CAD/設計InfoCAD/設計Info CADを利用して設計を行う際に必要なノウハウを紹介。

CAD/設計Infoのトップへ

コマンドだけでは3D CADは使いこなせない

企業の教育担当者にとって、「3D CADのスキルをチェックしてほしい」という要望は多く、また頭の痛い問題である。コマンド操作を重視するのであれば、CAD販売会社が実施している認定試験や、各種機関の資格などを判断基準にすればよいだろう。しかし、設計者に求められているのは3D CADの「操作スキル」ではなく「活用スキル」なのだ。

操作コマンドを覚える前に

手元に3D CADのマニュアルやチュートリアルがあれば、開いてみてもらいたい。個々の操作コマンドが丁寧に説明されているはずだ。逆に、「これほど大量の操作コマンドを細かく覚えないと、3D CADは使いこなせないのか……」という気分にもなる。3D CADの操作講習を受講したばかりの設計者も、「3D CADを使いこなす」=「多くの操作コマンドを知る(覚える)」などと勘違いしてしまいがちだ。

このような講習を受講したばかりの設計者に、簡単な段付きシャフトをモデリングしてもらうことにしよう。多くの場合、覚えたての「回転コマンド」を使おうと考え、シャフトの断面形状のスケッチから始める。


シャフトの外形断面を2次元スケッチ機能で作図し、その形状をシャフト中心の回転軸に対して360°回転、立体形状を作成したもの。


それほど難しくない形状ではあるが、3D CADであることに気を使い過ぎてスケッチ画面の中で悪戦苦闘しながら時間切れになってしまったり、とにかく完成形状を作ることに気をとられるあまり、設計者として考慮しなければならない重要な部分を見過ごしてしまうことも多い。

このシャフトで最初に考えなければならない部分はどこだろうか?

仮に動力を伝達するギアとして使用するのであれば、まずは伝達トルク(ローラとピンであれば、ローラ荷重)からシャフトの直径を決定することである。しかし、実際には「伝達トルクやローラ荷重からシャフト径を決定する」という設計プロセスを踏む以前に、そもそも設計基準をいい加減に決めて(もしくは特に決めることなく)設計を始める人が多いのだ。先の例で言えば、シャフトの端面を設計基準にしてモデリングを始める人などが、これに該当する。


シャフトの端面は加工基準や検査基準ではあるが、ほとんどの場合、設計基準ではないことに注意する。


設計基準は、設計を始める基準点なので、物の形が無くても決められる位置に存在する必要がある。今回のシャフトに関しては、伝達する力の中心にするのが適切だろう。

設計基準が適切で、伝達トルクやローラ荷重から決定されるシャフトの基本径に相当する円柱さえモデリングされていれば、設計検証に使用できるシャフトのモデルは簡単に作ることが出来る。


最初の円柱は設計で最終的に必要となるシャフト径に相当するものであり、実際の旋盤加工に使用する素材の最大径ではない。


これに続き、設計で考える順番と同じように、位置決め用のフランジ部、ギアやローラの固定部品を取り付ける溝、をモデリングしていけばよい。3D CADのコマンドを覚えることは操作の把握や効率性から必要であるが、あくまでもツールであることを認識したうえで、設計者として押さえておかなければならない「ツボ」があることを理解しておこう。

何のために3D CADを使うのか

ただモデルの形を作るだけであれば、断面を一気にスケッチしたり、多くの操作コマンドを利用したりと方法は多い。しかし、3D CADのスキルを評価する場合、これでは「操作スキル」の評価になってしまいがちだ。例えば、板金ブラケットのモデル作成は図のように可能だ。しかし、これは設計検討に使用できるデータとなっているだろうか?


板金ブラケットの断面を一気にスケッチして、コマンドで押し出すだけで形は作れる。


形状作成のスピードと結果のみを評価するのであれば、このような判断基準でもよいのだが、設計者に求められているのは、作成した立体データを用いて設計内容の検証を行ったり、不具合個所を事前に発見したりといった「3D CADの活用スキル」なのだ。

そのように考えれば、ただ形を作ることよりも、設計基準を明確にして、重要な部分を最初に作り、設計検証に使えるデータを最低限の手数で得る、という過程が重要となる。当然のことながら、設計者に対しては「作られた形」だけではなく「形を作る過程」も判断基準にして「3D CADの活用スキル」をチェックするべきだろう。

スキルチェック用の課題を与える場合にも、例えば、単に「コップをモデリングしなさい」ではなく、「内容量500mlのコップをモデリングしなさい」というような課題が適切である。そして、出題する側にも「形を作る過程」を評価するスキルが要求されるのは当然だ。


「内容量500mlのコップ」のモデリング。単純に思える課題だが、スキルチェックに有効なことが多い。


「3D CADの活用スキル」をチェックするために頭を悩まされている教育担当者の方も、一度このような課題を作成して、教育する側のスキルもチェックしてみるのはいかがだろうか?

(掲載:2007年2月)

企業のITセキュリティ講座