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対岸の火事では済まされない
社会保険庁の年金記録問題

社会保険庁がこれまで手作業に頼っていた記録をオンライン化するにあたって不備やミスが相次ぎ、5000万件以上も納付者を確定できないという「年金記録問題」。発覚からまもなく1年、どのような対策を行っているのだろうか。

時代の変化に追いつけず
制度の不備が招いた大問題

年金制度は、老齢や障害などによって所得が喪失しても生活に必要な一定金額を給付するための制度であり、原則として20歳以上から60歳未満のすべての国民には年金制度への加入が義務付けられている。現在の年金制度は1961年に施行された国民年金法から始まり、1985年の年金制度改正によって基礎年金制度が導入されたことで確立した。

日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金(共済年金も含む)に大別される。国民年金は国民全員の加入が義務付けられているもので、この部分が基礎年金として給付される。厚生年金は民間企業の従業員(公務員の場合は共済年金)が強制的に加入しているもので、国民年金の基礎年金を包含し、それに加えて収入に応じて納めてきた保険料に比例した年金が上乗せされて支給される。

日本の年金制度はもともと職種別に作られてきたため、異なる年金制度をつなぐ仕組みはなく、年金の裁定請求は受給者からの申請に基づいていた。これにより、転職によって年金制度が変わっても、届出が行われないと年金記録が途切れてしまうおそれがあった。この制度の不備を解決するために作られたのが、年金制度改正による全国民共通の基礎年金制度だった。

1997年には、支払った年金保険料の納付記録(年金記録)を一括して管理する基礎年金番号が導入され、国民年金番号と厚生年金番号の統合が始まった。その際、社会保険庁は、基礎年金番号通知書とともに、現在加入中の年金制度以外の公的年金番号を持っているかどうかを回答するハガキを年金加入者に送付。複数の公的年金に加入していると回答した年金加入者を氏名、性別、生年月日の3項目で名寄せを行い、年金記録を基礎年金番号へ統合する作業を進めてきた。しかし、統合を進めたのは回答が寄せられた分のみであり、その他に関しては基礎年金番号に統一するために積極的な努力が行われなかった。

この結果、旧来の年金番号のまま、未統合の年金記録が残ってしまった。これが「宙に浮いた年金記録」と呼ばれる問題となる。

誰の年金か分からない
浮いて消えた膨大な記録

年金記録問題が発覚したのは、2007年2月。社会保険庁が公表した2007年度の事業計画案の中で、基礎年金番号と被保険者記録の適正な管理への取り組みがまとめられた際に、統合・整理されていない過去の年金記録が5000万件以上(厚生年金番号約4000万件、国民年金番号約1000万件)もあることが判明した。

さらに、納めたはずの国民年金保険料の納付記録が社会保険庁の年金記録または市町村の台帳に存在せず、保険料の納付証明が行えないこと、給料から天引きされていたはずの厚生年金保険料の納付記録が社会保険庁にないことなど、「消えた年金記録」となって給付が受けられない問題も次々に判明した。

その上、社会保険庁職員が不正なオンライン操作を行って自身の年金を不正受給したり、他人の保険料を受け取っても記録に残さずに着服したりする不祥事が何件も発覚するという体質的な問題も明らかになった。こうした社会保険庁のずさんな管理、職員モラルの低下によって、ついに大規模な改革が断行される。

2008年に健康保険関連の業務が「全国健康保険協会」という組織に分離、2010年に公的年金の業務が「日本年金機構」に移管される予定で、最終的に社会保険庁という組織は廃止されることになった。

急ピッチで取り組みが進む
年金記録問題の対策

廃止されるとはいえ、社会保険庁には年金記録問題の解決という大きな課題が残されている。2007年5月、同庁は厚生労働省の指導の下に「年金記録への新対応策パッケージ」を発表した。

まず、基礎年金番号に統合されていない年金受給年齢到達記録の約2880万件を、年金受給権者記録の約3000万件と突き合わせる。その際、同一人物の可能性のある受給権者に対しては通知を行って照会の申し出を勧奨することと、被保険者に送付する「ねんきん定期便」による確認を呼びかける。さらに、58歳通知の時点で未統合記録への注意を呼びかけること、未統合記録を把握するために社会保険庁のマイクロフィルム記録および市町村の記録をオンライン記録と突合する作業を計画的に行うことなどの施策が実施されることになった。

2007年11月には年金記録に対する信頼の回復と新たな年金記録管理体制の確立についての進捗状況が公表された。日々の年金相談によって記録の統合が進み、統合されていない年金記録は約5095万件(2006年6月末)から約4870万件(2007年7月末)へ、約220万件分が整理された。並行して「名寄せ」「ねんきん特別便」に関してはシステム開発が急ピッチで進められ、2007年11月末に完成、氏名などが収録されていない記録の補正作業は2007年内に完了する見込みだという。

年金に関連する流れ
1961年 国民年金法の施行
1985年 年金制度改正、基礎年金制度の導入
1997年 基礎年金番号の導入、国民年金番号と厚生年金番号の統合
2007年2月 年金記録問題の発覚、不整合の年金記録は5000万件以上
2007年5月 社会保険庁は「年金記録への新対応策パッケージ」を発表
2007年11月 新たな年金記録管理体制について進捗公表、約220万件を整理
2007年11月末 「名寄せ」「ねんきん特別便」に関してのシステム完成予定
2007年内 氏名などが収録されていない記録の補正作業が完了予定
2008年 健康保険関連の業務が「全国健康保険協会」へ分離予定
2010年 公的年金の業務が「日本年金機構」へ移管予定


まだ年金の受給は先のことだと思っている方も多いだろう。だが、基礎年金番号に統合される1997年以前で年金加入して、かつ転職や転居を経験したことがあれば、現在の年金記録問題の意識が強いうちに、一度、年金相談窓口に足を運んだほうが良いだろう。

(掲載:2007年12月)

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