新戦略に向けて着々と発表を重ねるリコー

まずは、リコーの発表を追ってみよう。

リコーでは、新世代複合機「RICOH IM Cシリーズ」として7機種16モデルを発表しているが、「RICOH Intelligent WorkCore」では、それらの複合機と「RICOH Smart Integration」による各種クラウドサービスを組み合わせることで、中小企業に業務ソリューションを提供しようとしている。

また2019年2月26日には、高い生産性とセキュアな環境を両立するデジタルワークプレイスの実現に向けて、シスコシステムズ(以下、シスコ)との戦略的提携を発表。クラウド、ネットワーク、デバイスの三つのレイヤーにおいて、セキュアな環境を提供するためのソリューション開発に共同で取り組むことを示した。

「複合機を単なるコピー機だと思っている企業の中には、ネットワークセキュリティに配慮していない企業が多い。だが、これからの複合機の利用形態を考えると、ネットワークセキュリティは重要な要素となる。シスコとの提携により、デジタルワークプレイスに求められる全てのレイヤーにおいて、強固なセキュリティが一気通貫で実現できる」(リコージャパン 代表取締役 社長執行役員・CEO 山下 良則氏)

さらに2019年6月18日には、中小企業の生産性向上とデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するために、パートナー企業を対象とした「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES(EDW)パートナープログラム」を開始すると発表。

あわせて「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACESパートナー会」を発足させて、新たなビジネスの加速に向けて、ICT機器メーカーやアプリケーションベンダー、システムインテグレーター、ディストリビューターといったビジネスパートナーとの連携を強化する姿勢を示した。

また2019年6月24日に、複合機「RICOH IM C6000」に対応した具体的なサービスとして、製造業向け技術文書出力セットなど、業種や業務ごとに組み合わせた五つのパッケージを発表。管理機能と請求機能を「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES(EDW)プラットフォーム」で制御することにより、月額および年額課金によるサブスクリプションサービスとして提供を開始している。

複合機の新たなビジネスへの転換と次なる成長に向けて、リコーが次々と施策を打ち出していることが見てとれる。

複合機を業務の“プラットフォーム”に

リコーが提案する「RICOH Intelligent WorkCore」は、複合機をサーバーあるいはエッジコンピューターなどと同様に、プラットフォームと見なした提案だといえるだろう。

それは、リコーの相次ぐ発表からも明らかだ。

「EDWプラットフォーム」では、新世代複合機である「RICOH IM Cシリーズ」のほか、電子黒板の「RICOH Interactive Whiteboard」、全天球カメラ「RICOH THETA」などのデバイスと、「EDWパートナープログラム」に参加するパートナーの各種デバイス、アプリケーションなどを連携させるために、APIおよびSDK(ソフトウェア開発キット)を公開。業種や業務に合わせた課題解決を実現するためのソリューションを迅速に開発し、提供する環境を実現している。

さらに、クラウドプラットフォーム「RICOH Smart Integration」上に、スキャンやプリント、ファイルアップロードなどの各機能単位でコンポーネントを用意。パートナーや導入企業向けに、直感的な操作でコンポーネントを組み合わせることができる、GUIベースの開発ツールを用意した。

「プログラミングなどの高度な技術がなくても、簡単かつ短期間にアプリケーションの開発を行うことができる。さらに、コンポーネントやワークフローの開発に必要なドキュメントの提供や、パートナーの開発者とリコーの技術担当者による開発相談会の実施、パートナーからの技術的な問い合わせに対応するヘルプデスクのほか、開発パートナーには、最新技術情報の提供、ウェブサイトを通じたアプリケーションの紹介やイベント出展支援など、マーケティングでのサポートも行う」(リコージャパン 執行役員 ICT事業本部 副事業本部長 宮本 好雄氏)

例えば、これらのコンポーネントを利用することで、紙文書をスキャンしてイメージデータ化し、さらにイメージデータをOCR処理した後で、データをアプリケーション用に定義してエクスポートするといったワークフローも、ブロックを組み合わせるようにして開発が可能だ。

アプリケーションによっては、ユーザー管理や課金といった機能の活用によって、無償トライアルを実施したり、サブスクリプションサービスを提供したりすることまで可能になる。

これまでは開発や検証などに多くの工数がかかっていたが、EDWプラットフォームを利用することで、専門知識がなくても必要なコンポーネントをワークフローに沿って組み合わせるだけで開発できることになる。また、事前にリコーがコンポーネント同士の動作を検証しているため、検証にかかわる工数が大幅に削減できる点も大きなメリットだ。

DXや働き方改革、企業の生産性向上の第一歩は、デジタル化が前提となる。そして、これらの取り組みは現場と一緒になって取り組むことも必要だ。開発されたものに現場が合わせるのではなく、現場が関与する形でワークフローを改善することが、DXの実現につながる。

その点でEDWプラットフォームは、DXや働き方改革を進める企業にとって、実現のハードルを大きく下げられるものだといえるだろう。

リコーの山下社長は「複合機は、ペーパーレス化が進む中で逆風が吹いていると言われるし、実際に出荷台数は減少している」としながらも、「複合機にFAXで入ってきた注文書が、一度もプリントアウトされることなく、電子化して保存されたり処理されたりすることが増えているように、紙とデジタルを融合する役割を担っている」とする。

そしてこの点を踏まえ、「複合機は、電子(デジタル)とドキュメント(紙)の壁、会社と会社の壁、業務と業務の壁という三つの壁を打ち破り、それぞれを結んで、シームレスなワークフローを実現できる」との未来を示す。

従来の複合機は、ドキュメント(紙)をコピーする=紙を増やす、という役割が中心であり、企業においてペーパーレス化やデジタル化が進む中では今後、徐々に存在感が薄れていくのは明らかだ。

しかし、オフィスには必ず設置されている複合機が機能を広げることで、一転してペーパーレス化やデジタル化が進む企業になくてはならない機器になる。山下社長が言うように、複合機がデジタル化の入り口ともいえる役割を担うことになるからだ。

そして、複合機と業務アプリケーションを組み合わせることで、山下社長が「ワークプレイスをデジタルの力で強化し、エンパワーすることで、お客様の『はたらく』をよりスマートにすることになる」と語るように、業務プロセス全体の改善を図ることができる。

しかも、サブスクリプションモデルを活用すれば、主要顧客である中堅・中小企業でも、導入のハードルを下げられるのだ。

これは、複合機の新たなビジネスモデルの提案でもあり、複合機の生き残りをかけた挑戦でもあるといえるだろう。