は旅行が趣味ということもあり、業務の閑散期を狙ってよく有休を取っている。「ほかの人はどうだろう?」と気になったので、同期や他部署の知人に話を聞いてみると、「上司が有休を取らないので、自分もなかなか取りづらい」という声が多かった。
そうした声があった部署の有休取得率を調べると、確かに軒並み低く、また上長クラスの人たちもあまり有休を取っていないという事実が判明した。

これまで、総務部が中心となって働き方改革に関するさまざまな取り組みを行ってきたこともあり、生産性向上の意識が以前よりも社内に根付いてきているようには感じる。しかし、有休取得に関しては習慣づいていない社員も多く、その意識はまだまだ低いと言わざるを得ない。根本的な意識改革が必要だと感じるけれど、どうすればいいのだろう?

そんな時にふと、取引先のツテでプロ野球のチケットをもらっていたのを思い出した。大学スキー部の大先輩でもある社労士の小岩さんは、シーズン中に何度も球場に足を運ぶほどの野球ファン。それならば、と譲る約束をしていたのだった。小岩さんの事務所にチケットを渡しに行くついでに、ちょっと相談してみようかな……?

有休の「計画的付与」も視野に入れてみる

小岩さん
おお、野球の観戦チケット、ありがとうございます! しかも、私がひいきにしているチームじゃないですか。もうすぐシーズンも始まるし、楽しみですねえ。
エリコ
小岩さん、本当に野球がお好きなんですね。喜んでいただけて良かったです。それで、ついでと言ってはなんですが、今回もちょっとご相談がありまして……。
小岩さん
構いませんよ。チケットも頂いたことですしね。確か、どうすれば有給休暇の取得率を向上させられるか、ですよね?
エリコ
そうなんです。
小岩さん
では、まず基本的なことを聞きますが、そもそも有休取得率が向上すると、会社にどんな良い影響があると思いますか?
エリコ
そうですねえ。単純に休むことで従業員がリフレッシュできますし、仕事へのモチベーションも上がる気がします。つまり生産性が高まる、ということでしょうか。
小岩さん
そのとおり。体は何よりの資本ですから、しっかり働くためには健康であることが欠かせません。それに、もはや高度経済成長期も過ぎ去った今、企業は、いかに効率良く生産性を向上するかを考えなければいけない時代に直面しています。
有給取得率が向上すれば、従業員の活力充実、ひいてはワークライフバランスの充実にもつながり、生産性向上も期待できるというわけです。
エリコ
なるほど。まずはそうした考え方を社内に浸透させなければいけませんね。
小岩さん
そうですね。管理職や一般社員に関係なく、誰もが自由に有休を取れるような環境・雰囲気を作っていくことが大切です。とはいえ、いきなり「休んでいいよ」と言われても、なかなか切り替えも難しいもの。そこで一つの手段として有効なのが「年次有給休暇の計画的付与」です。
エリコ
どういうものでしょうか?
小岩さん
これは年次有給休暇のうち、会社が決めた日数を、決めた時期に計画的に付与するやり方です。このやり方なら、休暇取得日を前もって割り振れるため、従業員も確実に有休を取得することができます。
ただし、幾つか条件があります。まずは会社側が労働組合や労働者の代表と労使協定を結ぶこと。また最低5日は個人が自由に取得できる日数として、残しておかなければいけない(会社が全ての日数を割り振ることはできない)ことです。
エリコ
なるほど。一斉に付与することができれば、日数などの管理も簡単そうです。付与のやり方にはどのような方法があるのでしょうか?
小岩さん
大きく分けて三つの方法があります。
  1. 企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方式
    全従業員を対象に、同一日に年次有給休暇を付与する方法。操業を一斉にストップさせることが比較的簡単な業種(製造業など)で取られることが多い方法です。
  2. 班・グループ別の交代制付与方式
    チームやグループ別に交代で年次有給休暇を付与する方法。流通・サービス業など、全従業員が一斉に休むことが難しい業種に向いています。
  3. 年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式
    従業員個人ごとに計画表などを作成し、相談のうえで個人ごとに付与する方法。誕生日や結婚記念日など、従業員の個人的な記念日を優先的に充てることも可能になります。
エリコ
自社の業態や事業規模に合わせて、適切なやり方を導入するのがよさそうですね。
小岩さん
後は、こういった有給休暇を取りやすい仕組みを導入すると同時に、有休の取りやすい業務の進め方を考えてみるのも大事です。ほかの人にも共有できそうな業務はマニュアルを作っておいたり、仕事状況の共有なども社員間で日ごろから細かく実施したり。
エリコ
確かに、そういった業務の見直しもできれば、有給時に限らず業務の引き継ぎなどもラクになりますよね。
小岩さん
そのとおりです。現場の人たちの意見を吸い上げながら、自社に適した有休取得の推進方法を考えてみてください。

生産性向上はもちろん、業務改善のきっかけにも

翌週の総務部の定例会議。小岩さんからのアドバイスを基に有給取得率向上のための施策をまとめて提案。ほかのメンバーよりも具体性のある提案だったことが評価され、早速実行に移すことになった。

まずは、有給休暇取得に対する意識を高めるための勉強会を部署ごとに実施。「有給取得率の向上が会社としての生産性アップにもつながる」という取り組みの意義から、2019年4月から施行される「年5日の年次有給休暇取得の義務化」の詳細まで、みっちりと学んでもらった。

また5日間の義務化はもちろん、より有休を取りやすくするための施策として、小岩さんから教えてもらった「年次有給休暇の計画付与」を実施することに。

とはいえ、部署やチームによって繁忙期や閑散期があり、有休を取りやすい時期も異なるため、柔軟な取得体制を構築する必要がある。そこでひとまず、チーム単位による「交代制付与方式」を実施することになった。
各部署のチーム単位で年間の年次有給休暇取得計画表を作成してもらい、日数などの管理もしっかりできるようにした。

それとは別に、個人が「有休を取りたい」と思ったときにスムーズに取れるような体制を構築しておく必要もある。そこで社内グループウェアにより、細かな業務内容や進捗(しんちょく)状況の共有を徹底。最新のスケジュール管理ツールなども導入することで、誰が、いつ、どのような業務を行っているのか、また誰が今社内にいるのか/いないのかが可視化されて、不在社員のサポートにも回りやすくなった。

こうした取り組みを経て、社員の有給取得率はその後3カ月で飛躍的に上昇。業績も以前より落ちることなく、むしろ営業成績などの数字は上がってきているようだ。また業務マニュアルの整備や業務の可視化を行ったことで、引き継ぎなどの面倒な業務も最適化され、働き方改革という意味でも大きく前進した。

心なしか、社員みんなの表情も以前よりイキイキと明るくなったように思う。とはいえ、まだまだ取り組みは始まったばかり。総務部員として現場の社員の声に耳を傾けながら、改善できそうなことがあれば、柔軟に対応していこう。

エリコのひとり言

有給取得率を向上させるためには、「計画的付与」を考えるのもひとつの手。その際には、自社の業態や業務内容、規模などを考慮して、適切なやり方を考えよう!

監修/小岩 和男

特定社会保険労務士・人事労務コンサルタント。

大学卒業後、私鉄系不動産企業に入社。20年近く総務人事業務に携わった後、社会保険労務士として独立。都内、日本橋に事務所を構え、上場企業から新設企業まで幅広いサポートを行う。メディアへの寄稿実績も多数。

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eValue NS 2nd Edition

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