無線LANからスタートしたクラウド管理型ネットワークソリューション

ネットワーク製品の設定といえば、コマンドラインから設定を行うもの。そうしたイメージをお持ちの方はまだまだいらっしゃるだろう。しかし、法人向けの無線LANを導入する場合は、複数台の無線LANアクセスポイントを統合管理するための無線LANスイッチ(無線LANコントローラー)をLAN内に設置し、一括して管理するといったソリューションが当たり前になっている。

これは、複数の無線LANアクセスポイントを同一拠点内に設置する場合、無線のチャンネルや電波強度などを適切に設定しないと最適なパフォーマンスが得られなくなるし、SSIDや暗号化の設定なども管理する必要があるためだ。

こうした無線LANコントローラーの機能をクラウドサービスとして提供するものがクラウド管理型の無線LANソリューションで、Merakiはその草分け的な存在といえる。Merakiはもともと、米国サンフランシスコにおいて2006年に起業されたベンチャー企業だったが、2012年に米Ciscoによって買収され、以来Ciscoのブランドとして提供されるようになった。

ネットワーク機器の情報は、基本的に全てクラウド上で管理できる点がMerakiの最大の特長である。無線LANコントローラーを別途購入する必要がなくなったことで、初期コストを抑えて導入できるだけでなく、設定に関しても特別な知識を必要としないため、ネットワーク機器の管理に対するハードルを大きく引き下げた。

こうして、無線LAN製品のクラウド型統合管理ソリューションとしてスタートしたMerakiだが、現在では有線LANのスイッチやセキュリティ機器、ネットワークカメラまで、さまざまなラインアップが提供されており、クラウド管理型のネットワークソリューションとして、さらに注目されるようになった。

大規模にも中小規模にも親和性が高い

導入規模としても、約2万店舗でMerakiを導入しているローソンのような大規模事例がある。一方で、利用に当たって特別な知識を必要としないことから、専任のIT担当者が一人、ないしは不在であるような中堅・中小企業との親和性も非常に高い。

このような事例もあり、Ciscoでは2018年に中堅・中小企業を対象にしたソリューションブランド「Cisco Start」のラインアップへMerakiを追加。さらに2019年4月には、日本発のMerakiビジネスとして展開されている、個人事業主や従業員10名程度の小規模オフィスに特化した「Meraki Go」の提供も開始されている。

中堅・中小企業が社内ネットワーク無線化にかじを切る際、最初から企業向けWi-Fi製品を導入するケースももちろんあるだろうが、量販店で売られているような家庭用Wi-Fiルーターを購入してLANを構築するケースも依然として多い。

しかしビジネスが大きくなるに従って、そうしたコンシューマーレベルのネットワークでは追いつかなくなり、デバイスの管理も限界になってくる。こういった顧客の問題を解決するソリューションの一つとして、クラウド上で機器や設定などを一元管理できるMerakiは非常に適している。

Meraki Goでは、こうしたユーザーでの利用も視野にいれており、ITの知識がなくても、箱から出し、スマートフォンからQRコードを読み込むだけで、アクセスポイントを簡単かつセキュアに構築・設定できるようにした。

価格面でも、屋内型アクセスポイント「Cisco Meraki Go GR-10」は実売で2万円台前半に設定され、しかもAmazon.co.jpから手軽に購入できる(逆に、現状ではAmazon以外からは購入できない)。

中堅・中小企業、特に小さな企業やSOHOでは、ITに関する悩み事をどこに相談していいか分からない、という企業もまだまだ多い。こうした企業に対してもCiscoブランドを浸透させるためには、非常に合理的な戦略といえるだろう。

可視化と管理の徹底によりネットワークのリスクを低減

無線LANからスタートしたMerakiだが、さまざまなネットワーク製品へそのメリットを広げようという動きがあり、現在では前述のように、有線LANのスイッチやネットワークカメラにまでラインアップが拡大された。

無線LANと有線LANを個別に管理するのではなく、統合してかつ簡単に管理できるのであれば、企業にとってもその方がメリットは大きいだけに、ある意味で当然の成り行きかもしれない。

また、これは無線LANにも有線LANにもいえることだが、企業の中には、“つながっているが故に特に管理されずに放置されているネットワーク”が意外と多く存在する。こうした管理されていないネットワークはセキュリティ上のリスクにもなりかねず、本来は放置すべきではないのだが、従来型の管理しづらいネットワーク機器については、そもそも「放置状態が把握すらされていない」ことも多い。

しかしMerakiのようなクラウド型ネットワーク管理ソリューションでは、ネットワークの状態が常に可視化され、全域に目がきちんと行き届いた管理を提供できる。この点でも価値があるソリューションだといえるだろう。

アウトソーシングサービスへの導入も広がる

こうして、ネットワークの管理を簡素化するクラウド型ネットワーク管理ソリューションが登場したことにより、ネットワーク管理者にとっての負担は軽減されたが、そうはいってもネットワークに関わる作業を自ら行うのは不安だ、という企業はまだまだ多い。また、故障時の保守をどうするか、といった問題は依然として存在する

そこで、クラウド型ネットワーク管理に対応した製品を利用しつつ、サポートや保守を合わせ、アウトソーシングサービスを提供している事業者もある。そのひとつが、2014年より提供されているNTT東日本の「ギガらくWi-Fi」で、アクセスポイントをレンタル提供するとともに、サポートデスクなどのサービスを含め、オフィスの無線LAN環境の導入から運用までを支援している。このサービスでは、一部ラインアップでMerakiが採用された。

大塚商会でも、無線LAN運用代行サービス「たよれーる らくらくWi-Fi」を2014年より提供しているが、2019年6月にはクラウド管理型無線LANソリューションである「Aruba Networks」の製品を利用した「たよれーる らくらくWi-Fi for Aruba」を発表。無線LANの設定変更業務、故障時の機器交換やオンサイト保守などに加えて、クラウド管理機能を利用したセキュリティ監視や性能監視を提供している。

アウトソーシングサービスを利用するのであれば機器は何を選んでも良さそうだが、実はクラウド型無線LANソリューションは、担当者に負担をかけず簡単に設定や管理が可能という点で、アウトソーシングを提供する事業者側にもメリットがあるのだ。より少ない人数で多くの顧客に対応できるのであれば、競争力のある価格を設定できるようになり、ひいては顧客企業にもメリットが出る可能性がある。

このように、クラウド管理型ネットワークソリューションは、ネットワークの世界を大きく変える可能性があるものだ。今後も、その動向に注目したい。