ISDNのディジタル通信モードが終了する

ISDNは1チャンネルで最大64kbpsの通信が可能であり、アナログモデムと比べて高速な通信を行えたため、手ごろな価格でターミナルアダプター(TA)が提供されるようになった1995年ごろからは、データ通信用途で家庭にも導入されるようになった。

また1997年に登場したNTT-MEの「MN128-SOHO」が爆発的にヒットし、個人向けダイヤルアップルーターという新たな市場を生み出している。読者の中にも、TAやルーターを利用してパソコン通信やインターネット接続に利用されていた方は多いのではないだろうか。

その後は、ADSLやFTTHなどの普及に伴って家庭向けとしての利用は減少し、今ではほとんど見なくなっている。しかし実は企業ユースでは、2019年時点でもまだまだ現役で利用されているのが現状だ。

特に、企業間の取引・自動発注などを担う「EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)」、POSデータの通信、監視カメラのデータ送信といった用途においては、通信品質や信頼性の高さから利用者が多く存在するという。しかし2024年1月より、NTTの固定電話からIP網への切り替えが順次開始されるのに伴って、ISDNを利用したデータ通信である「ディジタル通信モード」については、2024年1月に終了する予定となっている。

このため、現在ディジタル通信モードを利用している企業は、何らかの対応を取る必要があるわけだ。対応策として単純なのは、通信部分をISDNからほかの通信手段へ変更するやり方で、代替回線としてはLTEなどのモバイル回線が提案されることが多い。

モバイル回線は帯域が保証されないベストエフォートサービスではあるものの、ISDNよりも通信速度が速い(LTEでは一般的に、下り最大75Mbps~150Mbps)ことに加え、導入時に回線の敷設工事が必要ないといったメリットがある。

また、NTT東西が提供するフレッツ光ネクスト回線を利用し、帯域保証されたネットワークを利用できる帯域確保型データ通信「データコネクト」も、代替サービスの選択肢の1つとして挙げられるだろう。

注目が高まるインターネットEDI

しかしEDI用途でこれらを利用しようと思っても、現在ISDNを利用している全ての地域で利用できるわけではなかったり、信頼性の面で不安があったり、追加コストがかかってしまったりといったさまざまな要因から、インターネットEDIを検討するケースが増えている。

インターネットEDIのメリットは、グローバルに共通するインフラのインターネットを利用するため、ほとんどの環境で利用できること。また、通信コストが安価なことに加え、高速なデータ通信を行えるので、大容量のデータ交換に対応していることもメリットとして挙げられるという。

ただしインターネットEDIでは、通信機器の置き換えにとどまらず、アプリケーションの改修など、大がかりなシステム変更が必要となるため、一朝一夕に導入できるものではない。しかもEDIは1社で完結する問題ではなく、あくまで他社と接続し、正常に機能してこそ意味がある。自社の都合で独自にEDIプロトコルを作ると、他社はそれに合わせたシステムを開発せざるを得ない。

そこで、業界ごとに標準化の動きがあり、例えば流通業界では、インターネットEDI標準として2007年より「流通BMS標準」(プロトコルはJX手順、AS2、ebMSv2のいずれかを利用)が普及しつつあるし、金融業界でも、全国銀行協会が2017年5月に「全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)」を制定している。

こうした流れの中で、一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)でも、ISDNのディジタル通信モードが終了することに伴って、2015年12月に「EDIタスクフォース」を設置し、EDI利用で発生する通信遅延などの混乱を解消するための提言を行うとともに、より高度で効率の良いEDIの研究と標準化に取り組んできた。

例えば、「固定電話網のIP網移行によるEDIへの影響と対策」といった資料を公開するとともに、補足資料にあたる「インターネットEDI移行の手引き」「インターネットEDI移行チェックシート」なども提供され、インターネットEDIをどのように導入すべきかを、移行スケジュールと共に説明している。

今回、設立が発表されたインターネットEDI普及推進協議会(JiEDIA:Japan internet EDI Association)は、こうした活動をさらに推進するためのもの。JISA EDIタスクフォースの活動を継承し、各業界におけるEDIの取り組みを尊重しながら、「さらなるインターネットEDIの普及を業界の垣根を越えて推進すること」を狙いとして掲げており、業界団体が加盟する、産業界横断的な組織になることを目指している。

JISAではこれについて、「活動の結果、問題の認知度向上や移行方針のとりまとめなど、一定の効果を達成したが、本来の目的であるインターネットEDIの普及をさらに推進するべく、新たに設立するJiEDIAに場を移して活動を行っていく」と説明した。

2024年1月のサービス終了と聞くと、時間の余裕はまだまだある、というように思いがちだが、そこには大きな落とし穴がある。前述のように、EDIはあくまであくまで他社と接続するためのものだ。当然、世のほとんどの企業は取引先がただ1社であるはずがなく、取引先の数だけ対応が増えるという事態も懸念される。

なお「インターネットEDI移行の手引き」では、企業内における導入の流れを細かく説明しているが、最初の段階で「全社的なプロジェクトである」ことを徹底すべきだと指摘されている。インターネットEDIに移行したからといって業績が直接向上するわけではないため、特に経営層には業務の補助くらいにしか理解されていない可能性もある。ところが実際には、EDIがなければ会社の業務が動かなくなってしまう。従って、営業、倉庫担当者、経理など、あらゆる部署に影響が出ることを想定し、プロジェクトを進めていく必要があるのだ。

もうひとつ、インターネットEDIへの移行は2024年1月までに確実に完了させていなければならない点も注意が必要となる。通常、システムを新システムに移行しようとするときは、トラブルが発生した場合に備えて旧システムへ切り戻すことができるようにしておくことが非常に多い。しかし今回のケースでは、2024年1月を過ぎてしまうとISDNを利用した旧来型のEDIには戻せないのだ。

このため、今からシステムや業務を確認し、どのような影響が出るか、どの取引先と相談して何を採用していくべきなのかなどを確認していく必要があるだろう。まだ4年以上あるからといって早すぎるということはないはずだ。