2017年 9月 1日公開

仕事効率を上げるパソコン手帖

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ブームになるか? AIスピーカー

テキスト/芝田隆広

昨今「AIスピーカー」が話題を集めつつある。スピーカーでありながら、話し掛けるだけでニュースのチェックやオンラインショッピングができる便利なデバイスで、先行発売されている米国では品切れも続出の人気となっている。そこで今回は「ポストスマートフォン」としても期待される新ジャンルのデバイス「AIスピーカー」の可能性を探ってみた。

ポストスマートフォンとなるか? AIスピーカーに注目集まる

最近はネットや新聞などのニュースで「AIスピーカー」(スマートスピーカーと呼ばれることもある)の話題を見掛けることが増えてきた。
AIスピーカーとは、文字どおりAI(人工知能)を内蔵しているスピーカーで、手を使わず音声だけで操作できるのが特徴。ただ音を鳴らすだけでなく、話し掛けるだけで音楽を再生できるほか、「ニュースを読み上げる」「カレンダーをチェックする」「メールを読み上げる」「ネットショッピングで買い物をする」「家電を操作する」といったさまざまな処理が行える。
実際にどんな商品であるかは、文字で読むよりも以下のAmazon製AIスピーカー「Amazon Echo」の動画を見ると分かりやすい。英語の動画だが、家庭内でさまざまな家事をしたり、リビングでくつろぎながらさまざまなサービスを利用している様子が分かるだろう。

「Amazon Echo」(動画)

AIスピーカーの最大のメリットは、スマートフォンと違って「手で操作する必要がない」という点だ。AIスピーカーは通常はディスプレイを装備していないが、無線LANなどネットワーク接続機能を備えており、ネットに接続してさまざまなサービスを音声を使って利用できる。

何か調べたいものや利用したいネットサービスがあったら、AIスピーカーに向かって言葉で語りかければその処理が実行される。必要な情報は音声で読み上げてくれるので画面を見る必要もない。とくに家庭内で家事などをしながら利用するといった場合などには便利で、用途によっては「スマートフォンよりも便利」との評判さえある。

日本でも「Amazon Echo」が2017年内にはいよいよ発売されると噂されているほか、Googleやアップル、LINEなど、大手ITメーカーが続々と参入を表明しており、今後は激しい競争が行われると予想されており、今最もホットなデバイスの一つといえる。

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Amazon、Google、アップル、LINE……大手が続々参入

現在AIスピーカーは「ポストスマートフォン」とも言われており、さまざまな企業が製品を投入、あるいは参入を予定している。そこで各企業の製品情報を以下にまとめてみた。

Amazon.com

AIスピーカーのジャンルを開拓したのが米Amazon.comで、初代製品である「Amazon Echo」は2014年11月に発売された。日本ではまだなじみが薄いが、2016年の米国クリスマス商戦では品切れとなるほどの大人気商品となっている。「Amazon Echo」では、音声での操作による音楽の再生や、Amazonでのショッピング、ニュースやメールの読み上げなどを行うことができる。

現在は通常タイプの「Amazon Echo」のほか、タップ操作で電源のON/OFFを切り替えられる「Amazon Tap」(Amazon Echoは常時電源オンで利用する)が発売されている。Amazon Tapはバッテリーも内蔵しており、持ち運んで使うことができるのも特徴だ。このほか外部スピーカーを接続して利用できる、ミニサイズの「Echo Dot」も用意されている。

またタッチ画面付きAIスピーカーの「Amazon Echo Show」も米国では既に発売されている。

AIスピーカー「Amazon Echo」

先駆けて発売されたAIスピーカー「Amazon Echo」。日本語版は未発売だが、米国Amazonのサイトでは既に人気商品となっている。

タッチパネル液晶付きのAIスピーカー「Amazon Echo Show」

タッチパネル液晶付きのAIスピーカー「Amazon Echo Show」も米国では発売されている。

Google

Amazonに続いたのがGoogleで、「Google Home」というAIスピーカーを2016年10月に米国で発売している。同社が開発した「Google Assistant」というパーソナルアシスタントを搭載しており、音声でさまざまなサービスを利用できる。2017年5月に開催された「Google I/O 2017」の基調講演で、日本語対応版は年内に発売する予定と発表されている。

AIスピーカー「Google Home」

Googleから日本語対応版も発売される予定の発売される予定のAIスピーカー「Google Home」

アップル

アップルは米国で2017年12月にAIスピーカー「HomePod」を発売する。日本語版は2018年以降の予定となっている。同社のAIアシスタント「Siri」を利用できるので、iPhoneやiPadで同機能を既に利用している人にとってはなじみやすい製品となるだろう。また重低音を強調するウーファーを搭載するなど、高音質な製品となっているのも特徴だ。

AIスピーカー「HomePod」

アップルが発売予定のAIスピーカー「HomePod」。iPhoneやiPadでおなじみのパーソナルアシスタント「Siri」が利用できる。

LINE

日本でAIスピーカーの先陣を切るのはSNSサービスでおなじみのLINEで、2017年初夏にAIスピーカー「WAVE」の先行版を発売。2017年秋に正式版を15,000円で発売する。LINE独自のAIプラットフォーム「Clova」を搭載し、声で家電を操作したり、SNS「LINE」の返信なども行える。

このほかマイクロソフトやシャープなどもAIスピーカーを開発、発売予定となっており、2017年末から2018年にかけて各社の製品が本格的に出そろい、激しい競争が繰り広げられると予想されている。

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ビジネスでAIスピーカーは使えるのか?

さて、このように注目を浴びるAIスピーカーだが、ビジネス分野でどのように利用できるかが気になるところだ。
AIスピーカーの特徴は、「音声で操作する」「ハンズフリーで操作できる」という点にある。この特徴から考えていくとまず真っ先に思いつくのが、手がふさがっている環境での利用だ。メールのチェックなどはパソコンでも可能だが、パソコンでは通常は画面を見て、手で操作することになるので、手を離せない環境だと少々手間になる。またいちいちパソコンを起動するまでもないちょっとした用事にもいいだろう。「スケジュールを確認したい」「天気を調べたい」「最新のニュースをチェックしたい」といったとき、AIスピーカーは常時待ち受け状態で使うのが基本なので、いちいちパソコンやスマートフォンを取り出さなくても情報を引き出せる。

現状のAIスピーカーの機能ではまだ対応が難しい部分もあるが、今後の進化が進めば、いずれは会社の受付に置いて音声で来客対応や案内を行うなどといったこともできるようになるかもしれない。
半面、通常のオフィスではいくぶん使いづらい部分もある。音声で操作するため、複数の人間の声が混在する環境だと、周囲の雑音などがあるため入力エラーは起きやすい。また通常のオフィスデスクにはパソコンが設置されており、パソコンでさまざまな処理ができるので、特にAIスピーカーは必要としないケースが多いだろう。

AIスピーカーにとどまらず、「音声による操作」については今後ビジネス分野でも利用が拡大していくことが予想される。例えば「プレゼンを行っている最中、マウス操作に手間取ってスピーチが中断してしまい、プレゼンの持ち時間をオーバーしてしまった」などといった経験をしたことがある人も多いだろう。
音声による操作であれば、聞き手から目をそらさずに、手を使わないで操作ができるため、そういったことも少なくなるはずだ。Windows 10でもパーソナルアシスタント「Cortana」が装備されており、検索やさまざまなネットの利用が音声で行えるようになっている。

Windows 10で音声検索が行える「Cortana」画面

Windows 10にも音声で検索などが行えるアシスタント「Cortana」が標準装備されている。

関連記事:ビジネス文書を効率的に管理するWindows 10検索術

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パソコンがいらなくなる? AIスピーカーと音声認識の今後に注目

AIスピーカーが注目を集める背景としては、一般ユースでのPCレス化の流れがある。かつてはネットの利用はパソコンを使うのが当たり前だったが、スマートフォンやタブレットの普及で、普段はパソコンを使わないという人がどんどん増えてきている。

パソコンを使わない人にとっては、キーボードやマウスによる操作は面倒だし、各種OSやアプリケーションの操作を覚えるのも煩雑だ。そのようなユーザーがネットやクラウドのサービスを利用する間口を広げるという意味で、「音声による操作」が注目を集めている。

最近ではパソコンでもWindows 10の「Cortana」、スマートフォンやタブレットでも「Siri」「Google Assistant」といった、音声で操作が行えるインターフェイスの提供がどんどん進んでいる。現在の音声認識では、まだ誤認識が発生することもあるようだが、製品の普及・発展によって精度は上がっていくだろう。

AIスピーカーの技術は、今後スピーカーだけでなくさまざまな機器に応用されていくと予想される。さまざまなモノにCPUを内蔵し、ネットと接続して活用する「IoT」が話題になっているが、AIスピーカーで蓄積された音声認識技術を各種家電などに搭載する流れはどんどん拡大していくだろう。例えば自動車での採用や、空調機器やテレビといった家電なども音声で操作できるものが増えていくはずだ。

日本語版の発売とともに、日本でも製品の人気が高まることは必至なAIスピーカー。今後の製品動向、そして音声技術の各種機器への応用に要注目だ。

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