ハードウェアをサブスクリプションで利用するという考え方

レノボは2019年7月、日本国内で「Lenovo TruScale Infrastructure Services」を発表、サービスを開始した。これは、サーバーなどオンプレミスに設置するデータセンター用ハードウェアを、サブスクリプション(月額課金制)で利用できるサービスであり、契約期間は3年~5年。米国では2019年2月に発表されていたものだが、それが国内でも利用可能になった。

このサービスでは、ビジネスニーズに基づき、必要とする容量のみを段階的に追加できるほか、契約期間中はハードウェアのアップグレードも可能。セットアップもレノボが行ってくれるので、ユーザー企業がITリソースを導入する必要はない。

また料金は、リモート監視、プロアクティブメンテナンス、ハードウェア管理、情報管理などのサポートサービスが含まれる基本料金の「ベース・プログラム・コスト」、月額固定で支払う「固定利用料金」、消費電力に基づく「可変利用料金」(従量料金)の三つから構成されるが、固定利用料金と可変利用料金の割合は合計で100%になるよう、契約ごとに決められる点が特徴といえる。

つまり基本料金のベース・プログラム・コストに加えて、必要なリソース量の変動が少ないワークロードには固定利用料金、リソース量の変化が大きい、あるいは予測できないようなワークロードには可変利用料金を適用すればよく、企業のニーズに応じてその比率を調整できるわけだ。

オンプレミスシステムのクラウドサービス化?

こうしたソリューションは、「主にファイナンス面において、クラウド的なメリットをオンプレミス向けに提供する取り組み」といえる。

企業では製品を購入する場合、そのときに必要な分のリソースだけではなく、成長を見越して多めに調達することが多い。これに対してサービス型であれば、利用していない余剰リソースに対して費用を払う必要がない。また、ベンダー側が予備のITインフラリソースを事前に設置していることが多いため、必要量が増えた場合は、即座にリソースを拡張することが可能だ。

オンプレミス環境の課題であった「初期投資が大きくなる」「必要以上の処理能力を購入することによる過剰投資が起こる」といった問題に解決策を提供することで、「クラウドで得られるメリットを同様に得られるオンプレミス環境」を構築するための選択肢が用意されてきたといえる。

最も、ハードウェアベンダーがこうした取り組みを行うのは、レノボが最初ではない。日本ヒューレット・パッカードは2018年2月、ITサービス利用型への円滑なシフトをサポートする新たなソリューション群「HPE GreenLake」の提供を開始しているし、デルも同様の取り組みを行ってきた。

先駆者といえるのはHPEの方で、HPE GreenLakeはさまざまなケースに対応できるように、大きく二つのメニューから構成されている。

そのうち「HPE GreenLake フレックスキャパシティ」は、オンプレミスシステムのクラウドサービス(IaaS)化を図るもの。顧客企業が必要とするサーバー、ストレージ、ネットワーク機器などのITインフラ製品と保守サービスをラッピングし、月額サービスとして提供する。

もともと同社では「フレキシブルキャパシティ」というサービスを提供しており、新サービスはそれをリブランディングしたものといえる。

一方の「HPE GreenLakeソリューション」は、顧客のワークロードごとにプリパッケージしたソリューション群で、ビッグデータ、バックアップ、オープンデータベース、SAP HANA、エッジコンピューティングといった、それぞれのワークロードに合わせたソリューションを提供する。HPEのハードウェアやソフトウェアに加え、ソフトウェアベンダーとのパートナーシップにより、調達から設計・構築・運用・保守までを包括的にサービス利用型で提供する点が特長という。場合によっては、アプリケーション層までをカバーできるわけだ。

3年後に全製品の“サービス化”を目指すHPE

こうした動きは今後も広がっていくと見られるが、日本ヒューレット・パッカードの米本社であるHewlett Packard Enterprise(HPE)は2019年6月に、なんと、「全ての製品をサービスとして提供する」方針を打ち出した。3年後の2022年を目標として、あらゆる製品をサブスクリプション、従量課金、およびサービスとして利用できるようにしようとしている。

この中心は、当然ながらHPE GreenLakeが務めることになるが、既存サービスだけでは対応しきれないため、この方針表明とあわせて、さまざまな新サービスが発表された。その一つが、中堅・中小企業向けの取り組みだ。

こうした企業にもHPE GreenLakeを展開すべく、中堅・中小企業向け市場に適した規模のソリューションとサービスを目的特化型で提供するが、中堅・中小企業の多くは自社のデータセンター施設を持たず、IT管理者も専任の担当者が不在だったり、居ても少数だったりする。そこで、データセンター事業者であるEquinixとCyrusOneとの新たなパートナーシップなどの施策が発表されている。加えて、中堅・中小企業にリーチしていくために、パートナー経由での販売も強化していくという。

また、無線LAN製品群「Aruba」の機器をサービスとして利用できるNetwork as a Service(NaaS)ソリューション「HPE GreenLake for Aruba」も発表されている。無線LANをはじめとするネットワークの世界では、管理機能をクラウドサービスとして提供するクラウド型無線LANが一般化しており、Aruba製品についてもクラウド管理機能が提供されるようになっている。今回の発表では、管理機能のみならず機器の利用自体もサービス化されたわけで、ネットワークインフラの購買および消費方法において、新しいオプションが加わったことになる。

従来型モデルか、サービスモデルか

もちろん、全ての製品をサービスとして利用できるようにするとはいっても、導入形態が全て“サービス”になるわけではない。設備投資およびライセンスベースの、つまり従来型モデルによるハードウェアとソフトウェアの提供も継続され、最終的にはどの製品/サービスについても、「従来型モデル」「サービスモデル」の双方を用意するのだという。

クラウドサービスについても、従量課金であるが故にかえってコストが高くなってしまう、という話はよくある。これはオンプレミスの従量課金サービスでも変わらず、基幹システムなど、将来にわたって必要なリソースが予測しやすく、ある程度利用量が固まっている業務の場合は従来型モデルの方が有利な場合も多いだろう。

HPEのアントニオ・ネリ プレジデントは、プレスリリースの中で「顧客がサービスとしてのテクノロジー提供を求めていることは誰もが認識しているが、また顧客はそれを自ら選択した形態で利用することも求めている」としており、顧客の要望に応えるモノだという点を強調した。

こうした、オンプレミスかクラウドか、従来型モデルかサービスモデルか、といった選択肢が増えることは、企業にとってはよいことかもしれないが、では何が正解か、ということも分かりにくくなってくる。IT部門は、“適材適所の戦略”をこれまで以上に考えていく必要があるだろう。