ビジネスお役立ち情報 > ビジネストレンド特集

ビジネストレンド特集ビジネストレンド特集 CADを利用して設計を行う際に必要なノウハウを紹介。

ビジネストレンド特集 のトップへ

3次元化で生産性や提案力を上げよう!建設業における3次元データ活用の先進ユーザ事例を紹介

景気低迷が続く現在、建設業界では、生産性向上や提案力を強化するための有効な手段として、3次元データを意欲的に活用する企業が増えつつある。実際、3次元データの活用はこれまでの啓蒙段階から実運用の段階に入り、企業規模を問わず、積極的な導入検討が行われている。そうしたなか、大塚商会では、建設業における3次元データの活用を支援するため、2009年5月に『建設業実践講座 Construction Solution Seminar 2009』を開催した。今回はそのなかから先進企業4社によるパネルディスカッションに焦点を当て、その内容を紹介したい。今後、建設業各社が3次元データを有効活用する際の大きなヒントになるはずだ。

建設業実践講座を通じて業界の生産性向上を支援

昨今の建設業界を取り巻く環境は、100年に一度といわれる世界的な不況の影響を受け、マンションや工場建設計画が中止・激減するなど、決して楽観視できない状況にある。そうした厳しい業況を乗り切るために、建設業各社においては設計・施工業務における生産性向上の実現が急務となっている。とりわけ、BIM(Building Information Modeling)やGIS(Geographic Information System)といった3次元データの活用が重要なキーワードになっている。

そうしたなか、大塚商会では、建設業の生産性向上を支援するため、建設業実践講座を7年ほど前から毎年開催している。昨年の建設業実践講座には430名が参加。2009年5月19日に大塚商会 本社ビルで開催した第10回目の『建設業実践講座 Construction Solution Seminar 2009』では、「建設業の生産性を向上させるヒントがここにある!」をキャッチフレーズに、3次元データ活用の運用事例を中心としたセミナーと展示を用意し、多くの来場者から好評を博した。

特に今回行われたパネルディスカッションは、大塚商会の建設業実践講座で初めてCPDS認定講座(2ユニット)に指定され、業界内で大きな注目を集めた。CPDSとは、Continuing Professional Development Systemの略称で、社団法人 全国土木施工管理技士会連合会の継続学習制度のことである。CPDS加入者が認定の講習会などに参加して技術力向上のための学習を行った場合、その学習履歴の証明書を発行する仕組みになっている。そのため、大塚商会には多くの企業からCPDS認定講座を開設してほしいという要望が集まっており、この度それが実現されたのだ。

『建設業実践講座 Construction Solution Seminar 2009』の展示会とセミナーの様子

『建設業実践講座 Construction Solution Seminar 2009』の展示会とセミナーの様子。どの来場者も情報収集に余念がなかった。

↑ページの先頭へ戻る

パネルディスカッションでは、3次元データの先進事例を紹介

今回のパネルディスカッションでは、「今、なぜ3次元データ活用に取り組むのか?」をテーマに、八千代エンジニヤリング株式会社 技術推進本部 情報技術部 部長の藤澤 泰雄氏、ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社 ICT事業本部 部長の小林 三昭氏、株式会社奥村組 管理本部 情報システム部長の五十嵐 善一氏、大和小田急建設株式会社 技術統括部 課長の小原 丈二氏の4名が登壇。4社は大塚商会とオートデスク社が旗振り役の『AutoCAD Civil 3D』ユーザ会の一員である。

国土交通省のCALS/ECアクションプログラム2008では、3次元データを活用したモデル設計・施工の実施、維持管理情報の可視化など3次元データの活用が大きな柱となっている。そこでその具体的な活用を推し進めている各社の先進的な取り組みを紹介しつつ、今後、3次元データ活用を拡げていくためには何が必要なのか、それぞれの立場から語り合った。藤澤氏がコーディネータと司会進行を務めた。以下、各社の事例概要を紹介する。

●埋立廃棄物を3次元モデル化─株式会社奥村組

最初に五十嵐氏が株式会社奥村組の3次元CADを用いた処分場のリニューアル工事例を発表した。廃棄物処分場は今後の需要が大きく見込まれており、設計・施工から維持管理まで含めた事業として注目されている。その一方、自然環境への配慮や地元住民の理解が必須である。そのため事前に地下地盤予測を行い、沈下・浸水解析、耐震解析などを適時行う必要がある。

今回のケースでは、2次元CAD図面とボーリング調査結果をもとに、埋め立てられた廃棄物の3次元モデル化に着手し、各種解析の精度向上と掘削作業効率化を図った。さらに3次元土木CAD『AutoCAD Civil 3D』と地盤・地質推定ソフト『GEORAMA for Civil3D』で作成した3次元モデルを中心に、FEM解析ソフトや工程管理ソフトなどとデータ連携を行うことで、施工管理の効率的な提案ができることを実証。また、データの一元化で現場担当者との情報共有も円滑になったという。ただし、現実的な運用を行うには、ソフトのさらなる改良や利用者のスキルアップも必要だと指摘した。

埋立廃棄物を3次元モデル化─株式会社奥村組

→ 印刷用図版(PDF 1,287KB)

●施工後の完成イメージを再現─大和小田急建設株式会社

大和小田急建設株式会社の小原氏は、3次元データを活用した鉄道駅舎などの完成イメージのプレゼンテーション事例を紹介。その導入効果として、(1)提案内容を直感的・立体的に把握できるため、発注者やユーザの理解を得やすい、(2)そのため具体的な要望が得られる、(3)協力会社などの関係者間のコミュニケーションが容易になる、(4)多視点からシミュレーションができる、(5)計画の根本的な修正・変更が少ないことなどを挙げた。

鉄道駅舎の事例では、3次元デザインツール『Autodesk VIZ』などを活用し、完成イメージを詳細に表現。PDF上で完成イメージの向きを変えたり、ビデオで列車が駅内部を移動する様子を再現したり、3次元データによるリアルな提案ができることを披露した。また新設工場の事例では、建設CAD『Revit Architecture』の構造データと『Google Earth』の地形データを組み合わせることで、短期間でプレゼン用のビデオを制作することに成功。さらに『AutoCAD Civil 3D』を用いた造成工事の土量算出の事例も紹介。これまで手計算で行っていた数値とほぼ同等の結果が得られることを立証し、作業効率の大幅アップを示した。ただし発注者側に、その根拠を示す必要があるため、現状では手計算も同時に行う必要があるところが課題だという。

施工後の完成イメージを再現─大和小田急建設株式会社

→ 印刷用図版(PDF 1,124KB)

●3次元化による鉄道GISを構築─ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社

小林氏は、3次元デジタル化による鉄道GISの構築事例を紹介。鉄道分野の各プロセスでは図面がデジタル化しているものの、プロセス間の受け渡しでは紙図面にいったん戻すのが現状だという。その最大のネックは、長年使われてきた「線路平面図」という大縮尺の地形図だった。そこで、JR東日本やJR九州などでは、紙図面をなくし、データのシームレスな流れを実現するために、鉄道GISを採用。図面管理と保守・資産台帳データベースの融合化を図り、情報共有を実現するためにビジネスプロセス全体をデジタル化した。

さらに、『Google Earth』を用いた3次元衛星地形図や3次元バーチャルリアリティ技術を活用し、3次元鉄道空間の構築による施設計画や施設管理への適用を図った。それにより、プロセス全体の生産性向上を実現している。また、GPS(Global Positioning System)を活用したトレインロケーションシステムを構築し、列車がどの地点を走行しているのか把握できる仕組みを実現。さらに『Google Earth』の3次元空間上で列車の位置情報を表示する先進事例も紹介した。

またJR東日本では、構造物の品質管理の一環で、コンクリート打設前に配筋検査を実施しているが、これが大変手間がかかるという。そこで現在、八千代エンジニヤリング株式会社と株式会社奥村組の協力を得て、設計段階における3次元での配筋図作成にもチャレンジしている。

3次元化による鉄道GISを構築─ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社

→ 印刷用図版(PDF 1,148KB)

●ダムのライフサイクルを管理─八千代エンジニヤリング株式会社

最後に八千代エンジニヤリング株式会社の藤澤氏は、3次元データを利用したダム情報管理システムの事例を紹介した。ダムのライフサイクルは非常に長いため、多くの情報が蓄積される。その間に、担当者が頻繁に交代するので全体を把握することが極めて難しいという背景がある。そのため、維持管理におけるデータの効率的な管理・表示が重要になってくる。そこで、維持管理に有用なダム情報管理システムを、3次元データを用いて構築することにしたのだ。従来は地形データを3次元化することには困難を要したが、現在は航空レーザ測量や地上レーザ測量、写真測量、人工衛星からの情報によって比較的簡単に取得できる。その地形データをもとにした、オリジナルの3次元地形データの作成も容易にできるようになったという。また近年は集中豪雨による中小河川の氾濫件数が増えていることから、航空レーザ測量データを利用した河川の氾濫安全度の算定にも取り組んでおり、3次元データの適用範囲が広がりつつあると述べた。

ダムのライフサイクルを管理─八千代エンジニヤリング株式会社

→ 印刷用図版(PDF 1,111KB)

↑ページの先頭へ戻る

説明用、解析、施設管理が3次元データの主な利用分野

各社の事例をまとめると、現状における3次元データの主な利用分野は、説明用、解析、施設管理に大別できる。特に3次元データは、視覚的に訴えやすいので説明用に活用されるケースが多く、顧客への提案時のプレゼンテーションでは大きな威力を発揮するという。「3次元でプレゼンテーションを行うと、施主の理解度や印象が格段によくなります。その意味では、営業上の大きな武器になります」と小原氏は強調する。

また、現在の測量機器や計測機器が3次元データを標準としているため、3次元データは数量計算や解析用途でも効果を発揮する。特に道路工事や造成工事で適用されるケースが多いという。「その理由は、発注段階と異なる土砂が出た際に想定した数量を取得できない場合があるため、施工会社が切盛土量計算や運土計画をシミュレーションする必要があるからです」と五十嵐氏は語る。

施設管理についても、企業から3次元データで管理したいという要望が増えているという。その理由は、リアルなデータに基づいて細部まで正確に管理できるからだ。さらに、「3次元化にはこれまでコストがかかるというイメージがあり、大型プロジェクトでないと手が出せない状況がありました。しかし近年は、3次元データに対応した計測機器などがだいぶ安くなったので、小規模のプロジェクトでも利用しやすくなってきましたね」と小林氏は指摘する。

その一方、3次元データは上記以外の分野では利用が進んでいないという実情もある。パネルディスカッションでは、その点に関しても率直な意見交換が行われた。「施工現場では未だに2次元データが中心です。3次元CADに習熟した技術者がいないことや、検査・検収方法も従来通り2次元データで行われるため、せっかく3次元化しても2次元図面に戻さないといけないというネックがあるためです」と五十嵐氏は現状の課題を語る。また、発注者も2次元図面の提出を要求してくるケースが多いので、「3次元データから2次元図面をスムーズに作成できる機能がないと、今の施工現場の実情に対応するのは難しい」と小原氏は指摘する。

↑ページの先頭へ戻る

3次元データを活用するための今後の共通の課題と展望

最後に、今後3次元データをもっと活用していくためには何が必要かを論じ合った。そのなかで小原氏は、「企画・設計・施工・維持管理の各プロセスで便利に使える機能が増えていけば、3次元データの利用が一般化されていくと思います」と語った。また小林氏は、「3次元データを構築するためには、まだ多くのコストが必要になるので、いろいろな分野の人が共通で利用できる3次元プラットフォームを構築することが重要です。また携帯電話などのモバイル機器でも3次元データがスムーズに動くようになると、利用範囲は格段に広がるでしょう」と指摘。さらに五十嵐氏は、「現状は2次元データに戻して電子納品を行っていますが、3次元データでそのまま電子納品できる環境を整えることも重要ですね」と語る。

他多くの意見も参考にしたうえで、コーディネータの藤澤氏は今後3次元データの活用が進展するためには、(1)3次元モデル設計のための環境づくり、(2)3次元モデルの標準化、(3)3次元モデルを活用できるハード・ソフトの普及、(4)維持管理まで含めた構造物のライフサイクル全体を視野に入れた3次元プラットフォームの構築、(5)3次元データを活用できる技術者の育成などが必要になると結論付けた。藤澤氏は、「3次元化をあまり難しく考えずに、3次元データを活用していこうという意識、3次元データで業務のやり方を変えていこうとする意識を、みんなが持つことが重要です」とまとめた。

また、大塚商会に対しては、「ユーザの意見や要望をCADベンダーに伝えてほしい」と一様に語り、ユーザとCADベンダーのパイプ役としての役割に大きな期待を寄せた。

(掲載:2009年8月)

↑ページの先頭へ戻る

関連リンク

企業のITセキュリティ講座