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手触り感覚のデザイン
デジタルモックアップのインパクト

バーチャルとリアルを結ぶデジタルな実物大模型、デジタルモックアップが注目されている。触覚を生かした3D触感デバイスと3Dデジタルクレイモデラーによって、粘土をこねて試作品をつくるような手触り感覚のデジタルモックアップが可能となり、モノづくりの世界に大きなインパクトを与えている。

3Dモデルを用いた
デジタルモックアップとは

商品の開発では、まずプランナーがコンセプトを考え、それをデザイナーが具体的な形状にデザインし、それに基づいて設計者が詳細設計を行い、その後モックアップ(実物大模型)をつくって、重量感や使い勝手あるいは組立時の干渉などを検討するのが普通だ。モックアップは図面と実物とをつなぐ仲立ちとしての役割を担ってきたが、その製作には時間とコストがかかり、リードタイム短縮の壁になっていた。

近年、3D CADやCAM/CAEの普及に伴い、モックアップを製作せずに、3Dモデルに基づいて製品の外見や内部構造について比較検討するデジタルモックアップが導入され始めた。デジタルモックアップは、3D CADソフトで造形した商品の3Dモデルを用いて、製品の外見や内部構成などを確認する手段だ。実際にモノを製作しないので、リードタイム短縮やコストダウンが可能となる。

また、従来のモックアップは、その利用場面がデザインや操作性の確認など、製品開発の段階に限られていたが、デジタルモックアップではモノづくりの工程全体で活用することができる。デジタルモックアップなら、多くの人がネットワークを介してモデルを見ながらコミュニケーションできるので、設計以外の部署でもより製品に近い3Dモデルで検討が可能となる。

手触り感覚で
バーチャルな3Dモデルを造形する

このデジタルモックアップは3D CADソフトによって可能となったが、それを加速したのが3D触感デバイスと3Dデジタルクレイモデラーだ。これによって、実際に粘土をこねるように、バーチャルな3Dモデルを自在に造形できるようになった。例えば、3D触感デバイス「PHANTOM」と3Dデジタルクレイモデラー「FREEFORM」(開発元:SensAble Technologies, Inc.)を使えば、手触り感覚でデジタルモックアップをつくることができる。

3D触感デバイスであるPHANTOMの特徴は、人間の手や指に装置からの「反力」を感じられる点にある。扱う手には物体の“表面”に沿うような動きが伝わる。穴に入るときはその方向にすべるように動き、穴から出るときは曲線に応じて反発してくる。こうして、バーチャルな物体からの反力を感じながら、コンピュータ上で感覚的な造形を行うことができる。空中にある“仮想粘土”を伸ばしたり、引っ張ったり、穴を開けたりするような感覚で3Dの物体をデザインできるのだ。

一方、3DデジタルクレイモデラーのFREEFORMはボクセル(厚みを持った粒子)で造形するが、PHANTOMを3Dマウスのように使うことで、実際に触っている感触を得ながら3Dモデルを生成できる。これまでのマウスやキーボードの作業では不十分だった入力を、3D触感デバイスによる自由な操作で、スケッチ画や写真などの2Dイメージからスムーズに3Dモデルを作り出すことが可能だ。

さらに最新のバージョンでは、ボクセルとサーフェス/ソリッドを自由に取り扱えるようになり、数値で表現する部分と、感覚的に形状表現する部分とを融合させたハイブリッドモデリングも可能になった。また、テクスチャマッピング機能も追加され、写真などのイメージをそのまま3Dモデルに張り付けて表示することもできる。意匠デザイナーと設計者のコラボレーションに大変有効なツールだ。

3D触感デバイス「PHANTOM」によるモデリング作業
3D触感デバイス「PHANTOM」によるモデリング作業

触覚を活用した
デジタルモックアップのインパクト

人間にとって、物に触れながらデザインすることは古来からの表現方法だが、これをコンピュータ上で再現することは困難だった。

3D触感デバイスの登場によって、今までコンピュータで扱えなかった触覚を簡単に再現できるようになり、仮想物体の重さを感じることや、それが硬い物体か柔らかい物体かも知ることができるようになった。バーチャルな3Dモデルであっても、ゴムの柔らかさや金属の硬さを実際に触感できるので、従来の機械系CADでは発想できない形状のデザインも可能になる。

デジタルモックアップが与えたインパクトは、このようにリアルなモックアップ製作を可能にし、さらにその時間とコストを削減しただけにはとどまらない。製品設計の初期段階やデザインの段階で頻繁な変更が生じた場合でも迅速な修正が可能となり、ユーザニーズの反映や品質向上などに役立てることができる。さらに、デジタルモックアップは設計部門以外の部署でも、より製品に近い状態である3Dモデルでの検討が可能となる。その結果、多くの部署がコミュニケーションしながら製品開発に関与できるようになり、製品開発プロセス全体の最適化を推進することが可能となる。

(掲載:2009年8月)

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