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建設産業のコラボレーションを果たし
生産プロセスの革新が期待されるBIM

偽装問題に始まり厳しい状況にある建設業界にあって、業務効率や労働生産性の向上は死活問題だ。ここで、企業や職種の垣根を越えて業務プロセスを変革し、全体最適化を推進するBIM(Building Information Modeling)は、建設業の救世主になると期待されている。

建設業におけるバリューチェーンの分断
連携のズレは産業の弱さにつながる

産業のバリューチェーンには、自動車産業を代表とする垂直連携や、建設産業のような水平連携のモデルがある。自動車産業ではアセンブリメーカーを頂点にして、その下に数千社にも及ぶ部品業者が連携している。この中で、アセンブリメーカーによる仕様変更は3D CADデータなどで情報共有され、リードタイムの短縮に役立っている。さらに最近は、PLM(Product Lifecycle Management:企画・開発・設計・製造・生産から出荷後のサポートやメンテナンス・廃棄までのすべての過程を一貫して管理)の導入による生産性の向上も図られている。

一方の建設産業では、意匠設計、構造設計、設備設計、施工、メンテナンスというセクタが水平に連携し、その下に約52万業者(平成19年3月)という膨大な事業者が存在している。しかし反面、建設投資の4分の1を上位50社の大手ゼネコンが受注するという垂直構造と、資本規模の小さい業者は各セクタの専門業者に依存するという二重構造にもなっている。各セクタはそれぞれ専門性が高く、自動車産業のような情報共有は遅々として進まない。もちろん3D CADは使われているが、部門や企業の壁を越えた情報共有はされておらず、建設リードタイムを短縮するのは難しいのが実情だ。

結果として、建設業の労働生産性の低さが実際に現れている。国民経済計算年報によれば、1990年をピークに年々労働生産性は低くなり、製造業に比べて4割以上も低くなっている。その原因を1つに求めることはできないが、単品受注生産(建設工事は工事ごとに個別性が強く、工事の注文者の意向に大きく左右されるため、作業の標準化・合理化が難しい)、労働集約型生産(屋外での移動作業を伴うため、労働集約性が高い)、経営管理能力の未熟な中小零細企業社が多いことなどが言われている。そしてセクタが分断された分業構造も、低生産性の大きな原因となっている。

建設業と製造業の労働生産性比較
国民経済計算年報より
(名目労働生産性は、経済活動別国内総生産(名目)を経済活動別就業者数で割って算出)

BIMによるコラボレーションで
建設産業のバリューが紡ぎ出される

こうした労働生産性向上の救世主として期待されているのが「BIM(Building Information Modeling)」である。BIMは3D CAD+データベースであり、3Dデータに加えて、意匠、構造、設備などの各設計図面情報、積算情報、部材・設備情報、内装・家具調度品を含めた資産管理情報なども紐づけて管理できる。例えば、3Dデータの屋根や柱、ドア、壁、窓、床などの部材ごとの「属性情報」から、性能やコストも即座に把握できる。さらに時間軸を加えて履歴管理も可能となり、施工スケジュールなども参照できる。

つまりBIMによって、各セクタや企業の壁を越えた、意匠設計からメンテナンスまでのコラボレーションが一気通貫で可能となる。意匠段階でさまざまな素材を駆使して作り上げた3Dデータをベースに、構造計算段階で工夫した点や施工時の作業状況などを説明できるような3Dデータの設計図を用意する。そして施工段階では発注者、設計者、施工者の3者がこのデータを共有して意識統一を図る、といったワークフローも実現するのだ。

こうしたコラボレーションによってフロントローディングが可能になり、プロジェクトの初期段階で必要な部材の量、内容を正確に把握して発注することもできる。また、従来は詳細設計の段階で判明した躯体と設備の干渉を事前に解決したり、ビルの形状や配置で太陽光の反射がどのような温度分布になるか、ビル周辺の風速などの環境シミュレーションを行うことで、事前にビル形状や配置を変更するなど、設計・施行の品質向上や環境配慮にも役立つ。

さらに、人間とシステムの双方で確認できる体制になるため、ミス防止にもつながる。現場のデータやチェック結果を施工者と発注者が共有することで、元請施工者が発注者に提出する書類などを減らして環境負荷を下げることもでき、伝言ゲームや待ち時間も少なくなり、リードタイムを大幅に短縮することが可能となる。分断されているチェーンがBIMによるコラボレーションでつながるメリット、そこから生まれる可能性は大きい。

生産性向上、ライフサイクル最適化、エコ対応
さまざまな問題に立ち向かう建設業界

最近の建築物は、設計要求や仕様のほかにも基準や指針などが複雑化した結果、建築設計の業務が高度に専門化している。チームを組んでプロジェクトを進めるようになり、それぞれが連携して調整する作業が難しくなった。しかしBIMの導入によって、1つの3Dモデルに設計情報を集約し、建築物の設計を担当する専門家がコラボレーションできるようになると、建築設計者がすべての情報を把握・調整することになり、生産性の向上が見込まれる。

それは、建設生産ライフサイクルの全体最適化にも貢献する。建築物は大量な部品から構成されているにもかかわらず、個々の部品レベルでの生産管理やライフサイクル管理は実現されていない。その原因は、部品点数だけでなく、多様なセクタが相互に関わることによって膨大な部品が混在している点にある。省資源、エコ・マネジメントの観点が高まる現在では、BIMの活用がここでも大きな効果を発揮する。

建設生産ライフサイクルを最適化し、セクタのコラボレーションによって生産性を向上することができるBIMは、これからの建設業における期待の中心として広がっていくだろう。

(掲載:2008年12月)

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