必要のない残業を減らすために

2019年4月1日から働き方改革関連法では順次、労働時間の客観的把握、残業時間上限の厳守、年次有給休暇の年5日取得などが義務付けられるようになったことで、企業にはより一層の労働時間管理と削減が求められるようになった。

そのため、総務や人事といった部門向けに提供されている人事管理、勤怠管理などのソリューションにおいては、休暇の消化日数が少ない従業員がいる場合や、定められた労働時間(残業時間)を超過しそうな従業員がいる場合などに、製品側から警告を発するような強化が行われているものが多い。

しかし、これはあくまで法制度への対応であって、従業員が実際の労働時間を削減するためには、また別の取り組みが必要になる。そのうち、システム側での対処が可能なのは、定時後もダラダラと作業を続けてしまう“ダラダラ残業”の削減だ。

“働き方対策支援ソリューション”と銘打っている製品では、必要なもの以外の残業を削減するため、定時終了時にメッセージをポップアップさせて退社を促すとともに、指定時刻にはPCを強制的にシャットダウンしてしまったり、残業理由を上司へ簡単に申請する仕組みを提供したりしている。

これによって、業務の終了時刻を意識付けする一方、「残業は上長承認を受けてから」というルールを徹底させることで、必要のない残業を抑止するわけだ。

IT活用で働き方を変革させる

ただし、一人一人が多大な業務を抱えているような場合は、残業を減らせと言われても簡単ではなく、生産性の向上が求められることになるだろう。こうした場合にも、さまざまなITソリューションを活用できる。

その中で注目されているものとしては、まずWeb会議が挙げられる。これを導入すると、多くの支店・支社を持つような企業でもリアルタイムで遠隔会議を行えるようになるため、移動を考慮する必要がなくなり、交通費や移動時間の削減につながってくる。また、インターネット接続環境さえあれば社内である必要もなく、自宅やモバイル環境でも利用可能なため、テレワークで使われるケースも増えてきた。

コミュニケーションの円滑化という点では、ビジネスチャットも効果的だ。企業内・企業外とのコミュニケーションをメールや電話に頼っているケースは多いが、急な連絡が必要になったとき、メールでは相手に読まれたかどうかが分からず業務が進まなかったり、細かいニュアンスが伝わらなかったり、といったことはよくある。

しかしビジネスチャットでは、相手のスマートフォンやPCなどに通知が届くため、メールよりは連絡が届きやすいほか、既読・未読が把握可能だったり、繰り返しのやり取りがしやすかったり、といったメリットもある。一方で電話と比べると、相手の時間を専有しにくいし、連絡も取りやすい。こうしてコミュニケーションの効率を高めれば、生産性の向上が見込めるだろう。

また、RPA(Robotic Process Automation)による業務の効率アップも注目されている。RPAとは、従来は人力で行ってきたバックオフィスの業務をソフトウェアロボットによって自動化し、効率アップするソリューションだ。主に定型業務などを自動化することにより、人が行う場合と比べて作業効率の大幅アップが見込める。同時に正確性の向上も実現するので、ミスの防止にも効果的だ。

最近では、AI技術の進歩に伴ってOCR(Optical Character Recognition/Reader)の精度も上がっているため、スキャナーや複合機などで電子化した手書き帳票をOCRでデータ化し、RPAによってシステムに登録する、といったソリューションも増えている。

ただし、どの業務にRPAを導入すれば効果的なのか、という判断は意外に難しい。そこで、ユーザーのPC操作情報を収集してログを蓄積・分析し、業務フローを自動抽出するようなサービスも登場してきた。これを利用すると業務の可視化を手軽に実現できるため、自社に合ったRPA対象業務の抽出や判断を短期間で実施できるのだという。

どの業務にRPAを導入すべきかの判断を迷う場合は、こうしたソリューションを導入してみるのも効果的だろう。

自分自身の働き方を見直してみる

もっとも、こうしたITの導入により生産性の向上を実現したとしても、根本的な働き方が変わっていなければ、それは本当の意味での働き方改革とは言えないだろう。そのための第一歩は、自分がどういう働き方をしているのかを把握することであり、そのためにITを活用する動きも出てきている。

マイクロソフトが提供しているOffice 365の「MyAnalytics」も、そうした機能のひとつ。Exchange Onlineにおけるメールの読み書きや会議の時間がユーザーごとに集計されダッシュボードで示されるので、どの業務にどのくらいの時間をかけているかを把握することができる。

また、Office 365に蓄積された“多くのユーザーの活用方法”をAIが分析し、それと自身のデータを照らし合わせることで、ユーザーが自らの作業パターンを改善できるように支援する機能も備えている。

例えば、「残業時間に送信したメールを受信者が読むのに費やした時間は3時間だったため、緊急性のないメールは翌朝まで送信しないことを推奨したり、多くの会議で同席した同僚と出席する会議を分担したりすることなどが提案される」といったように、人間だけではたどり着けない情報をアドバイスしてくれるのだという。

さらには、メールなどでのやり取りに費やした時間を表示でき、相手が自分とのやり取りに費やした時間、メールについては既読率も確認可能なため、メールの返信待ちで業務が進まないといったケースがどのくらいあったかも把握できる。こうした“ロスタイム”を改善する必要があれば、前述のWeb会議やビジネスチャットを利用すればよく、そのための判断材料として利用できるわけだ。

また、働き方の可視化をうたっているサービスも増えており、そうした中には、勤務時間の「見える化」に加えて、利用しているアプリケーションごとに作業時間を集計する機能を備えているものも出てきた。AIによるアドバイスがあるわけではないが、より細かく自身の作業を振り返れるため、仕事の見直しにつながってくる。

なお、IT部門が利用するIT資産管理ツールにもこうしたアプリケーション利用時間の集計機能を備えているものは多く、これらを利用することでも、企業内の個人が自らの働き方を客観的に把握することが可能になる。

こうして見て来たように、一口に働き方改革といってもさまざまな側面があり、利用するITツールも多岐にわたっているが、必ずどこかに改善できる点があるはずだ。従業員一人一人が働き方を見直すことで、組織の“改革”につながるケースも多い。ぜひ一度、自分の仕事の仕方を振り返ってみてほしい。

  • * 本稿に記載された各種IT製品、テクノロジーにつきましては、記事制作時の技術動向に関する幅広い知見を基にして構成されています。これは制作を担当したクラウドWatch編集部(株式会社インプレス)の所見であり、大塚商会においてお取り扱いのないものも含まれております。あらかじめご了承いただきますようお願いします。