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建築業界のパラダイムの転換となるか?
3Dビルディングモデル「BIM」による設計

今、建築業界では3Dビルディングモデルを使用した「Building Information Modeling(BIM)」による設計方法が注目を集めている。このBIMとは何か?何が新しいのか?業界を取り巻く状況も含めて考えてみよう。

建築・設計の概念を打ち破る「BIM」
これまでのCADをどのように超えるのか

映画やテレビなどで、建物の内外を自在に動き回る3D CGを見たことがある人は多いだろう。または車や船、航空機の立体的な設計画像を見た人もいるかもしれない。簡単に言ってしまえば、それが「Building Information Modeling(BIM)」のイメージに近い。つまり、BIMはモノづくりの設計で使用する3D CADの建築版と言えるのだ。もちろん、BIMはそれだけではない。何が注目を集めるのか、詳しく見ていこう。

つまり、BIMは単なる3D CADではなく、3D CAD+データベースと捉えることができる。こうなると、モノづくりで注目されているPLM(Product Lifecycle Management:企画・開発・設計・製造・生産から出荷後のサポートやメンテナンス・廃棄までのすべての過程を一貫して管理)とほぼ同じであることがわかる。BIMは、建築物に関する必要な情報を統合的に管理して、建物の設計から施工管理、メンテナンスなどに役立てることができる建築のパラダイム転換なのだ。

もちろん、今までも建築に関連した情報は紙の図面、2Dや3DのCADデータ、資産台帳といった形で管理されてきた。ただし、それぞれの情報は別個で管理されており、有機的に連携して活用することが困難もしくは煩雑だった。まして部門や会社が異なっていた場合、それらのデータを共有して利用することはなかった。

建築基準法の改正によって審査が厳格化
増えるコストの解決策として注目が集まる

BIMは多様な情報をデータベースで統合管理することで、部門や会社の壁を越えて、必要なときに必要な人が必要な情報を利用できる環境を整えられる。プロジェクトに関わるさまざまな分野の担当者が、各作業の情報をそれぞれ図面やCADデータとして保管していなくても、必要な情報は1つの3Dモデルから取り出して利用できるのだ。

こうしたBIMに熱い視線が注がれるようになったのは、2005年の耐震強度偽装をきっかけにした、2007年6月の建築基準法の改正・施行以降のことだ。建築物に対する安全性の確保を目的にした新建築基準法によって建築確認の審査が厳しくなり、影響としてマンション建設の遅れなどが出始めた。そしてそれは住宅着工件数の減少となってすぐに現れる。国土交通省によると、新築住宅の着工件数は新建築基準法の施工前の2007年6月では約12万戸で前年比6%増だったのが、施行後の7月は約8万戸となり、前年比では23%と大きく減少した。さらに8月は約6万戸、前年比で43%もダウンし、その影響が大きいことが伺える。

新規住宅着工件数の推移
新設住宅着工件数の推移 ※出典:国土交通省「建築着工統計調査報告」(平成19年度統計)


新建築基準法では、建築確認申請書などの書類作成に多大の時間が必要になった。また、審査基準が厳しくなったため、従来は許されていた工事途中での変更、例えば建物の使い勝手を良くするための設計変更が許されなくなった。構造計算書と図面の間で数値の転記ミスなどがあった場合、その訂正も不可能になった。厳密な審査が行われる結果、修正が必要な場合は確認申請からやり直すことになり、当然、建築期間は延びてコストも増加する。

こうした状況に対して、3D CAD+データベースであるBIMであれば、意匠や設計変更による構造計算なども短期間に行うことができ、正確な建築確認申請をすばやく提出できることから広く注目され始めた。

BIMはこれからの建築業界において
革命を起こすインパクトがあるか

BIMのメリットは、建築家とエンジニアが建築プロセス全体の情報を一元的に共有することができる点にある。これによって、建築物の構造や性能のシミュレーションを行い、ワークフローの効率化・生産性の向上・品質の改善といったことも実現が可能になる。それは、いろいろな検討を前倒しで行って、設計や施工の問題点を事前に解決する「フロントローディング」の体制が成立することを意味する。

さらに、〔企画セクタ〕→〔設計セクタ〕→〔施工セクタ〕→〔管理セクタ〕といった建築サプライチェーンに大きな変革をもたらし、それぞれのセクタ間の隔たりによる知識や意識の重複や無駄を大きく削減できる。プロジェクトの初期段階に問題点を発見し、それらのセクタが連携することで、意匠から部材、管理までの流れが最適化され、手戻りがなく計画的な施工を行うことができる。コストや納期の改善が望まれる状況に対して、その解決がBIMによって実現されようとしているのだ。

建築物の設計だけではなくメンテナンスまで、建築のライフサイクル全般にわたるデータの統合管理を可能にするBIMは、建築業の生産性を大幅に向上する建築革命として期待されている。

(掲載:2008年11月)

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