CAD/設計InfoCAD/設計Info CADを利用して設計を行う際に必要なノウハウを紹介。

CAD/設計Infoのトップへ

建築基準関係法令が定める
シックハウス対策や防火・避難の規定

建築基準法は、国民の生命・健康・財産の保護を図ることを目的として建築物の最低基準を定めたものだ。耐震偽装問題で注目を浴び、改正に至った建築基準法だが、建築物の安全は耐震性だけが問題ではない。住居環境の安全に関わるほかの規定についてもあらためて確認してみよう。

建築物の安全性を確保する
「化学物質によるシックハウス対策」

人が居住、執務、作業、集会、娯楽などの目的のために継続的に使用する室を「居室」と呼ぶ。居室については、その構造上の物理的な安全性はもちろん、内装に人の健康を害する化学的な物質が用いられていないかも重要な意味を持つ。居室内の化学物質による空気汚染を防止するためのシックハウス対策を定めた建築基準法の規定は、平成15年から施行された。さらに平成18年にはこの規定が改正され、「石綿そのほかの物質の飛散または発散に対する衛生上の措置」として施行されている。これは、著しく衛生上有害な物質として石綿(アスベスト)を、そして居室内において衛生上の支障を生じる恐れがある物質としてクロルピリホスとホルムアルデヒドについて規定したものである。

吸入によって肺ガンや悪性中皮腫などの原因となる石綿は建築物に使用することが禁止されている。同様に、シロアリ駆除材に含まれる神経系に有害なクロルピリホスも、その残留性の高さから建築材料に使用することが禁止されている。ホルムアルデヒドは壁紙や接着剤、塗料のほか、一部の建材に含まれる化学物質だが、これも使用面積の制限や機械換気設備の設置義務が定められている。なお、シックハウス対策でいう居室は厳密に部屋だけが対象ではなく、一定の条件に沿った廊下も、生活空間の意味で対象に含まれている。

なお、禁止あるいは制限されている物質のうち、石綿については将来に向かっての使用は禁止されていても、過去の建築物で石綿を含むものは現在でも数多く存在している。このまま放置すれば石綿の飛散が生じるため、除去、封じ込め、囲い込みなど対策工事を行う必要がある。こうした過去に建築されたものについても建築基準法は対応を定めている。増改築時に有害物質の除去を義務付け、石綿飛散の恐れがある場合の勧告・命令や報告聴取・立入検査の実施、定期報告制度による閲覧の実施などである。また、大気汚染防止法でも、解体作業を行う場合の都道府県知事への事前届出、飛散防止対策の実施を義務付けている。

吹付け材に石綿が含まれている建築物の実態調査

調査報告のあった建築物数 214,050棟
露出した吹き付けがある建築物 14,774棟
露出した吹き付けがある建築物のうち、指導により対応済みの建築物数 7,734棟
露出した吹き付けがある建築物のうち、指導により対応が予定されている建築物数 1,191棟
※調査対象:昭和31年から平成元年までに施工された民間建築物のうち、約1,000平方メートル以上の大規模建築物
(平成19年9月14日現在 国土交通省の調査より)


こうした過去の建築物への対応を行う場合の負担について、国と地方公共団体は建物所有者に対してアスベスト調査・除去などの工事に関する支援制度を設けており、日本政策金融公庫(平成20年9月30日までは国民生活金融公庫、中小企業金融公庫)が低利融資を行っている。

建築物の安全性を確保する
「火災の防火と避難経路の確保」

建築物そのものが損壊し大きな被害が生じる原因として、地震のほかに火災がある。建築基準法には、火災による被害防止のための措置についても定めている。ここでは日常的に起こりうる火災の防止と、火災などの際に避難のために使われる避難階段に関する規定を見ていこう。

■防火に関する規定

防火に関する建築基準法の規定は複雑で、その内容も非常に詳細なものである。まずは、特殊建築物の防火のための内装制限に絞って説明しよう。内装制限の対象となる建築物は、映画館や病院、マーケット、下宿、共同住宅、老人ホームなど一定の特殊建築物と、3階以上の建築物、調理室、浴室、そのほかで火を使用する室、無窓の居室である。

火災は小さな火種からでもカーテンなどの内装材へ燃え広がり、それらが加熱されることによって可燃性のガスが発生して室内にたまっていく。そして、この可燃性ガスに着火することで爆発的な勢いで燃え上がる、フラッシュオーバーという状態になる。フラッシュオーバー以前であれば消火活動も容易だが、この時点を過ぎると消火も避難も活動が困難を極めることになる。建築基準法により内装を制限する理由は、万一の火災でもこのフラッシュオーバーをできるだけ遅らせて、避難および消火活動に必要な時間的余裕を作るためである。

これら内装に使用される仕上げ材料は、不燃性・難燃性の高い方から順に不燃材料、準不燃材料、難燃材料に分かれている。内装制限の適用対象となる特殊建築物の地階や地下工作物内の居室、自動車車庫、自動車修理工場、火気を使用する室、無窓の居室、廊下や階段などの避難経路については、不燃材料か準不燃材料を使用することとされている。そして、映画館や百貨店、病院、旅館、共同住宅などの特殊建築物や大規模建築物の居室は、難燃材料を使用することができるが、3階以上にある居室については天井を準不燃材料か不燃材料にすることが要求されている。

●内装制限の適用対象となる居室の部分と仕上げ材

■避難階段に関する規定

火災などの災害が発生したときに最も頼りになるのは、いつ停電で停止するか分からないエレベーターやエスカレーターではなく、避難者が自力で昇降する階段である。特に不特定多数の人や自動車が出入りする建築物の場合には、避難階段の重要性はいうまでもない。避難階段には屋内避難階段と屋外避難階段、そしてより安全性を高めた特別避難階段があり、ここでも建築基準法は詳細な規定を置いている。

屋内避難階段は、避難階(直接地上へ通じる出入り口のある階)への直通階段で、階段自体も耐火構造とし、階段室の壁・天井の仕上げと下地は不燃材料を使用する。また、出入り口は防火戸が設けられる。
屋外避難階段は、耐火構造の直通階段で、階段が面している外壁には階段から2m以上離れているものを除いて開口部を設けてはならない。これは、開口部から吹き出した火炎によって避難が困難になることを防ぐためだ。そして、屋内から階段への出入り口には防火戸を設ける。
特別避難階段は、すべて屋内に設けられ、階段室に入る前に排煙設備を設けた附室やバルコニーを通る構造にして安全性を高めた避難階段である。階段室と附室には予備電源付の照明装置が設けられる。


避難階段の設置

5階以上の階または地下2階以下の階に通じる直通階段 避難階段または特別避難階段としなければならない。
1,500平方メートル超の物品販売業の店舗で、3階以上の階を店舗とする場合の各階売場および屋上広場に通じる直通階段(2つ以上必要) 避難階段または特別避難階段としなければならない。
15階以上の階または地下3階以下の階に通じる直通階段 特別避難階段としなければならない。
1,500平方メートル超の物品販売業の店舗で5階以上、14階以下の売場に通じる直通階段の1つ以上
1,500平方メートル超の物品販売業の店舗で15階以上の売場に通じる直通階段の全部


なお、避難階段はその設置基準を満たすだけではなく、常に使用できる状態に維持しておかなければ意味はない。避難階段が段ボール箱や物品の倉庫替わりの場所となっていた雑居ビルで火災が発生し、放置された物品が防火戸の閉鎖を妨げ、また類焼によって避難階段が煙や炎熱を上階へ送り込む煙突の役目を果してしまった事故も覚えているだろう。これによって消防法も改正され、廊下、階段、避難口そのほか避難に必要な施設について、避難の支障になる物件が放置または存置されることがないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置または存置されないよう管理することが義務付けられた。

建築物の安全基準に関して
建築確認申請が求める審査手続

こうした室内環境の安全や防火・避難の安全に関して、建築基準法の規定が守られているかどうかは建築確認申請の際の書類提出によって審査される。化学物質発散に対する衛生上の措置を要する建築物については使用建築材料表の添付が、内装制限の適用を受ける建築物や建築物の部分については室内仕上げ表の添付がそれぞれ要求されている。また、建築主事や指定確認検査機関が確認を行う場合には、防火規定に違反していないことにつき、工事を行う場所を管轄する消防長または消防署長の同意を得なければならないとされている。

建築物を利用する人の安全を守るため、多くの規定が設けられている建築基準法だが、さまざまな状況が起こり、関連法規も含めて大きく改定がされてきている。建築物への信頼も守るため、常に動向を察知しておこう。

(掲載:2008年8月)

関連リンク

企業のITセキュリティ講座