2023年11月28日公開

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年次有給休暇管理簿を整備して「年5日」の確実な取得を!

著者:有馬 美帆(ありま みほ)

年次有給休暇管理簿の活用で、年5日の有給休暇を確実に取得するポイントをお伝えします。

労働基準法の改正で、2019年4月から使用者は年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の有給休暇を取得させる義務を負うと同時に、年次有給休暇管理簿の作成も義務付けられました。二つの義務に対応できているか、この機会に再確認しましょう。

年5日の年次有給休暇の確実な取得をお忘れなく!

厚生労働省の「令和3年労働基準監督年報」によると、労働基準監督署の定期監督により年次有給休暇(有給休暇)に関する違反が見つかった件数は前年の2.8倍にも上っています。違反の詳細は明らかではありませんが、タイミングからして年5日取得の義務づけ(労働基準法第39条第7項)違反が件数に大きく影響したものと思われます。違反は1人あたり30万円以下の罰金となる可能性もありますので、確実な取得への対応が必要です。

「年次有給休暇管理簿」とは?

企業などの使用者が有給休暇を与えたときは、時季(取得する日時)、日数および基準日を労働者ごとに明らかにした書面を作成しなければなりません(労働基準法施行規則第24条の7)。この書面を年次有給休暇管理簿(以下「管理簿」とします)といい、5年間(当分の間は3年間)の保存義務があります。管理簿のスタイルは自由ですが、次の記載事項が必須です。

労働者名「労働者ごと」に管理簿を作成する必要あり
基準日有給休暇を付与する基準日(二つある場合は二つとも記載)
時季取得年月日を明記
日数取得日数を明記(時間単位の場合は時間数)

「年5日」に気を取られ、トータルの日数だけを管理している場合が散見されますが、有給休暇を取得した時季ごとに取得日数や取得時間の記載が必要ですので、ご注意ください。

法令上の要件以外に、実際上必要となる記載事項としては、次に掲げるものがあります。

入社年月日労働基準法上の付与日数を満たしているかを確認するために必要
前年度繰越日数有給休暇に関する管理を行うために必須
今年度付与日数同上
有効期間基準日からの有効期間を記載
年5日の取得確認労働者に年5日の有給休暇を取得させているかの確認欄

管理簿は労働者名簿や賃金台帳と合わせる形で作成することもできますし、法定の要件に関する内容をいつでもプリントアウト可能ならば人事労務管理のシステムを利用してもかまいません。各企業などで使いやすいように工夫しましょう。

あくまでも一例ですが、実際の管理簿のイメージは次のようになります。

年次有給休暇管理簿(作成例)

年5日の確実な取得への具体的対応

労働者からの時季指定(有給休暇取得日の指定)または計画的付与で与えた有給休暇の日数は、5日から控除されます。