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成形品の設計とモデリング
緩急のつけどころ

射出成形品のモデリングには製造要件として考慮すべき点が多い。その中でも、簡易化できる部分はないか考えてみよう。

射出成形品における
基本形状の抜き勾配

身の回りでよく見かけるプラスチック製品は、外観形状を反転した金型に溶けた樹脂を射出し、冷やして固めた後、金型から取り出す、といった手順で作られている。複雑な形状であっても短時間で成型できる利点があるが、金型を使うことによる製造上の制限もまたある。

金型から抜き出すためにつける「抜き勾配」は、成型品特有の形状として製品の外観や構造に影響をおよぼすことが多い。このため、設計の初期段階から考慮しておく必要がある。

例えば、直方体に角Rが付加された基本的な形状であっても、側面の抜き勾配を考慮するか否か、考慮する場合でも抜き勾配と角Rの関係をどのように作成するか、などによって異なった外観形状になるのが分かるだろう。

直方体(抜き勾配なしと角Rの関係


いずれも金型構造や加工手順を工夫すれば製造可能なので、どれが正しいということではない。しかし、このような基本形状については抜き勾配も含めた形状でモデリングをしておかないと、意匠デザイナーや設計者の意図を製造側にまで伝えることは困難である。少なくとも、金型や加工などの製造要件を理解せずに、抜き勾配なしでモデリングすることは避けておこう。

ボス・リブの抜き勾配
モデリングの緩急

ボスやリブといった形状に要求される設計機能は「ボス:先端の直径、高さ、ねじ穴など」「リブ:先端の厚み、高さ」になり、これらを形としてモデリングすることも必要である。

抜き勾配に関しては、全てのボス・リブに勾配を付加したモデリングを見かけるが、金型構造や加工の基本的な部分を理解していれば省略できる場合も多い。これらの金型は、指定された勾配を持つ工具(穴開けやカッター)で切削加工されるため、先端の寸法と高さ(加工から見れば深さ)がモデリングされていれば、抜き勾配の指示は注記で済ますことも可能である。

特に、大量のボスやリブをモデリングしなければならない場合、それぞれの抜き勾配までモデリングすることによって得られるメリットよりも、そのために費やす工数増加によるデメリットのほうが大きくなってしまうだろう。

モデリングする場合でも寸法指定は「先端寸法」+「高さ」+「抜き勾配」として、抜き勾配の値も数種に統一すべきである。必要もないのに「先端寸法」+「根元寸法」などの指定を行うと、ボス・リブの金型加工に使用する切削工具を指定された寸法から逆算した勾配で、そのつど作成しなければならなくなり、コストアップの要因ともなる。

ボス・リブのモデリングと寸法指定


片側寸法公差と中間公差
隙間の狙いをつける

成型品に限らず、モデリングしたデータを加工に利用し始めると、従来の2D図面で10mm(+0.1/-0)などと表現されていた片側公差をどのように扱えばよいのか、という疑問が出てくるようだ。凹凸のはめ合いで、凹寸法を10mm(+0.1/-0)に、凸寸法を10mm(+0/-0.1)に指定する場合が代表的な例になるだろう。

設計者にしてみれば、凹凸の隙間はできるだけ少なくしたいという意図が想像できる。問題となるのは、凹凸の形状が全く同じ寸法では、はめ合わせることが不可能なため、その隙間をどこまでゼロに近づけたいのかが明確に指定されていない場合だ。先述の片側公差が記載された図面を製造側に渡しても、特別なことがない限り、単純に公差の中間値(凹は10.05mm±0.05、凸は9.95mm±0.05)を狙い寸法として加工されるだけだろう。

凹凸を組み合わせた状態の隙間をコントロールしたいのであれば、凹凸状態の組図で、隙間=0.025mm±0.005などのように隙間をどれくらいの寸法に設計したいのかを明快に示すべきだ。このようにすれば、凹や凸の寸法公差は自ずから決まってくるだろう。

凹凸の組み合わせ


気をつけておきたいのは、設計図を加工データとしても利用するのであれば、本来の狙い値と中間公差でモデリングしておく必要があるということだ。そして、検査用に使用される図面では、片側公差を記載しても構わないだろう。状況によって、何がもっとも求められているかを判断しておこう。

(掲載:2007年12月)

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