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揺れる建築/建設業界
改正建築基準法でどうなる!?

わずかな発端から始まった、構造計算書の偽造問題。建築/建設業界を大きく揺るがし、社会問題まで引き起こしたことに対し、現在はどのように状況が整っているのだろうか。

業界を覆う
構造計算書偽造問題の余波

2005年末に発覚し、大問題となった構造計算書偽造。国家資格を取得した一級建築士によって偽装された構造計算書が、検査機関の承認を得て、建築基準法に定められた耐震基準を満たさないまま、マンションやホテルとして建設されていた。この事実は行政をはじめ、建設業界・建築業界はもちろんのこと、不動産・住宅業界全体を巻き込んだ大きな社会問題に発展となった。

このような問題の再発を防止するために検討が重ねられ、今年の2007年6月20日に施行されたのが「改正建築基準法(国土交通省)」だ。改正法では、一定の高さ以上の建築物について「構造計算適合性判定制度」を導入や、確認審査期間を延長するなど、建築確認・検査の厳格化をしている。法改正によって、建物の構造計算の偽造が行われないよう、より厳しい審査方法が採られている。

しかし、建基法改正によって建築現場へもたらした混乱は少なくない。特に建築確認申請手続きの変更による新たな負担は、建築士や建設業の実務者を直撃している。また、法令の解釈や背景などを解説する「2007年版建築物の構造関係技術基準解説書」の発行も8月までずれ込み、改正法の内容の周知や理解も十分には進んでいない状況だ。

建築確認・検査の厳格化が影響し
住宅着工に影響

法改正による現場の混乱は、すぐに数字として浮かび上がってきた。新たな建築確認手続きの厳格化が障壁となり、建設会社や設計事務所からの建築確認申請が滞ってしまうという状態を招いた。結果として、改正法施行から住宅着工数が激減してしまっている。国土交通省が発表した2007年7月の新設住宅着工戸数は8万1,714戸で、前年同月より23%減少した計算になる。


新設住宅の戸数と前年同月比
(出典:国土交通省「建築着工統計調査(平成19年7月分)」)


こうした事態を受け、今回の改正自体について是非を問う声が建築現場より突き上げられている。そして建築構造技術者の団体である社団法人日本建築構造技術者協会(JSCA)は、2007年8月31日付けで『建築確認申請業務の現状と要望』という要望書を国土交通省に提出した。要望書では、審査側および設計側の改正法の情報理解不足によって建築確認申請が停滞している現状、改正とマッチしていないという建築生産の実情、構造計算プログラムの大臣認定の大幅遅延が確認申請の停滞につながっている事情を語り、さらに構造設計者が疲弊し判定機関や他業種等への逃避が始まっているとも述べている。要望書は、「基準法改正の趣旨に則り、大所からの見直しを望む」と締めくくられている。

建築基準法改正の対応に追われる
国土交通省

建築現場から上がる改正建築基準法への厳しい批判の声に対し、国土交通省も対応に追われている。2007年8月27日には、社団法人日本建築士事務所協会連合会による緊急拡大全国会長会議として「改正建築基準法施行関係説明会」が開催された。出席した国土交通省の担当官である小川大臣官房審議官は「改正基準法施行までに時間的な余裕が無く、審査指針等のアナウンスが遅くなり、確認申請手続きに係る混乱が生じたことを恐縮しており、現場の課題は早急に解決したい」と述べ、法改正が建築確認申請の停滞を招いたことを認め、申請手続きの円滑化に取り組む意向を明らかにした。

国土交通省は2007年9月18日に、改正建築基準法による確認申請業務の情報提供の徹底を目的として、電話相談窓口を財団法人建築行政情報センター内に開設。また、同センターのウェブサイト上で、改正建築基準法に関する質問を受け付ける「改正建築基準法・質問箱」も設置した。

こうした国土交通省の対応は、あくまで改正建築基準法への理解を建築実務者に促すことを目的としており、「改正が建築生産の実情とマッチしていない」として改正法の見直しを求める日本建築構造技術者協会の要望とは一線を画している。しかし国土交通省が「法改正の一時的な影響」と説明する住宅着工数の減少が今後さらに続く事態となれば、改正法の見直しを視野に入れた抜本的な対応を求める声が一層上がることだろう。

改正建築基準法による激震は、まだまだ建築/建設業界の足元を揺らし続けそうである。法を担当する国土交通省と、実際に現場を運用する建設業界、最適解を探る努力が望まれている。

(掲載:2007年9月)

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