活用進むテレワーク、在宅勤務だけとは限らない……

IDC Japanの推計によれば、2017年のテレワーク導入企業は14万社、企業導入率4.7%。そして2022年には29万社、企業導入率9.7%へ拡大すると予測されている。つまり、10社に1社がテレワークを導入するようになるということだ。

総務省の通信利用動向調査による利用率はもう少し高く、2019年の調査では、テレワークを導入している企業は19.1%(2018年は13.9%)となった。具体的な導入予定がある企業(7.2%)を合わせると、4社に1社が活用中、ないしは活用意向がある企業ということだ。

同調査からその利用形態を見ると、移動時間中、あるいは外出先での空き時間などに行うモバイルワークが一番多く、63.5%。以下、在宅勤務(自宅利用型テレワーク)が37.6%、サテライトオフィス勤務(施設利用型テレワーク)が11.1%の順となった。IDC Japanによれば、自宅利用型を中心に導入が進んでいるというが、いずれにしても施設利用型は少ないという結果が出ている。

これは、施設利用型の抱える課題がなかなかクリアされていないからだろう。自宅の設備を利用できる自宅利用型と比べ、サテライトオフィス(シェアオフィス/コワーキングスペース)などを利用するのが一般的な施設利用型の場合、不特定多数の人間と接触する可能性があるなど、セキュリティ面で懸念が残る。貸し会議室などを利用する場合には、それなりに高額な利用料金が必要になるため、コスト面でもハードルがある。

また、Wi-Fiが利用できない(あるいは、用意されていてもセキュリティが不安で利用できない)、周囲の音がうるさいといった環境面の問題もあるだろう。Web会議に参加しようと思っても、カフェスペースやサテライトオフィスでパソコンやスマートフォンに向かって話し掛けるわけにもいかないため、コミュニケーションの面でも制約を受けてしまう。もちろん、秘匿が求められる内容を話し合うなんてもっての外だ。

こうした課題は、既に利用率が高いモバイルワークについても当てはまる。カフェなどで作業をする場合、第三者による物理的なのぞき見には常に注意する必要があるし、セキュリティに不備のある公衆Wi-Fiの利用にも注意を払う必要がある。コミュニケーションが制限されてしまうという問題についても同様だ。

ワークスペースを作り出してしまおう!

このような課題を解決するために、サテライトオフィスで個室を借りるという手段はあるものの、やはり1人で利用するには料金が割高になる。そこで、オフィス以外の個室を利用しようという取り組みが以前から行われている。例えば、平日の日中にはさほど稼働率が高くないカラオケボックスをワークスペースとして安価に貸し出すサービスが行われている。

第一興商が手掛けるカラオケルームのビッグエコーでは、カラオケルームを仕事場として時間貸しする「オフィスボックス」を、2019年10月より全店で展開。1人であれば60分600円(税別)から利用できるようにした。

また、スペースにコミュニケーション用の箱(ブース)を設置して個室を作り出す、といった取り組みも行われるようになった。ブイキューブや関連会社のテレキューブが提供している「テレキューブ」は、「Web会議や電話で安心してコミュニケーションを取れる場所が少なく、それがテレワーク導入の足かせとなっているなら、コミュニケーションできる場所を設けてしまおう」という発想の下で開発された製品だ。

簡単に言ってしまえば、防音性の高い空間を提供する小型のコミュニケーションブースで、内部にはテーブルとイスが設置されている。プライバシーとセキュリティが保護された環境においてさまざまな作業を行うことができる。

ブースが防音仕様になっているため、周囲を気にすることなく、静かな環境で作業に集中できる。また、ブース内の音も外に聞こえにくくなっているので、Web会議や電話なども周囲に気兼ねすることなく行うことができる。これにより、チームや組織で働くために必要不可欠なコミュニケーションが不足してしまうという、テレワークならではの課題を解決できるというのだ。

これを事業者が購入(あるいはレンタル)して、サテライトオフィス、オフィスビル、カフェ、商業施設、公共施設、鉄道の駅や空港などに設置し、サービスとして提供すれば、手軽にテレワークできる場所が増えることになる。

既に多くの場所で利用可能

テレキューブは実際に、既に幾つかのサテライトオフィスサービスで採用されている。例えば、JR東日本が提供している東京駅構内のシェアオフィス「STATION DESK 東京丸の内」や、住友商事マシネックスが展開しているワークスペースシェアリングサービス「Work Space SMX」だ。個室のような作業場所が確保されているので、オープンスペースと比べてセキュリティも保たれており、施設利用型テレワークでの大きな問題をクリアできることになる。

また「利用したいときにちょうどいい場所が見つからない」というモバイルワークでの課題も、こうしたサービスを利用すればクリア可能だ。テレキューブは、駅やオフィスビルのエントランスなどへの設置も進められている。2018年11月から2019年7月にかけて、東京丸の内エリアにて三菱地所が保有する三つのオフィスビルのエントランスなどに、実験的にテレキューブが設置された。

こうした取り組みはその後も拡大され、今では商用サービスとして利用できる。Work Space SMXでは、山王パークタワー、小田急電鉄の町田駅や経堂駅など多くの場所にテレキューブを設置しており、例えば取引先への訪問前後に立ち寄って、スキマ時間でモバイルワークを行うことができる。JR東日本でも、東京や新宿、立川といった駅を皮切りにブース型シェアオフィス「STATION BOOTH」の展開をスタートさせており、テレキューブをカスタマイズしたブースを設置している。

なお、こうした「箱」を提供できるのはテレキューブだけではない。空きスペースを活用した貸し会議室やレンタルスペースの予約サービスを提供しているスペイシーでは、2018年5月より、オフィスビルや駅構内の空きスペースを活用するテレワークのシェアリングサービス「日本版モダンワークプレイス」の実証実験を、ヤマハやマイクロソフトと共同で行っている。

実験開始当時行われた記者説明会で、スペイシーの武田 正史執行役員は、「通信環境やモバイルデバイス、ソフトウェアなどは整ってきたが、働くために適した場所がないという課題がある」と、リモートワークに対する問題点を指摘。ヤマハがもともと楽器練習用として提供していた防音室をワークブースに転用し、時間貸しを行っている。このワークスペースは、新橋などで利用可能だ。

また、既に終了してしまったものの、2018年6月1日から2019年7月31日まで、東京メトロと富士ゼロックスが共同で、東京メトロの駅構内にてサテライトオフィスサービスの実証実験を行っていた。電源やWi-Fi、液晶ディスプレイなどを備えたワークブースを設置。スキマ時間を活用したちょっとした作業だけでなく、じっくり腰を落ち着けての利用にも対応できるとしていた。

東京オリンピック・パラリンピックの開催を2020年夏に控え、特に都心部ではテレワークの必要性が高まると予想されている。カフェや、オープンなサテライトオフィスでは充足し得ないニーズに応える動きは、今後も一層増えてくるだろう。

テクノロジーが進歩してリモートで働くテレワークが現実となった今、在宅勤務をはじめ、自社、そして自分の働き方を考えるには良い時期なのかもしれない。

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