サポート終了後は新たな脅威に対する脆弱性が増す

サポートが終了することで、日本マイクロソフトから提供されていたセキュリティ更新プログラムや仕様変更、新機能の追加、サポート窓口での対応がなくなる。特にセキュリティ更新プログラムの提供が行われなくなることで、新たな脅威に対する脆弱性が増すことになり、サイバー攻撃の標的にもされやすくなる。

サポート終了後も、そのままWindows 7などを利用していると、トラブル時に日本マイクロソフトのサポートが受けられないため、ビジネスが止まるといったリスクが発生することも視野に入れておく必要がある。

日本マイクロソフトでは、「日本では、2020年にかけてさまざまな国際イベントが開催されるため、日本を標的としたサイバー攻撃が増加する恐れがある。最新環境への早期の移行を進めるとともに、パートナー企業と連携した支援に取り組んでいく」としている。

日本マイクロソフトでは2019年6月時点で、Windows 7搭載PCは、法人市場において1,141万台、個人市場では871万台が稼働していると推定している。2018年12月時点で、法人市場で1,600万台、個人市場で1,100万台が稼働していると推定していたのに比べると、この半年間で、かなり減少していることが分かる。特に従業員1,000人以上の企業では、95%が移行に向けた取り組みを開始しているという。

中堅・中小企業SMBでの取り組みが遅れているWindows 10への移行

だが、懸念材料もある。

サポート終了直後の2020年3月末には、Windows OSに占めるWindows 7のシェアが19%になると予測している。2018年6月時点では25%と推定していたのに比べて、着実に置き換えが進んでいることを示しているが、それでも2割近くがサポート終了後も利用され続けると見られている。

また中堅・中小企業(SMB)においては、Windows 7のサポート終了に対する認知率が77%にとどまっており、4分の1近くのSMBユーザーが、サポート終了を知らないという実態がある。

日本マイクロソフトでは、その点に強い懸念を感じているようだ。同社が打ち出す最新環境への移行支援施策も、SMBユーザーや地方都市の企業を強く意識したものになっている。

例えば、自らサポート窓口での相談受付を強化しているほか、パートナー各社の移行支援策の訴求を強化。SMBユーザーや地方都市の企業に接点を持つパートナー企業を通じた移行促進策の提案に余念がない。

また、Windows 10のライセンス、あるいはMicrosoft 365の契約をしている法人ユーザーを対象に、「Desktop App Assure」を提供。Windows 10およびOffice 365 ProPlusを展開する際に、アプリケーションの互換性問題が発生した場合には、スペシャリストによるアドバイスと修復ガイダンスを提供する。

一方でPCメーカーも、SMB向けを対象とした施策を強化し始めている。

例えば、大手企業で多くの導入実績を持つパナソニックのレッツノートの場合、大手企業では、新たなOS環境への移行がほぼ完了していることから、現在はSMB向けに強いパートナーとの連携強化に乗り出しているほか、働き方改革に最適化したアプリケーションをセットにしたサブスクリプション型の製品を用意して、新たな環境を導入しやすい環境を用意している。

DaaSと呼ばれるサブスクリプション型の取り組みは、大塚商会、オリックス・レンテック、パシフィックネット、横河レンタ・リース、富士通、VAIOなどが提供。PC本体とMicrosoft 365、サポートを組み合わせた月額支払いによる仕組みは初期費用を抑えた導入が可能であることから、まだ移行が完了していないSMBからも注目を集め始めている。

日本マイクロソフトでは、2020年1月14日のWindows 7サポート終了時点で、Windows 10の利用率を90%にまで高める目標を打ち出しているほか、2020年10月13日のOffice 2010のサポート終了までの間に、中堅・中小企業におけるOffice 365の利用数を10倍にまで増やしたい考えだ。

最新サーバーOSへの移行に加え、クラウド移行を推進

一方、Windows Server 2008は、2018年12月時点で48万台が国内で稼働しているという。

日本マイクロソフトでは、10年前に発売されたレガシーなシステムがまだ多くの企業で活用されている状況を指摘。「従来のWindows ServerやSQL Serverによるオンプレミスの運用から、クラウド環境への移行を提案。リフト&シフトによる、新たな環境への移行を促進したい」とする。

調査によると、日本におけるクラウドサービスの利用率は16%にとどまっており、グローバルの状況に比べると20ポイント程度も低いという。だが、その一方でハイブリッドクラウドの導入を検討している日本の企業は84%に達しており、その意識は一気に高まってきたところだ。

そこで、Microsoft Azureへの移行促進を提案するのと併せ、ハイブリッドクラウドの実現に親和性が高いWindows Server 2019への移行を提案。2020年1月までに、Windows Server 2019の利用環境の80%をハイブリッドクラウドにするという目標を打ち出している。

日本マイクロソフトでは、パートナー企業と共に「マイクロソフトサーバー移行支援センター」を設置して企業の移行活動を支援しているほか、Microsoft Azure環境へ移行したWindows Server 2008については、サポート終了後も3年間にわたり、延長セキュリティ更新プログラムを無償提供することを発表した。

さらに、大容量のデータを迅速に移行できる「Azure Data Box」の提供により、オンプレミス環境で利用していたファイルサーバーや業務アプリケーションでの大容量のデータを、クラウドサービスに移行することを支援。ファイルサーバーとクラウドストレージを同期できる「Azure File Sync」を提供して、オンプレミスのファイルサーバーの使い勝手はそのままに、ファイルをAzure上に同期することができるようにしている。

このように、クラウド環境への移行を前提とした施策を相次いで提供。AzureでWindows Server 2008やSQL Server 2008を利用する場合、AWS(Amazon Web Services)に比べてコストが5分の1で済むこと、Azureによるハイブリッドクラウド環境で利用すれば、最大で80%のコスト削減が可能であることを訴求するなど、Azureへの移行促進に力を注いでいる。

乗り換えはコストではなく、戦略的投資だというメッセージ

日本マイクロソフトでは、かつてのWindows XPやWindows Server 2003のサポート終了時において、終了時期に関する告知が遅く、結果として買い替え需要の集中を招いたこと、セキュリティ更新プログラムの提供が終了することによって脆弱性の課題が発生し、セキュリティ問題が起こるという危機感をあおりすぎたという反省がある。

そこで、今回の一連の延長サポート終了については、告知期間を長くし、さらにサポート終了による更新を後ろ向きの投資と捉えるのではなく、移行することによるメリットの訴求に力を注いでいる。

例えば、全ての企業にとって課題となっているデジタルトランスフォーメーションの実現には、クラウドをはじめとする新たな環境への移行が不可欠であり、働き方改革に対応した「いつでも」「どこでも」利用できるセキュアなPC環境は、最新のモダンPCによって実現されることを訴えている。

また同社の試算では、4年以上使ったPCは、起動に時間がかかったり、修理に時間がかかったりして、仕事に利用できない時間は年間129時間分に達し、金額換算するとPC1台当たり34万9,983円の損失が発生するとする。

あわせて、購入から4年以上経過したPCは、修理する確率が3.4倍高く、2.4倍の生産性を損失することになるという調査結果も示す。

長年PCを使い続けるよりは、新たな環境に移行した方がコストメリットもあるというわけだ。

移行を躊躇(ちゅうちょ)している企業の多くは、ITシステムを戦略的投資と考えず、コストと捉える傾向が多く、「まだ使えるので使っていたい」と考えるケースや、クラウドサービスは難しい、あるいはセキュリティに課題があるのではないかという誤解がベースにある。

新たな環境のメリットを訴求し、サポート終了を前向きな投資として捉える提案が、これから半年の重要なテーマとなりそうだ。

  • * 本稿に記載された各種IT製品、テクノロジーにつきましては、記事制作時の技術動向に関する幅広い知見を基にして構成されています。これは制作を担当したクラウドWatch編集部(株式会社インプレス)の所見であり、大塚商会においてお取り扱いのないものも含まれております。あらかじめご了承いただきますようお願いします。