VDIとDaaS

VDIは、サーバー側に用意された仮想デスクトップ環境に対して、ネットワーク経由でアクセスするソリューションだが、そのサーバー機能をクラウド上から提供するものがDaaSだ。セキュリティ対応や管理面で有利なVDIのサーバー機能をクラウドに移せば、プロビジョニングやサーバー管理の作業も軽減可能。スマートフォンやタブレットなど、多様化するビジネス端末の種類を選ばず、重い処理もクラウドで行うことで軽快になるといった特長を持つ。こうしたメリットから、近年ではユーザーも増えてきた。

少し古いデータだが、調査会社の株式会社アイ・ティ・アールによれば、2016年度のDaaS市場規模は、売上金額が前年度比31.7%増の113億円。今後も勢いは落ちず、2021年度には325億円まで拡大すると予測されている。

このようにDaaS市場が伸長する理由としては、VDIの煩雑さが解消されるという点が挙げられる。一般にVDIは、運用コストを削減できる半面、構築が複雑で導入コストが高くなる、インフラのサイジングが難しいといったデメリットが指摘されている。ところが、こうしたVDIのサーバー機能、つまり複雑な部分をクラウドで提供するDaaSは、導入しやすさに優れたソリューションといえる。

またクラウドサービスならではのメリットとしては、拡張/縮小が容易なことが挙げられる。サービスによって異なるが、緊急時には増やし、平常時には必要な分だけに戻す、といったことが可能なものも多く、こうした柔軟さ、投資効率のよさもDaaSの特長といえる。

なお、DaaSのサービス自体は古くから存在しており、主にCitrixなどのパートナーが提供してきた。例えばMicrosoft Azureを利用したものでは、「Citrix Cloud on Microsoft Azure」や「VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure」といったソリューションが存在している。また、ほかのパブリッククラウドでも、Amazon Web Services(AWS)が「Amazon WorkSpaces」を提供しているほか、もちろん日本企業もDaaSを提供してきた。

WVDの特長とメリット

これらに対してWVDは、マイクロソフト純正のサービスとしてMicrosoft Azure上の仮想マシンから提供され、Windows 10や基幹業務アプリケーションを仮想化できる。従来のVDIはサーバーの構築から始めねばならなかったが、WVDはMicrosoft Azureのコンソールから設定してすぐに使用開始でき、マイクロソフトでは「WindowsとOfficeのデプロイ、拡張も数分でできる」と、迅速さを強調している。また、従来のWindows Server VDI/RDS環境をシームレスに移行することも可能だという。

さらに日本マイクロソフトでは、「Microsoft Azureのインフラは全世界に54のリージョンを持ち、海底ケーブルを含めてファイバー網のマイル数は10万以上、エッジサイト数は135以上、パートナー数も200を超えている。WVDの仮想マシンは、こうした広大で高品質なグローバルインフラとバックボーン、柔軟なスケーラビリティを活用できる点が大きなメリットだ」と、インフラとしてのMicrosoft Azureのメリットもアピールしている。

さらに、Windows 10のマルチセッション環境を提供している点も大きな特長だ。通常、WindowsでVDIを利用する場合は、ユーザーごとに仮想マシンを割り当てる必要があるが、マルチセッションに対応したWVDでは、一つの仮想マシンで複数のクライアントに対してVDIを提供できる。つまり、仮想マシンのリソースを共有できるのだ。

こうした点を踏まえてマイクロソフトでは、WVDのメリットを「Microsoft Storeと既存のWindows基幹アプリケーションと互換性を保ちながら、マルチユーザーWindows 10体験を可能にする唯一のサービス」と説明している。また、従来の複雑なライセンスが不要となるため、コスト削減が可能という点もアピールした。

このほか、WVDでWindows 7を利用すれば、2020年1月の延長サポート終了後も、3年間追加費用なしで拡張セキュリティアップデート(ESU)が提供されるという。Windows 7上の業務システムをどうしても維持しなければならない企業ユーザーにとっては魅力的な選択肢だろう。有償の延長サポートサービスである「Windows 7 Extended Security Update(ESU)」は高額になるからだ。

WVDを利用できる製品は、Windows 10 Enterpriseのサブスクリプション版であるWindows E3/E5など。また、Windows 10 EnterpriseにOffice 365とEMS(Enterprise Mobility + Security)をパッケージしたMicrosoft 365のE3/E5、Businessなどでも利用できる。

パートナーとはビジネスを食い合う?

同時に注目されるのがパートナーとの関係だ。マイクロソフトはWVDによって、従来はパートナーの領分だった仮想デスクトップサービスに進出する。ビジネスを奪うのかという疑問が出てくる。

マイクロソフトはこの点について、WVDは「ユーザーのニーズに応えて拡張可能なプラットフォーム」であり、パートナーは付加価値を提供できると説明。Citrixのほか、CloudJumper、Lakeside SoftwareなどがWVDパートナーとして協力すると発表している。

これを裏付けるかのように、シトリックス・システムズ・ジャパンでは、同社の管理コンポーネントをクラウドサービスとして提供する「Citrix Cloud」と、WVDとの連携性について、「Citrix Cloudでは、WVD環境の効率的で快適な運用を実現するための機能を拡張する。またWVD環境だけでなく、VDIをホストするオンプレミスやほかのクラウドを含めたハイブリッドクラウド環境の統合ポイント、およびその入り口としても機能する。VDIワークロードがどこで稼働していても、VDI全体を統合管理できるコンポーネントを提供できる」と説明。WVDやほかのVDIソリューションに対して付加価値を提供するとアピールしている。

こうした動きは日本のパートナー企業にも評価されており、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)では、WVDとCitrix Cloudを連携させたサービスの販売を既に開始した。

WVD(マイクロソフトのライセンス)単体での販売になるか、Citrix Cloudなどパートナーソリューションと組み合わせての販売になるかは、インテグレーションを行う企業側、またそれを導入する側の選択にもよるだろうが、導入しやすいサービスが増えることは、ユーザーとしては歓迎すべきことだ。WVDは、VDIやDaaSを検討するうえでの有力な選択肢の一つになっていくだろう。

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