導入と運用を簡素化するCI

CIは、単体のサーバー、ストレージ、スイッチなどのネットワーク機器を組み合わせて提供される製品で、ベンダーやシステムインテグレータは、それらをシステムラックに収め、設定が完了された状態で出荷する。このため、さまざまな製品を組み合わせていても、ユーザーは迅速に利用開始できることが売りになっている。

CIが出現した際、このような「事前構成済み」のメリットが各社からアピールされた。これを単なるセット販売、もしくはコンポーネントの組み合わせによる相性問題の解決、といったニュアンスで受け止めたユーザーも少なからず存在するようだ。

しかしながら、運用管理負担の軽減を考えるうえで、この事前構成済みの価値は決して小さなものではない。それは、こうした組み合わせ問題の検証機会が、システム構築時の一度だけというわけではないからだ。

セキュリティリスクへの対策や各種の機能強化など、システム運用中に個々のコンポーネントはバラバラのタイミングでアップデートされる。そのため、厳密に言えば、組み合わせ問題の原因となるような不整合は、システム運用期間を通して繰り返し発生する可能性がある。

従って、構成を限定することでベンダー側が導入前のさまざまな検証を済ませているのみならず、アップデート時の検証も行ってくれるのであれば、運用時にも継続してCIのメリットを得られる可能性があるわけだ。

製品としては、シスコとネットアップの「FlexPod」、Dell EMCの「Vblock」などが知られている。

シンプルで拡張しやすいHCI、しかし……

一方でHCIは、CIとはどう違うのだろうか。

一番大きな違いは、HCIでは独立したストレージ製品を利用せず、SDS(Software Defined Storage)技術を活用し、サーバー内蔵のHDDやSSD/フラッシュメモリーを仮想的に統合し、ストレージプールを構成するという点にある。

HCIも大規模になればラックに納められて提供されるため、見た目は似たような形になるが、基本的にはサーバーとネットワーク機器のみで構成されているわけだ。おおむね2~3台のノード(この場合は、ストレージ内蔵サーバー)を最小構成としており、ノードを追加すれば、複雑な設定を行うことなく、即座に、またリニアに性能や容量を拡張できる点がHCIの売りである。

先駆けとなったNutanixや、VMwareの「VMware vSAN」といったソフトウェアをハードウェアベンダーが自社サーバーに搭載した製品が、Dell EMCやNEC、日立、Lenovoなど、さまざまなベンダーから提供されている。そのほか、Dell EMCの「VxRail」、日本ヒューレット・パッカード(HPE)の「SimpliVity」などが著名な製品として知られている。

CIとHCIには簡単に言えばこうした違いがあるのだが、製品が進化する過程で、この表面的な差があいまいになる動きも出ている。

例えば、ストレージベンダーのネットアップが2017年11月に国内提供を開始した「NetApp HCI」は、一つのシャシーに4個のコンピューティングノードまたはストレージノードが収まる形で構成される。つまり、HCIでは一体型だったサーバー(コンピュート)部分とストレージ部分を分離し、より柔軟な構成を可能にした、ということだ。

ハードウェア部分をストレージ内蔵サーバーに統一する初期型のHCIの手法は、コンピュート/ストレージ双方のリソース要求が同じようなペースで高まっていく場合は、導入や運用がシンプルであるというHCIのメリットを享受できる。

しかし、そうでない場合は、拡張効率で大きな無駄が生じることになる。例えば、現状のシステム構成でコンピューティング能力に不足はないが、ストレージ容量だけが逼迫(ひっぱく)してきたという、よくあるケースを想定してみよう。このときHCIなら、両リソースをセットで増強するしか選択肢はない。また導入後の拡張に限らず、システム導入当初の両リソースのバランスが、HCIの構成にマッチしていない場合もあるだろう。

この問題に対処すべく、HCIベンダーはコンピュート/ストレージともに何段階かのバリエーションを用意することで、多少のバランス調整は行えるような配慮を行っている。

だが、個々のユーザーのワークロードの特性によっては、調整可能範囲を逸脱することもありえる。もちろん、多少のアンバランスであれば、運用管理のシンプル化というメリットがデメリットを上回ると判断して許容する場合もあろうが、そうでない場合はHCIを導入できない、ということになる。

前述したNetApp HCIについては、このリソースのアンバランスの調整幅をできる限り多く取ることを狙った設計、と見ることができる。コンピューティング性能が必要な場合はコンピューティングノードを、ストレージ容量が必要な場合はストレージノードを増設すればよいため、より要件に応じた導入・運用が可能になったわけだ。

ただし、コンピューティングノードとストレージノードを分け、任意の比率でシャシーに搭載できるようにした結果、ユーザー側で両リソースの構成比率について考えなくてはならない。この点においてシンプルさというメリットは一歩後退したと言わざるを得ない。

分割することで柔軟さを増した「dHCI」

こうしてHCIが進化する中で、HPEは2020年1月、自社のエンタープライズストレージ「HPE Nimble Storage」を中核とした統合型インフラ製品「HPE Nimble Storage dHCI」を発表した。

「dHCI」は、disaggregated Hyper Converged Infrastructureの略で、「構成要素に分けられた(disaggregated)HCI」を意味しており、HCIのシンプルさと、CIの柔軟性を兼ね備えている点が特長だという。

具体的には、NetApp HCIのような分離構成をさらに進め、サーバーとストレージはそれぞれ独立した別のハードウェアとなった。コンピューティングリソースとしてx86サーバー「HPE ProLiant」を、ストレージリソースとして管理機能を強化した「Nimble Storage」を採用。サーバーとストレージをそれぞれ個別に拡張していけるようにしているため、ワークロードに応じて必要な構成を選択できる。

これは、HPEがdHCIを単一用途向けではなく、要件の異なるワークロードに対応できる、つまり複数の用途で利用できる統合インフラだと考えているからだ。例えば、ストレージのI/Oが必要なワークロードにも、サーバー側の処理リソースが必要なワークロードにも、同一インフラで柔軟に対処可能だという。

HPEがこの製品に自信を持っているのは、ストレージ部分を担当する「Nimble Storage」に高い実績があるからだ。今回は、サーバーやストレージの増設によって仮想化環境を容易に拡張できるように、「Nimble Storage」のソフトウェア、特に管理機能を強化しているが、裏を返せばそれは、エンタープライズで実績を積み重ねてきた「Nimble Storage」の機能、管理性をそのまま利用してHCIのような使い方ができる、ということになる。

なお、dHCIではHCIの特長である容易な導入、拡張といった点も維持されており、あくまでHCIの1ジャンルとして販売されるという。HPEによれば、ラックマウント後から15分で仮想マシン(VM)を使用開始できるとのこと。仮想環境はVMwareに対応しており、VMware vCenterを通じたVMベースでの運用が可能な点も、HCIライクといえる。

もっともユーザー企業からすれば、楽に運用でき、自社の要件に見合った性能が、手頃なコストで手に入るのであれば、HCIやCI、dHCIといった区分は重要ではないが、選択肢が増えるのは歓迎すべきことなのかもしれない。

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