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動く機構のモデリングは
部品からではなく、動作から

動く機構のアセンブリを、実際の製造や動作と同じ順番に組み付けられているものをよく見かける。しかし、これでは設計できないことに気付いてほしい。では、何が問題点になるのだろうか。

リンクの動作

製造の順番と設計の順番が同じでは、問題となる。その理由を、身近な場面でも見かける「並行リンク」を例にして考えてみよう。

並行リンクの基本的な構造は、X字型に連結されたリンクのうち1本が固定支点となっており、他の1本をガイドに沿ってスライドさせると、リンクの先端部が上下するというものだ。


複数の部品を連動させて動かさなければ、という意識のせいだろうか、実際に工場で部品を組み付けるような手順で3D CADのアセンブリを構築してしまう例が多い。つまり、最初に必要な部品を全てモデリングする作業から始め、出来上がった部品の穴に軸を挿入したり、部品の面同士を合致させたりしながらリンク機構を完成させていくのだ。

  1. 完成したスライドブロックを固定ブロックに取り付けたスライドガイドに挿入する。
  2. 支点軸を固定ブロックとスライドブロックに挿入する。
  3. リンク(1本目)の軸穴をスライド軸に挿入する。
  4. 連結軸をリンクの穴に挿入する。
  5. 残りのリンクを連結軸に挿入する。

一見すんなりと受け入れてしまいそうな手順であるが、これらの作業は設計の終わったリンク機構を3D CADでモデリングしているだけに過ぎないことに気付いてほしい。

このような方法では、「スライドブロックを動かす」→「リンクの先端部が上下する」という実際の動きはシミュレーションできたとしても、「仕様に従ってリンクの先端を上下させたい」→「必要なスライドブロックのストロークを知りたい」といった、設計検証ができないのだ。

それでは、どのように考えれば良いのだろうか?

設計の手順としては、実現したいリンクの動作を検討した後に、個々の部品形状を決めていくはずである。2D CADまでの時代には、リンクの竹ひごだけをスケッチしながら動きを検討していたと思うが、3D CADになっても手順は同じことだ。まずは、最も重要な「動作」からモデリングを始めると良い。

  1. アセンブリ内に並行リンクの動きをスケッチで作成する。リンクの中心線だけがあれば動作の検討は可能である。
  2. 動作の検討が終わったら、直方体1個で作成したリンクを、動作検討済みのスケッチに組み付けていく。この時点ではリンクを詳しく作り込む必要はない。
  3. 支点軸や連結軸も円柱だけで組み付ける。また、リンクと干渉しても構わない。
  4. スライドブロックも直方体1個でモデリングし、アセンブリ内のスケッチに組み付けていく。
  5. それぞれの部品は直方体や円柱だけの簡単な形状であるが、リンク機構としては十分に完成しているのが分かるはずだ。ここから、全体を見ながら詳細な形状を作り込めば良い。

カムの動作

カムの図面を前にして「このカム形状をモデリングしたい」と言われることがある。それでは、カムの動作を定義する「カム曲線は?」と尋ねると、その図面に記載されていないことが多いのだ。

カム形状は動作の結果に過ぎないので、完成形状だけが記載された図面では設計に不十分である。作図自体は簡易形状でも、点群をプロットしたものでも構わないのだが、カム曲線が正式図面として管理されていないのは困ったことである。


実際の機構では、カムの回転に従ってカムフォロアやタペットが動くということになる。しかし、設計手順はその逆で、カムフォロアやタペットの動きをカム曲線として設計し、それに従ってカムの外形を作成しなければならない。




基本的なことではあるが、3D CADの操作ばかりにとらわれていると、本質を見失った方法でモデリングしたカムを生み出してしまう。ここでも、基本は動作からモデリングすることである。

シリンダの動作

リンクやレバーを動作させる動力源に、モータやエアシリンダを使用する場合も、設計の目的から考え始めることが重要だ。

どうしても「シリンダの動き」→「レバーの動き」→「ワークの動き」と考えてしまいがちになるが、やはり設計プロセスとしては「仕様に従ってワークを動かしたい」→「ワークの動作に従ってレバーが動く」→「レバーの動作に従ってシリンダが動く」ということだろう。

  1. 仕様に従ってワークの動きを決め、アセンブリ内にレバーの動きをスケッチで作成する。
  2. レバーを直方体1個で作成し、アセンブリ内のスケッチに組み付ける。
  3. エアシリンダなどの仕様は、ワークの動作を設計してから決まるものである。購入品や共用品だからといって、最後に決まるような部品を最初に組み付けないようにしよう。

いずれも、実際の動きと設計の順番は逆になっていることが分かるだろう。設計の順番で迷ったら「実際の組み立てや動作と設計は逆の順番」と考えて、図面を見直してみよう。

(掲載:2007年11月)

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