CAD/設計InfoCAD/設計Info CADを利用して設計を行う際に必要なノウハウを紹介。

CAD/設計Infoのトップへ

モノづくりのグリーン化を加速する
3D設計の活用

世界同時不況によって、企業の成長戦略を描くことが難しくなっている。そのような中、環境に優しい商品のニーズは高く、引き合いは堅調だ。環境優先のデザインこそが環境負荷を低減すると同時に、企業の持続的成長をももたらす。できるだけ環境負荷を減らしモノづくりのグリーン化を加速する、3D設計の活用について考える。

環境負荷を低減する
デザイン・イノベーション

地球温暖化防止の取り組みは、モノづくりに関わるすべての人々が取り組むべき大きな課題だ。従来の生産性向上、無駄の排除など、結果としての環境負荷低減という発想では限界がある。モノづくりのライフサイクル全般にわたって環境負荷を低減しなければならない。特にモノづくりの上流に位置する企画・設計部門の果たす役割は大きい。

企画・設計の段階で、環境に優しい素材やリサイクル可能な素材の使用、部品点数の削減、不良品が出ないつくり方などを実現できれば、環境負荷は大きく減少する。しかし、いったん設計が固まり生産工程に進んでしまうと、下流工程で環境負荷低減の工夫を行うには限界がある。製品自体の改善はできずに、生産工程の範囲内での工夫とならざるを得ないからだ。

もちろん、生産ラインを止めて、設計にフィードバックすることも可能だが、そのこと自体が環境負荷を増大させる。また、設計の段階で不良品を減らす工夫をしておけば、顧客へ訪問して修理対応をする必要もなく、顧客から不良品を送ってもらう手間もかからない。その結果、輸送・修理などにかかる無駄なエネルギーの削減、交換部品なども発生しないことで資源の消費を抑えることができるなど、環境負荷低減につながる。

従って、環境負荷を根本的に低減するには、上流工程でのデザイン・イノベーションが必要となる。部品点数の削減や環境負荷の少ない素材の使用、リサイクル性を考慮するなど、環境優先の設計を行う方法論と仕組みが必要となる。ポイントとなるのは、3D CADソフトを中核とした設計手法の革新とその普及だ。

環境負荷低減のポイントは
デジタルプロトタイピングとBIM

これを実現する方法として、デジタルプロトタイピングやBIM(Building Information Modeling)が注目されている。デジタルプロトタイピングは、3D CADソフトで作成した3Dモデルによってバーチャルな事前検証を行い、実際の試作品の作成数を減らすことで環境負荷低減を実現することができる。そして、BIMは建築物の設計対象を周辺環境も含めた3Dモデルに落とし込んで環境負荷を低減する。

デジタルプロトタイピングを簡単に言えば、「バーチャルな試作品をつくる」ことだ。3D CADソフトはこれまで、さまざまな製品の設計に活用されてきた。その役割は、デザインを3Dモデル化し、部品の干渉はないか、安全性が確保されているか、生産ラインでスムーズに生産できるかなど、製品性能や機構上の検証がメインだった。製造する前に物理的な試作品をつくり、要求仕様や安全性をクリアしているかなどを実際に検証する必要があった。従って、試作品製作に時間やコストがかかり、リードタイム短縮の壁にもなっていた。手戻りが発生すると、さらに時間やコストも増大し環境負荷も増大する。

しかし、デジタルプロトタイピングで3Dモデルのバーチャルな試作品をつくれば、物理的な試作品製作にかかる時間やコストを削減できるだけでなく、環境負荷の少ない素材の活用なども容易になる。形状や接続具合、各部機能のテストでも、さまざまな材料をすばやく検証することが可能となる。設計段階において、新品の素材の代わりにリサイクル素材を試す、あるいは材料節約のため部品を小さくしても安全基準をクリアできるかなど、3Dモデルでのシミュレーションによって効果を確認できる。

一方、BIMは建築の設計分野でのデジタルプロトタイピングとも言えるもので、3Dモデルを利用して事前に問題点を洗い出し、設計プロセス全体を効率化することで、コストだけでなく環境負荷を低減できる。例えば、「3Dモデルのビルの中をまんべんなく風が通り抜けることで室温を下げる形状を探る」といったシミュレーションによって冷房を不要にする設計をするなど、環境負荷の最も低い最適解の発見につなげることができる。

環境負荷低減のツールとしての
3D設計のインパクト

デジタルプロトタイピングやBIMの中核となるのは、いずれも3D CADソフトだ。しかし、従来の3D CADソフトは設計者が形状を細部まで一つずつ作成していく、単なるモデリングツールとして利用しているにすぎなかった。

一方、デジタルプロトタイピングやBIMは、スペックや機能から形をつくるファンクショナルデザインと呼ばれ、形状作成ではなく機能や仕様を焦点に置いた設計手法だ。例えばパーツやアセンブリは、力、速度、トルク、材料などといった属性情報から計算、解析を行って作成する。こうしてできたパーツによって、設計の初期段階から仮想的に検証することで、設計変更に要する工数や試作も減りリードタイムを短縮できる。設計者は環境負荷の少ない素材や形状を検討できるようになり、モノづくりのグリーン化が進められる。3D設計は環境負荷を低減する手法として、モノづくりに大きなインパクトをもたらすことは間違いない。

(掲載:2009年7月)

企業のITセキュリティ講座