メタバース×製造業 ビジネス活用セミナー

先駆者に聞きたい「仮想空間とモノづくり」の一歩先:製造編

現在、多くの企業が注目する「メタバース」。最先端のメタバース動向に詳しい『 MoguraVR 』編集長の久保田瞬氏と、メタバース活用に積極的に取り組むShiftall(パナソニックが2018年に買収)の岩佐琢磨氏による、製造分野におけるメタバース&ビジネス活用セミナー(2023年4 月開催)の動画をお届けします。

岩佐氏はメタバースにおける製造業の未来をどう見るか?

セミナー第3弾に登場する岩佐琢磨氏は、スタートアップ企業の機動性を活かしたユニークなモノづくりの領域で、世界的に有名な起業家だ。

岩佐氏と聞いてすぐに思い出すのが、年初に米ラスベガスで毎年開催されるデジタル技術の専門イベント「CES」での存在感。2010年代前半、CES主催者がスタートアップ企業に注目し出した流れにうまく乗った形で、最初に立ち上げたCerevo時代から注目を集めた。開幕直前に行われるプレビューイベントでは小さなブースに人だかりができ、会場内で配られる日刊紙ではトップ記事を飾るほど。当時から、スノーボードのスマートバインディングやIoT(モノのインターネット)対応のロードバイクなど、こだわりの製品を世に送り出してきた。

そんな岩佐氏が今注力するのがメタバースだ。同氏が立ち上げたShiftall(パナソニックが2018年に買収)は、身に付けた人の動きを検出し、3Dモデル(アバター)の動作に反映する「ボディートラッキング」を実現するデバイス「HaritoraX」を開発。CES2023でも、高精細かつ軽量の眼鏡型ディスプレイ「Megane X」、ビジネス用途向けの「MeganeX Business Edition」などを発表し注目を集めた。岩佐氏の過去のインタビューや対談を見ると、デバイスの価格低下によって新しい技術が浸透すると語っており、Shiftallが手掛ける多くの製品が低価格化を意識していることが分かる。

早い段階からメタバースに注目してきた岩佐氏の視点で、この新興技術が世界でどのように受け入れられているのか、どこの誰がどのようなビジネスを仕掛けているのか、キープレイヤーや市場の動向を広く聞いた。

登壇者のご紹介

久保田 瞬 氏 (株式会社Mogura 代表取締役、「Mogura VR」編集長、XRジャーナリスト)

慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省入省。2015年VRやAR、メタバースの専門メディア「Mogura VR」を立ち上げ、株式会社Moguraを創業。この分野が社会を変えていく無限の可能性に魅了され、それを広げる事業を展開している。XR/メタバースの動向分析、コンサルティングが専門。
現在は子育てをしながら事業推進に、講演にと奮闘中。一般社団法人XRコンソーシアム事務局長、一般社団法人VRMコンソーシアム理事。著書「メタバース未来戦略 現実と仮想世界が融け合うビジネスの羅針盤」、日経BP(2022)。

岩佐 琢磨 氏 (株式会社Shiftall 代表取締役CEO)

パナソニックにてキャリアを始め、2008年に株式会社Cerevoを起業し30種を超えるIoT製品を70以上の国と地域に販売。2018年4月新たに株式会社Shiftallを起業し、複数のIoT機器を開発・販売。2021年からはVRメタバースに軸足を移し、家庭用モーショントラッキング機器‘HaritoraX’シリーズ、防音Bluetoothマイク'mutalk'やVRヘッドセット'MeganeX'など多数のメタバース関連機器を手掛ける。CES 2023では現実空間でモノが掴めるVRコントローラー'FlipVR'を発表。

オンラインセミナー動画

  • * 動画内容はオンラインセミナー開催日当時のものです。あらかじめご了承ください。

動画の公開日:2023年 6月 7日(水)(注1)
動画の配信期間:2024年 6月 7日(金)まで(注2)

  • (注1)動画の内容は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
  • (注2)掲載中の動画は予告なしに内容の変更や削除を行う場合があります。あらかじめご了承ください。

編集後記:「メタバース空間はアニメっぽく見える」この指摘に対する岩佐氏の回答は?

「体験したことはありますか」「やってみて楽しいですか」。これは、今回のセミナーシリーズの進行役をお願いしている専門メディア『Mogura VR』編集長の久保田瞬氏が、メタバースに興味を持つ人に対して繰り返し話していることだ。

今回のセミナーでは、メタバースを体験したことが無い人でもメタバース空間の一端を知ることができる。ゲストとして登場したShiftall代表の岩佐琢磨氏が、メタバース上でのアバターを実演してくれたからだ。

岩佐氏は、Shiftallが開発を手掛けるモーショントラッキング装置「HaritoraX」を使って、体の動きがメタバース空間上のアバターに反映させられることを見せてくれた。普段から日常的に使っているというだけあって、アバターの動きもごく自然に見える。セミナー映像では、リアル空間での岩佐氏の動きとメタバース空間のアバターの動きが比較できるように編集しているので、モーショントラッキングの実力も感じられるだろう。

今回のセミナーでは、モーショントラッキング装置を使ってアバターを動かす様子を見ることができる。

岩佐氏も久保田氏と同様、「メタバースでは話し相手が『あたかもそこにいる』感覚が得られる。これは、やってみないと分からない」と、メタバースを実際に体験してみることを薦める。

対談中で面白いと思ったのは、メタバース空間が「アニメっぽい」と評されることに対する岩佐氏のコメントだ。岩佐氏によれば、リアル空間にいながらパソコンの画面でメタバース空間を見ると「アニメっぽく」感じるのだが、ヘッドマウントディスプレイ(HDM)を装着してメタバース空間に入り周囲がすべてCG(コンピューターグラフィックス)だと違和感がないのだという。

岩佐氏は、「HaritoraX」以外にも手掛けるデバイスをいくつか紹介してくれたが、いずれもユーザー視点で作ったことを感じられて楽しい。例えば無線防音マイクは、夜中にメタバース空間で誰かと話したりカラオケしたりしても家族に聞こえないようにできるマスク型のデバイスだ。水をかぶったら冷たく、暖炉に近づいたら暖かくなど、メタバース空間で温度を感じられるようにする「PebbleFeel」も、「あったらいいな」と思えるものを作ったもので素晴らしい。

対談で久保田氏と岩佐氏は、製造業におけるメタバース活用例を紹介した。「商品を体験してもらう」というところで商品PRや社員の採用に有効であること、メタバースを少し広義に捉えながら、要素技術であるVR(仮想現実感)がトレーニングやベテラン社員の技術伝承にも使われることが紹介された。トレーニングに関連して、レーシングゲーム「グランツーリスモ」で長時間“運転”したレーサーが、実車レースで優勝したというエピソードも興味深い。

メタバースでの経験や知識が豊富な2人の対談は内容が盛りだくさんで、45分ほどの対談はあっという間に感じられた。ぜひ多くの方に対談を見ていただきたい。

一歩先への道しるべ 編集長 菊池隆裕(日経BP総合研究所)