最後のクライアント向けWindows OSとなるWindows 10

これまでのWindows OSでは、1年~2年に1回程度、新しい機能を搭載したサービスパックを提供するとともに、Windows XP、Windows 7、Windows 8(8.1)といった新しいバージョンのWindowsを継続的に開発し、販売してきた。それぞれのOSには最低10年間のサポート期間が設定されていたため、企業の中には複数のWindows OSが当たり前に混在していたわけだ。

これが、Windows 10からはガラッと変わる。従来のサービスパックに相当する機能更新プログラム(Feature Updates)は年2回のペースで定期的に提供され、Windows 10の機能を継続して強化する方針に変更。新しいWindows OSは開発されなくなった。

具体的に言うと、現在はWindows 7、Windows 8.1とWindows 10の三つが混在しているが、2020年1月にWindows 7のサポートが終了すると、Windows 8.1とWindows 10の二つのみが残る。また2023年1月にWindows 8.1のサポートが終了した後は、Windows 10だけが唯一のクライアント向けWindows OSとなる。

とはいえ、前述のように機能更新プログラムが定期的に提供され続けるため、バージョンの異なる複数のWindows 10が存在することになる。

マイクロソフトでは2015年7月29日に、バージョン 1507と呼ばれる最初のWindows 10をリリースしているが、同年11月10日に、最初の機能更新プログラムであるNovember Update(バージョン 1511)を提供。

その後も、2016年8月2日にAnniversary Update(バージョン 1607)、2017年4月5日にCreators Update(バージョン 1703)、同年10月17日にFall Creators Update(バージョン 1709)、2018年4月30日にApril 2018 Update(バージョン 1803)、同年11月13日にOctober 2018 Update(バージョン 1809)が相次いで提供されたほか、2019年5月21日は最新のMay 2019 Update(バージョン 1903)がリリースされた。

WaaSのコンセプト通り、今後もWindows 10の新しいバージョンが提供され続ける予定で、現時点では年に2回、3月と9月を目安に新たな機能更新プログラムがリリースされることになっている。

機能更新プログラムの適用時期をコントロールする

このようなスタイルで更新され続けていくWindows 10だが、問題となるのはそのサポート期間と更新のタイミングだ。

Windows 10では、セキュリティを改善するとともに、ユーザーが最新機能の恩恵を受けられるよう、各バージョンのサポート終了期限をリリースから18カ月(1年半)後に設定しており、計画的に機能更新プログラムを適用していくことが求められている。

例外として、Windows 10 Enterprise / Educationの両エディションに関しては、年2回リリースされる機能更新プログラムのうち、9月にリリースされる機能更新プログラム(直近ではバージョン 1809)に限り、サポート終了期限をリリースから30カ月(2年半)後に設定しているが、これまでより短いサイクルでのアップデートが求められるのは間違いない。

また企業では、配信された機能更新プログラムが自社のシステムにどのような影響を及ぼすかを調査する必要があり、適用時期をコントロールしたい、といったニーズもある。

Windows 10では、ユーザーが能動的にアップデートを行わなくとも半強制的にアップデートされてしまう仕様になっているため、アップデートの制御は企業の管理者にとっては頭の痛い問題だ。

そこでマイクロソフトでは、機能更新プログラムの適用を遅らせるための仕組みをいくつか用意している。その代表的なものがWindows Update for Business(WUB)というツールで、これを利用すると最大365日、機能更新プログラムや毎月定例的に配信される品質更新プログラム(修正パッチ)の適用を遅らせることが可能となる。例えば、IT部門の環境のみでテストを行ってから段階的に社内へ適用していく、といった計画的なアップデートが可能になっている。

また、ローカルに設置するWindows Update サーバーともいえるWindows Server Update Services(WSUS)、システム構成管理製品のSystem Center Configuration Manager(SCCM)といったツールを利用することでも、機能更新プログラムや品質更新プログラムの適用時期をコントロールできる。

配信によるネットワークトラブルを防ぐ

もうひとつ、機能更新プログラムの適用で問題になってくるのが、個々のPCへの配信方法だ。

機能更新プログラムはインターネットから配信されるので、ユーザーは数GBの大きなファイルをインターネットからダウンロードし、自PCに適用することになる。このため、多くのPCを社内配置する企業において無計画にアップデートが行われると、ネットワークに多大な負荷をかけてしまう。

2019年8月29日には、Windows Updateが原因と思われる予期せぬトラフィック増加の発生により、NTTコミュニケーションズのネットワークサービスにて通信遅延が発生し、企業によっては業務が完全にストップしてしまう、といった事態となった。

ここまで大きなトラブルが発生することはめったにないが、社内のPCが一斉にダウンロードを開始した場合、社内ネットワークがWindows Updateのトラフィックに占有されてしまい、業務に支障が出るといったことも起きかねない。

こうした事態を防ぐべく、WSUSやSCCMでは更新プログラムをローカルサーバーへダウンロードしておき、そこから社内のPCへ配信するといった機能を搭載している。これをうまく利用すれば、無計画なネットワーク接続に起因するトラブルを軽減できるだろう。

移行支援サービスなどをうまく使おう

このようなWindows 10とWaaSの考え方により、Windows 7からの移行では単にOSの乗り換えにとどまらず、PCの運用環境そのものを考え直す必要が生じてくる。いざ乗り換えを行おうと思っても、すぐに準備ができない企業も多いだろう。

そこでさまざまなベンダーが、Windows 10への移行支援ツールや移行支援サービスを提供している。またサービスによっては、前述したようにさまざまな注意が必要な、移行後のアップデート計画も踏まえた支援を行ってくれるものもある。Windows 10への移行が自社だけでは手に余ると判断した場合は、こうしたツールやサービスを利用して、移行を計画・実施すればいいだろう。

とはいえ、もう残された時間は長くない。マイクロソフトでは、さまざまな事情でWindows 7を継続して利用せざるを得ない、あるいは移行がサポート終了期限に間に合わない企業を支援するため、Windows 7へのセキュリティ更新プログラム配信を延長する、つまりサポート期間を延長する有償プログラム「Windows 7 Extended Security Update(ESU)」が、2019年12月1日から利用可能になる。

従来は、ボリュームライセンスを利用する場合のみ購入可能だったが、2019年10月にはどの企業でも購入できるように制度が改訂された。Windows 7 Professional/Enterpriseを利用している企業は、ESUを購入することで2020年1月もセキュリティ更新プログラムの配信を受けられるようになるため、Windows 10への移行期限を少し延ばすことが可能だ。

とはいえ、これは決して安いサービスではないし、期限も最長で2023年1月までに限られている。Windows OSを使い続ける限り、Windows 10への移行は避けられないことだ。これはあくまでも最後の手段として考え、早急にWindows 10への移行を進めるべきだろう。

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