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事業者に消費者保護を義務付ける
住宅瑕疵担保履行法とは

2005年の耐震偽装事件をきっかけにして、2009年10月1日、消費者保護の観点から住宅瑕疵担保履行法が施行された。住宅購入後10年以内に売主が倒産しても補償が確実に受けられるよう、新築住宅の売主などに対し保険加入などを義務付ける法律だ。建築業界にとってどのような影響があるのかを考える。

消費者保護を目的とした
住宅瑕疵担保履行法とは?

2005年11月に発覚したマンションの耐震偽装事件は記憶に新しい。あるデベロッパが分譲したマンションは、建て替えを含む大規模な補修工事が必要となり、多額な費用がかかることが判明した。しかし、デベロッパは補修工事費用を賄うことができずに倒産。その結果、何の落ち度もないマンション購入者が費用を負担せざるを得なくなった。国や自治体も一定の資金補助を行ったが、マンション購入者は既存の住宅ローンに加えて二重の負担を抱えることになった。

新築住宅については、既に2000年施行の「住宅品質確保法」に基づいて、新築住宅の売主は住宅の主要構造部分の瑕疵について10年間の瑕疵担保責任を負うことになっていた。しかし耐震偽装によって、こうした法制度だけでは消費者保護として不十分であることが明らかになった。売主や請負人の財務状況によってはその責任が果たされず、住宅購入者が大変な不利益を被ることが明白になったからだ。

そこで、再発防止を目的として建築基準法や建築士法の改正などが行われ、その一環として2009年10月1日、消費者保護の観点から住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)が施行された。建設業者および宅地建物取引業者(新築住宅の供給者)は、構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分について、10年間の瑕疵担保責任を負うことになった。

法律施行後は、消費者に引き渡される新築住宅はすべて資力確保措置の対象となる。資力確保措置とは、瑕疵(欠陥)を補修するために必要な資金を確保することであり、実際には保険への加入あるいは保証金の供託を行うことが義務付けられている。いずれを選ぶかは事業者の任意だ。

どのような住宅が
住宅瑕疵担保履行法の対象となるのか?

住宅瑕疵担保履行法の対象となる住宅は、「人の居住の用に供する家屋または家屋の部分」となる。具体的には、新築マンションや建売住宅、注文住宅のほか、賃貸住宅や社宅なども含まれる。ただし対象となる新築住宅は、「建設工事の完了から起算して1年以内で、人が住んだことのないもの」であり、竣工から1年以上を経過した住宅や、竣工後1年以内でも誰かが住んだことのある住宅は対象外となる。また、新築住宅であっても、買主や発注者が宅建業者であり、自ら賃貸するものは対象外だ。

対象となる新築住宅で10年以内に瑕疵が発覚した場合には、保険や供託金から補修費などが補填される。例えば保険の場合は、事業者が補修を行えば、事業者に対して保険金が支払われる。万一、責任を負うべき事業者が倒産などで対応できない場合には、新築住宅の取得者が保険金を直接受け取ることができる。供託の場合も同様だ。なお、保険の場合には工事中に保険法人の検査を受ける必要があるため、工事着工前の申し込みが必須となる。

資力確保措置は
誰がどのように行うのか?

資力確保措置(保険加入もしくは供託)が義務付けられるのは、新築住宅の請負人または売主のうち、建設業法に基づく建設業の許可を受けた建設業者と、宅地建物取引業法に基づく宅地建物取引業の免許を受けた宅地建物取引業者だ。具体的には、新築マンションや建売住宅であればその売主業者、注文住宅であればハウスメーカーや工務店など(建設業者)となる。

新築住宅を引き渡した業者は、毎年3月31日と9月30日(年2回の基準日)から3週間以内に、その時点の保険や供託の状況を国土交通大臣または都道府県知事に届け出なければならない。届け出を行わない場合は、罰則の適用や処分の可能性があるほか、基準日の翌日から50日を経過した日以降、新たな新築住宅の請負契約や売買契約を締結できなくなる。なお、最初の基準日は、2010年3月31日となっている。

供託は、供給した新築住宅の補修に要する費用などの支払いが履行できるように、過去の供給戸数に応じて算定された金額の現金などを供託所に預け置く。一方、保険は住宅暇疵担保責任保険法人との間で、暇疵が判明した場台に保険金を支払うことを約した保険契約を締結する。

住宅瑕疵担保履行法の保険と供託

供託は自らの財産を10年間、供託所に預け置くもので、いったん供託すると10年間は基本的に取り戻すことができない。供託額は、引き渡した新築住宅の戸数により異なる。例えば、引き渡した戸数が1戸の場合は2000万円、10戸の場合は3800万円、100戸の場合は1億円となる。一方、保険の場合には、10年間の保険料を一括して前払い(掛け捨て)するもので、保険法人により保険料は異なるが、新築一戸建て住宅なら6〜9万円程度、新築マンションなら1戸あたり4〜6万円程度と想定される。

売主業者、ハウスメーカーや工務店は、保険あるいは供託をどのように選択すればよいのだろうか。供託の場合、供給戸数が増えるにつれて供託金も巨額になるが、1戸あたりの供託金は割安になる(500戸を超える場合1戸8万円)。このため、年間の供給戸数が多い大規模業者にとっては有利となる。しかし万一、住宅品質確保法に基づいた一般瑕疵担保(住宅瑕疵担保履行法の対象となっている構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分以外の瑕疵を担保)の義務が発生しても供託金は使えない規定となっており、補修費用は事業者持ちになる。こうした点で資力のない事業者では難しい選択となる。

一方、保険は1戸あたりの金額が安く、また一般瑕疵担保の義務が発生した場合でも保険金が支払われるため、小規模事業者にとっては掛け捨てではあるものの、保険を選択した方が負担もリスクも低くなる。ただし、保険加入は工事着工前の手続きから始まるため、工期の遅れも考慮してできるだけ早めの保険加入手続きが必要となる。さらに、保険に加入するためには施工規準が定められているので、その基準をクリアした施工を行う必要がある。

住宅瑕疵担保履行法の施行によって、消費者保護に向けて一歩前進したことは間違いない。ただ、国土交通省が8月に実施した消費者アンケートでは、66.9%の人が同法を「聞いたことがない」と回答している。同時期に実施された事業者へのアンケートでは、「保証金の供託または保険への加入が義務付けられる」ことを知っていると答えた住宅事業者は全国平均で98.4%であり、その落差が大きい。

今後、売主業者、ハウスメーカーや工務店は、住宅瑕疵担保履行法を知らない建主に対してアピールし、保険金負担などへの理解を求めることが必要となる。

(掲載:2009年12月)

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