CAD/設計InfoCAD/設計Info CADを利用して設計を行う際に必要なノウハウを紹介。

CAD/設計Infoのトップへ

異なる3D CADとコマンドを使い分けるコツ
立体形状の成り立ちと作成方法の関連を知る

状況によって複数の3D CADを使い分ける必要に迫られた場合、それぞれの操作を習得するには長い時間が必要だと思ってしまう。しかし、共通となるポイントがあり、それを理解しておけば意外と簡単なものである。

異なる3D CADでも共通となる基本コマンド
「突起」「カット」「シェル」を知る

普段から馴染みのある3D CADと異なるものを使用する場合、画面上に並んだアイコンやメニューを前に戸惑うことも多い。使い慣れた操作コマンドが「この3D CADでは、どれに相当するのだろうか?」と思ってしまうからだ。操作マニュアルに記載されたすべてのコマンドを、複数の3D CADごとで覚えられればよいのだが、それはあまりにも理想論的だ。時間の制約もあり、実際の業務ではとても現実的な方法とはいえない。

さて、それではどうするか。まず、平面に図形を作成する2D CADでは、直線と円弧を描くコマンドさえ扱えれば、異なるCADであっても何とか使い始めることができた。その先、図形の編集操作などは、使いながらでも自然と習得していったものだ。

これに対して、空間に立体形状を作成する3D CADでは、マニュアルに記載された操作コマンドを数多く覚えてからでないと、簡易なモデリングも満足にできないといった風潮が見受けられる。しかし、基本に立ち返れば、ある3種類のコマンドさえ扱えるようになれば3D CADでは十分なのだ。

3D CADの種類を問わず、そもそも立体形状を作成する基本的な方法は2種類しかない。

  1. 平面上に描かれた2Dの図形に厚み(奥行き)を加える。
  2. 既に存在する3Dの立体形状を変形させる。

これらを実現する方法はどんな3D CADにも用意されていて、かつ、基本的な操作であるがゆえに、コマンドの内容もほぼ共通だ。早速、モデリングの定石ともいえる3つの基本コマンドを紹介していこう。

■突起

空間内に体積を付加するコマンドで、最初の立体形状を作成するのに用いる。2D図形(スケッチ)を押し出す方法によって立体形状を作成する方法が多いので、CADによっては「押し出し」「ボス」「パッド」などのコマンド名で表記される。

長方形のスケッチを対称方向に「突起」して直方体を作成
長方形のスケッチを対称方向に「突起」して直方体を作成


■カット

作成された体積を除去するコマンドで、既に存在する立体形状を切り取るのに用いる。作成方法は「突起」と同じだが、体積を付加するか除去するかという結果が異 なると考えればよい。これもCADにより「切り抜き」「ポケット」「カット」などのようにコマンド名が表記される。

直方体と組み合わせた円柱の体積を直方体から「カット」
直方体と組み合わせた円柱の体積を直方体から「カット」


■シェル

不要な面を除去して残った面に厚みを付けるコマンドで、既に存在する立体形状を「突起」や「カット」によらず、変形させることができる。薄肉容器などのモデリングによく利用されるが、除去する面や肉厚の指示を工夫することによって、応用できる範囲が広いコマンドである。

不要な面と肉厚を指定して「シェル」で薄板化
不要な面と肉厚を指定して「シェル」で薄板化


立体形状を作り出すさまざまなコマンド
それぞれの成り立ちと意味を知る

立体形状作成の基本となる「突起」「カット」「シェル」以外にも、もちろん3D CADには多くのコマンドが用意されている。これらのコマンドを複数のCADで覚える場合、その成り立ちを整理して覚えていった方が効率的だ。

例えば、結果として「突起」を得るには「押し出し」と「回転」が代表的な方法である。「押し出し」は、平面にスケッチした2D図形(断面形状)を、その平面と垂直に移動させた結果として「突起」が得られる。また「回転」は、やはり平面にスケッチした2D図形を、指定した軸を中心に回転させた結果として「突起」が作成される。

「押し出し」と「回転」だけでは、その成り立ちを想像するのは難しいと思うので、ここでは「スイープ」について考えてみよう。「スイープ」は、2Dの図形を軌道に沿って動かした結果として「突起」を得る方法である。軌道には自由曲線も使用可能で、結果として「突起」以外にサーフェスも作成できることから、自由曲面のモデリングに利用されることが多い。

長方形を曲線軌道に沿って動かした「スイープ」
長方形を曲線軌道に沿って動かした「スイープ」


見方を変えると、「押し出し」は軌道を直線に限定した「スイープ」であり、「回転」は軌道を円形に限定した「スイープ」であるともいえる。

直線軌道での「スイープ」=「押し出し」・円形軌道での「スイープ」=「回転」
直線軌道での「スイープ」=「押し出し」・円形軌道での「スイープ」=「回転」


「押し出し」ながら断面を変化させる「ブレンド」なども、「スイープ」中に断面形状が変化すると考えればよい。

最初と最後で断面を変化させた「ブレンド」
最初と最後で断面を変化させた「ブレンド」


コマンドの種類は、つまり「立体形状を作成する方法」と「得られる結果」の組み合わせなので、それぞれの成り立ちや意味合いを理解することは、複数のCADを習得することの効率化につながると思う。

コマンドの種類と整理
コマンドの種類と整理


3D CADが備える特有のコマンド
何が必要で何が便利かを知る

さまざまな3D CADが存在する中で、どれを導入すればよいか? 選定を考えている企業にありがちなのが、各CADごとにコマンドを比較した「○×表」を作成することだ。このような比較検討をしたところで、「○」の多少がCADの性能を決めるわけではない。あるCADが持っている特有のコマンドや、ちょっとしたオプションの差が、自社の製品や機械の検証ツールとして適切かどうかに大きく関わってくる場合もあるからだ。

複数のCADを使う(選定する)場合は、それぞれが持つ特有のコマンドについての正しい理解が必要である。実際に使用する立場から見た、チェックしておきたい項目をいくつか挙げておこう。

■類似部品の作成機能

基本データを元にして、類似データを派生させる機能が多くのCADに準備されている。便利なように思え、実際に便利な機能なのだが、それぞれのCADごとに特化しているので、作成されたデータの管理には注意が必要だ。CADに特化したPDMを使用するのか、CADに特化しないPDMを使用するのか、事前に部品管理標準部品仕様の方向性を明確にしておくのがいいだろう。

■便利コマンド

板金部品作成用のコマンド、曲面作成用のコマンド、自由変形コマンドなど、複雑な形状作成や面倒な作業をこなしてくれる便利そうなコマンドには副作用があると考えた方がよい。コマンドに頼る部分が大きいだけに、後々のデータ変更やメンテナンスがしにくい、誰でも使いこなせるわけではない、トレースはできるが設計プロセスに沿って検討できないなど、問題点が現れることがある。しかし、コマンド自体や使うことが悪なのではなく、問題は使われ方にあるため、これも事前に運用方法を検討しておこう。

■データの呼び出し時間

コマンドではないが関連する事項として、実際のCAD作業スピードを決める大きな要因となるのが、作成したデータの呼び出し時間だ。作成したデータの容量、呼び出したデータの再生や再構築に必要な時間は、CADそれぞれに固有の特性なので、最初に調査しておくべきである。この時、保存した画像データだけを最初に呼び出して、見かけ上の呼び出し時間を短縮しているCADもある。データ確認用としては便利だが、実際に編集作業を行うことを考えれば、作成データを呼び出してから編集可能になるまでの時間を確認しておこう。

■データの呼び出し点数

データの呼び出し時間とも関連して、呼び出しできる点数も、重要な調査の対象となることがあるだろう。例えば、数百〜数千点の部品で構成されるアセンブリを扱う場合、CADによっては明らかな呼び出し時間の差が発生し、一万点近くになれば呼び出し自体が不可能になるCADも多い。こうした点は、単純なコマンドの「○×表」からはなかなか判断できない。

(掲載:2008年6月)

関連リンク

企業のITセキュリティ講座