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決算ごとにプロジェクトを評価する
「工事進行基準」の適用で何が変わるか

工事の進捗度に応じて関連する収益と原価を計上し、各会計期間に分配することを定めた「工事進行基準」が2009年度から強制適用となる。これは建設・土木業だけでなく、請負業務であるソフトウェア開発などもカバーされ影響は大きい。

長期間で行われる工事の損益を
決算に反映させる「工事進行基準」

高層ビルの建設やダム工事などは、プロジェクト開始から竣工まで年単位の期間がかかることが普通だ。大規模で長期間のため、工事途中に思わぬ事態が発生して余分なコストがかかり、竣工が遅れる場合もある。従って、工事が完了するまでは、売上や原価を確定することは難しい。しかし、企業は毎年決算書を作成しなければならない。決算書は決算年度内にすべての取引を集計しなければならないが、前述のように決算期をまたぐ取引も当然発生する。そこで、決算期をまたがる取引について、いずれの会計期間に含めるかルールを決めておかなければ正確な決算書は作成できないことになる。

多くの企業では、実現主義に基づいた決算が普通だ。これは、商品が販売された時点、サービスの提供が完了した時点で売上を計上するというルールだ。注文を受けた時点や契約書を結んだ段階では、売上を計上しない。通常の商取引は開始から完了まで長くても数カ月程度であり、実現主義をそのまま適用してもそれほど問題は生じない。一方、取引金額も大きく完成まで数年にも及ぶことが多い建設・土木業では、実現主義の工事完成基準だけでなく、発生主義の工事進行基準のいずれかを選択することが認められていた。

工事完成基準では、工事中に発生した費用はその会計期間中の費用にするのではなく、完成まで資産項目(建設業の場合には、一般に「未成工事支出金」という勘定科目)として処理され、売上時に一括して費用に振り替えられる。日本の建設・土木業の多くはこの工事完成基準に従っていた。しかし、この工事完成基準では、工事中の活動は損益計算書に全く反映されない。工事が完成した時点でやっと収益やコストが一気に発生することになり、経営の実態を反映していないことになる。

これに対し、会計年度をまたがる工事について、工事の進捗に合わせて収益を計上できる工事進行基準も認められている。決算期末に工事の進捗度を見積り、工事収益とそれに対応する費用を損益計算書に計上する。つまり、工事完成基準では完成時に利益総額が一度に確定し、工事進行基準では工事の進行に合わせて収益と費用を計上するため、全期間にわたって利益とコストが段階的に確定する。こうすることで経営の実態を毎期の決算において反映することができ、迅速・的確な意思決定に役立たせるというメリットも生まれる。

グローバル化による会計基準の国際統一
影響の範囲はソフトウェア業にも届く

これまで建設・土木工事において工事完成基準も工事進行基準も選択できたのは、契約書によって工事途中でも工事の総額が明らかで取引の確実性が認められるためであった。しかしそれが2009年4月1日以降から、工事完成基準では処理することができなくなる。

この背景には、会計ビッグバン以来の国際会計基準への統一という流れがある。従来、実現主義を原則とする日本では工事完成基準が標準だったが、国際会計基準では発生主義の工事進行基準が標準だ。グローバル化が進んだ現在、異なる会計基準を採用する企業が混在すると財務諸表間の比較に支障を来すため、国際会計基準に統一される。

具体的には、造船や機械装置の製造、そして受注制作のソフトウェアも含まれる。請負契約主体の建設・土木業に加えて、ソフトウェア業も全体の売上高の87%弱を受注ソフトウェア開発が占めており(経済産業省「平成19年特定サービス産業実態調査」速報)、工事進行基準が適用される影響はかなり大きい。まず、収益が先取りされるので企業の税負担が前倒しになるだけでなく、外注先への支払いも前倒しになり、会社のキャッシュフローを圧迫する。中でも工事進行基準に馴染みのないソフトウェア業は、これから収益計上のプロセスを再構築しなければならならず、作業負荷が大きくなることが予想される。

部門単位ではなく全社対応が求められる
これを機にプロジェクト管理体制の一新も

今までにも会計基準の変更は多くあったが、経理・財務部門だけで対応ができた。しかし今回の工事進行基準への対応は、発注元および外注先との決済条件の見直しなど、関連部門を含めて全社的に対応する必要があるのが大きな違いとなる。工事進行基準導入にあたっての主なポイントは、次のような点だ。

  • 工事原価のスピード集計
    新基準の適用に際しては、個別原価計算制度における実績集計のスピードが問題となる。決算を適時に完了させるためには、ただ原価を集計するだけではなく、集計に至るまでのスピードを上げなければならない。
  • 見積精度の向上
    各工事契約の見積原価が会社の財務諸表に直接影響を与えるため、見積の及ぼす影響が大きくなる。ただし、見積精度の向上には限界があるので、見積頻度を増やして精度を上げることも必要となる。
  • 契約の見直し
    工事収益総額の信頼度を上げるために、決済条件や決済方法も含めた、いわゆる「対価の定め」を明らかにしなければならない。契約の見直しは発注元だけではなく、作業の委託先との外注契約も含めて検討する必要がある。

大きな変化が訪れることになるが、工事進行基準に沿って、プロジェクトの損益を最後になってようやく明らかにするのではなく、進捗に従って開発の人員や工数をマネジメントする体制に切り替えるチャンスでもある。

(掲載:2008年12月)

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