メタバース実践編 ビジネス活用セミナー

BEAMSの「中の人」はメタバースをどう語る

メタバースを実践する企業として必ず名前が挙がる、ファッションや雑貨などを扱うセレクトショップBEAMSを展開するビームス。ビジネス活用セミナー第4弾では、同社のメタバース関連事業を推進する2人をお招きし、「実践編」としてメタバースを活用するうえでの勘所を聞く。

企業のVR担当者同士のVR内交流も推進

ビームスと言えば、メタバース領域では積極的に活用を進める企業として知られている。VR(仮想現実感)イベント「バーチャルマーケット」にこれまで5回出店、同イベントを主催するVR開発企業HIKKYと業務提携しているほか、最近では他社のメタバース活用にも関わっている。

2022年に期間限定でオープンした「メタバースサウナ」というニュースにも驚いたが、そのイベントが世界中から340万人を集めたこと、そしてこの運営にビームスが関わっていることにも驚いた。これは、千葉県流山市にあるスパ施設「スパメッツァおおたか」をメタバース上に再現したというもので、ビームスのディレクターがプロデューサーとして参画した。社内でのノウハウを社外にも応用したということなのだろう。

今回のセミナーは「メタバースビジネス活用セミナーの実践編」と位置付けている。第1回からモデレーターを務めていただいている『Mogura VR』編集長の久保田瞬氏が2人から引き出す実践的なノウハウがどのようなものか注目したい。

登壇者のご紹介

久保田 瞬 氏 (株式会社Mogura 代表取締役、「Mogura VR」編集長、XRジャーナリスト)

慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省入省。2015年VRやAR、メタバースの専門メディア「Mogura VR」を立ち上げ、株式会社Moguraを創業。この分野が社会を変えていく無限の可能性に魅了され、それを広げる事業を展開している。XR/メタバースの動向分析、コンサルティングが専門。
現在は子育てをしながら事業推進に、講演にと奮闘中。一般社団法人XRコンソーシアム事務局長、一般社団法人VRMコンソーシアム理事。著書「メタバース未来戦略 現実と仮想世界が融け合うビジネスの羅針盤」、日経BP(2022)。

木下 香奈 氏
(株式会社ビームス 社長室 コーポレートコミュニケーション部 広報課
兼 株式会社ビームスクリエイティブ VR担当)

MTV Japanマーケティング部を経て2007年にBEAMS入社。社長室広報、海外マーケティングを経験し2020年より再び社長室広報。
2020年、BEAMSがバーチャルマーケット初出店時にPRを担当し、2021年からは広報の傍らVR事業の企画を兼任。同時に自宅にVR環境を完備し、以来ソーシャルVRに夢中。プライベートではバーチャルファッションイベントの運営スタッフも務める。

木村 淳 氏
(株式会社ビームスクリエイティブ ビジネスプロデュース部)

1978年生まれ、東京都出身。2019年、BEAMSに中途入社。開発事業本部カルチャー事業課へ配属。カルチャー領域におけるBtoB窓口を担当。2020年、開発領域案件としてバーチャルマーケット担当に任命され、BEAMS初のVR担当となる。
2021年より現部署に配属。xR事業、eスポーツ事業、ポップカルチャー事業、アート事業など主にBEAMSにおける新領域案件のBtoBビジネスを担当している。

オンラインセミナー動画

  • * 動画内容はオンラインセミナー開催日当時のものです。あらかじめご了承ください。

動画の公開日:2023年10月5日(木)(注1)
動画の配信期間:2024年10月5日(土)まで(注2)

  • (注1)動画の内容は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
  • (注2)掲載中の動画は予告なしに内容の変更や削除を行う場合があります。あらかじめご了承ください。

編集後記:BEAMSはメタバースをなぜ推進するのか 背景にある「ノリ」と「こだわり」のカルチャー

『一歩先への道しるべ』では、連続企画として「メタバース」をテーマにしたセミナーを企画しているが、今回の第4回セミナーでは実践編としてメタバース先駆者の声を拾ってみた。

今回のセミナーシリーズの進行役をお願いしている専門メディア『Mogura VR』編集長の久保田瞬氏によれば、メタバースがバズワード化したのが2021年秋。今回のゲスト2人(木村淳氏と木下香奈氏)が所属するビームスがメタバースに参入したのは、それよりも早い2020年。「デジタル上のタッチポイントとなる」「アバターを選ぶことも自己表現の1つでアパレルと通じるものがある」という理由で参入した同社は、約3年の間に数多くのメタバースイベントに参加し、メタバース空間上に店舗を構え、アバター向けのアパレル用品を販売するなどして知見を蓄えている。

左から、『Mogura VR』編集長の久保田瞬氏、ビームスの木下香奈氏、ビームス クリエイティブの木村淳氏。

そんな先駆者であっても参入当初は初心者だ。「何をすれば分からないところからスタート」(木村氏)「全くの初めて」(木下氏)というところから始まったのだという。それでも3年が経過し、木村氏は「ワクワク感しかない」と言い、木下氏は自宅にメタバース環境をそろえて1ユーザーとしてメタバース空間で過ごし、「仕事でもできていることが幸せ」と言えるまでになった。

今回のセミナーで興味深かったのが、ビームスの企業カルチャーだ。木村氏によれば、それは「ノリ」と「こだわり」。ノリについては「おもしろければやってみよう」という機動力であり、こだわりについては「深掘り作業を追求する」というマニア向けの企画力ということになる。いずれも、メタバースに限らず新規事業には欠かせない企業カルチャーだと感じる。

メタバースへの参入でビームスが得たものは何か。多くの人は収益を期待するのかもしれないが、残念ながら現時点ではリアル店舗に匹敵するほどの売り上げにつながっているとは言えない。それでもこの取り組みを続けられるのは、メタバース空間上で「顧客との関係構築」ができるからだという。リアル店舗以外の環境で、ユーザーの生の声を聞けるのはビームスにとっても貴重な場と捉えている。

関係構築のための場づくりは工夫の連続。「タレントを呼んだイベントを開催する」「メタバース上でのバーチャル店舗でも、実際のショップスタッフが接客する」「バーチャル接客している様子をSNS配信したり、リアル店舗の来客が見られるようにする」など、多くの人が「来店」し楽しんでもらえるよう数多くの演出をし、それぞれの試みから学んでいる。詳細は、ぜひセミナー映像を見ていただきたい。

メタバースがサブカルチャーから脱して主流となったとき、ビームスはどんな立ち位置にいるのか。今後も同社の活動には注視したいと思う。

一歩先への道しるべ 編集長 菊池隆裕(日経BP総合研究所)