コンビニで進む無人店舗への取り組み

積極的に取り組みを発表しているベンダーとしては、日本電気(以下、NEC)がある。例えば、2018年には台湾セブン-イレブンが開設した台湾初の未来コンビニ「X-STORE」に、自社の顔認証AIエンジン「NeoFace」を活用した顔認証システム、および画像認識を活用したPOSシステムを提供していることを発表した。

X-STOREは2018年1月に台湾セブン-イレブンの本社ビル内に社員限定利用として開設され、同年6月からは一般消費者向けの利用が開始された。NECの顔認証システムは利用者の入退店と決済(本社社員限定)に採用されており、店舗入り口の横に設置した端末にて、事前に登録した顔画像とゲートのカメラで撮影した顔画像を照合して本人確認を行う仕組み。決済は統一企業グループ発行の電子マネー「icash2.0」を利用するが、本社社員は顔認証による決済も可能で、購買情報は給与システムに連携し、給与天引きで清算しているという。

また国内でも、2018年5月に「変なホテル ハウステンボス」内の無人コンビニ「スマートコンビニ」へ、顔認証システムと商品画像認識システムを提供。

さらに、2018年12月にはセブン-イレブン・ジャパンと共同で、省人型店舗のセブン-イレブン三田国際ビル20F店をNEC社員向けにオープンさせている。同店への入店にはウォークスルー顔認証を採用しているので、認証が完了すれば、立ち止まることなく自動ドアがスムーズにオープンするという。店内では、コミュニケーションロボット「PaPeRo i」が利用者の顔を認識し、属性に応じたおすすめ商品を提案してくれるほか、店内のデジタルサイネージでは、年齢や性別をもとに広告を表示する。

支払時は顔認証による決済に対応し、手ぶらでの決済が可能。今回はNECのグループ社員が対象のため、社員証での決済や給料天引きにも対応している。今後はnanacoなどにも対応予定としている。

なお社内店舗のため、店舗における特別なセキュリティ設備などはないが、映像解析によるエリア検知で侵入検知を行っており、管理者以外立ち入り禁止区域などを案内するとした。一方で店舗運営側に向けては、AIを活用した発注提案機能を提供しており、販売実績や天気などの多様なデータから、推奨の発注数を算出し提案してくれる。

こうした取り組みは、基本的にはその店舗が入っているビルに勤務する人、宿泊する人をターゲットにしており、ある程度対象が限定されたサービスといえる。もう少し広い商圏をターゲットにした取り組みとしては、2019年8月よりローソンが実施する、深夜省人化を目的としたスマート店舗の実験向けにシステムを提供した例がある。

このシステムでは、例えばQRコードでの来店客確認や映像解析技術を用いて人の識別を行う入店管理システム、自動釣り銭機能が付いた完全セルフレジ、店舗内カメラを用いたクラウド型カメラサービスなどを提供。これにより、売り場に店員を配置せず、来店客自身で決済する「スマート店舗」を実現するとしている。

夜間無人化店舗を九州でオープンしたトライアル

もちろん、こうした取り組みを行っているのはコンビニとNECだけではない。

福岡市に本社を持ち、200店舗を超えるスーパーを展開しているトライアルカンパニー(以下、トライアル)は、ITの導入をこれまでも積極的に行ってきた企業だ。顧客に商品スキャンと支払い作業を行ってもらうセルフレジや、支払いのみを顧客に行ってもらうセミセルフレジなどを積極的に導入してきたが、さらに「スマートレジカート」と名付けた、タブレット決済機能付きショッピングカートをRemmoと共同開発。2018年2月に福岡市にオープンした「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」へ導入している。

これは、カート自体にセルフレジが搭載されているようなシステムで、顧客は購入したい商品を自らバーコードリーダーでスキャンするか、タブレット上から選択してPOS登録を行っていく。商品を選び終わった後は専用のゲートを通ることで、自動的にプリペイドカード(事前に作成、現金などでチャージが必要)から決済が完了するため、来店客はレジに並ばず、スムーズに買い物を済ませることができる。

トライアルホールディングス 取締役CIO兼ティー・アール・イー 代表取締役の西川晋二氏は、同店での取り組みを報道陣に公開した際に、「将来的にはコンビニやドラッグストアのように、忙しい消費者を対象とする小規模の『クイック』店舗におけるレジの無人化につなげたい。eコマースの伸長によって、既存小売市場は30年後には半減するとも言われている。この時代を生き抜くには、寡占化による効率化と、ITおよびAIによる効率化が不可避。リテールITおよびリテールAIにより、日本の流通小売業とマーケティングのあり方を変えていきたい」と述べている。その言葉通り、2018年12月には次世代のスマートストア「トライアル Quick 大野城店」(福岡県大野城市)をグランドオープンさせた。

「トライアル Quick」は、大野城店が第一号店となる小型店舗で、「コンビニやドラッグストアのように『家事の時間を “Save” できる店』」をコンセプトに運営。夜間無人化を実現しており、22時~5時の間、無人店舗として営業している。

無人店舗となっている夜間は、入り口でトライアル専用アプリケーションのQRコード、もしくはプリペイドカードをかざすことで入店が可能。また、レジを全てセルフレジとすることで、人件費の削減を期待している。

さらに、前述のスマートレジカートと、商品動向分析システムと連動したAIカメラを200台導入し、アイランドシティ店に続くスマートな購買体験を実現している点も特徴だ。デジタルサイネージでは、店舗内の売り場と連動しトライアル独自のクーポン情報などを表示する、といった試みも行われている。

さらに決済機能についても拡充しており、日本電子決済推進機構が運営するJ-Debitサービスを活用。トライアルの専用プリペイドカードチャージ機にて、金融機関のキャッシュカードを利用して銀行口座から直接チャージできるようになった。来店客はATMで現金を下ろさずとも、キャッシュレスでプリペイドカードへのチャージが可能になるが、これは小売店におけるハウスプリペイドチャージ機では初の試みという。

“レジなし店舗”実現に向けた取り組みも

こうした取り組みでは、店舗は無人化(あるいは省人化)されているとはいえ、まだレジは存在する。省力化されてはいても、来店客はセルフでバーコードをスキャンし、会計することになるわけだ。

しかし、Amazon Goが実現しているような“レジなし店舗”を目指した試みも行われている。トライアルとパナソニック スマートファクトリーソリューションズは2018年2月、トライアル本社構内の実験店舗「トライアル ラボ店」において、ウォークスルー型RFID会計ソリューションの実証実験を行った。

これは、RFIDを貼付した商品を顧客自身で会計レーンに通すだけで、自動的に精算をするシステム。プリペイドカードなどの情報を事前にスキャンすることにより、商品読み取り後にそのまま精算が完了し、会計時間を大幅に短縮することが可能となる。来店客に、より高い利便性を提供するのと同時に、店舗側にとっても人による会計処理を省力化できるというメリットもあるわけだ。

さらに、こうした“レジなし店舗”を実現する「デジタル店舗出店サービス」を提供する企業も現れた。NTTデータは2019年9月、自社が持つデザインスタジオ内に実験店舗を設置し、ビジネスプランの仮説作成を行ったり、それを検証する実験店を実際に出店したり、多店舗展開したりできるようにするサービスを発表している。

このサービスでは、決済手段を指定したQRコードで認証入店することで、手に取った商品をそのまま持ち帰れるようにしているが、店舗内の上部に設置されたカメラや商品棚の重量センサーによって、来店客が選択した商品を判断し、それをオンラインカートに追加する仕組みとなっている。

こうして商品の遠隔管理を実現しているため、運営側も棚の状態が遠隔地から確認できるほか、消費者の行動動線やアクションをデータで把握することにより、店舗設計やマーケティングへ活用可能になるといったメリットが生まれる。

前述のトライアル Quick 大野城店でも、パナソニックとの連携により、既存の冷凍冷蔵ショーケースに対しリテールAIソリューションを実装。ショーケースに内蔵されたカメラの画像から、パナソニック独自の深層学習技術により、商品の在庫状態や商品に対する来店客の行動や属性を自動的に認識。POSデータでは得られなかった「非購買データ」を取得し、さまざまな面に生かしていくという。

省人化・無人化による人手不足への対応と合わせ、こうした店舗のスマート化への取り組みはこれからも進んでいくだろう。まだまだ実験段階の技術が多いが、実証実験などを通じて各社はノウハウを蓄積しつつあり、2019年後半にもさまざまな進歩が起きるだろう。今後の動向に注目していきたい。