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3D CADの便利さに落とし穴!
その形状に「設計者の意思」は入っているか

3D CADは最初こそ操作が難しく感じるものの、その操作に慣れてしまえば「簡単」に形状を作成できる便利なツールとなる。しかし、この「簡単」が設計者の思考回路をシャットダウンさせてしまうことがある。計画図を「手描き」で描いていた時代のように形状の一つ一つに「設計者の意思」は入っているだろうか。

「作成しやすい形状」が
「作製しやすい形状」ではない

近年、大量生産される製品に対して、形状の自由度やコスト的なメリットが大きいことから射出成形部品が多用されている。成形部品は一つの部品に多数の機能をもたせる場合が多いことから、形状が複雑化する傾向がある。このため二次元設計するのには厄介な部品でもあったが、3D CADの導入により複雑な形状を比較的容易に作成できるようになった。しかし「容易に作成」できることで、設計者が本来考慮すべきことを見落としてはいないだろうか。以下に樹脂の射出成形部品を例に挙げて考えてみる。

例えば、3D CADでは簡単に形状をコピーして配列することが可能である。成形部品は強度アップ、成形時の反りを防止するために補強用のリブを入れる場合が多いが、安易に形状の「コピー」を繰り返して必要以上のものを作成していないだろうか。リブの本数を増やすということは、金型側の加工部位を増加させることになる。部品の体積も増加するため、材料費がアップする。

また、3D CADでは既存のソリッドの面をスイープして簡単に形状を作成できるため、「適切な形状」ではなく「出来てしまった形状」を作成していることはないだろうか。

例えば「形状を簡単に作成する」ために、部品の外形面をスイープして補強リブを作成したとする。その補強リブ形状を金型に彫る必要があるが、溝が深いと切削加工によって彫り込むことが困難になり、専用冶具を作製し放電加工などにより溝を作製する必要が出てくる。これでは「設計意思が入っていない形状」を作製するためだけに、金型費がアップすることになる。3D CADで「簡単に作成した形状」を「実際に作製」するには、時間とコストがかかることを忘れてはならない。

「見えやすい三次元計画図」に
油断しない

数百から数千点以上の部品で構成される製品を二次元設計する場合、設計者が二次元計画図上の「空間」や「部品形状」を確認している時間は短いものではなかった。このように製品に対してまったく「付加価値」にならない作業に時間を費やしていたが、3D CADの「見えやすい計画図」によって「付加価値」にならない時間を削減できるようになった。しかし、この「見えやすい計画図」に油断してしまい、失敗を起こしてしまうことがある。

設計者が計画図を作成するうえで、考慮しなければならない項目の一つが組立性である。三次元設計しているにも関わらず、いざ組み立てが始まると「工具が入らない」「手が届かない」などということが、しばしば発生していないだろうか。組立性を確認する方法として、デジタルモックアップツールなどを使用する方法もあるが、検証時間を考慮すると各開発ステップで1回程度にとどめておきたい。3D CAD上で効率良く組立性を確認するためには、しっかりとしたアセンブリ構造を構築することが大切である。

まずは、装置を構成するユニットのアセンブリを作成する。そして、ユニットのアセンブリ配下に機能ブロックごとのアセンブリを作成する。さらに機能ブロックの配下に組み立て上の組品アセンブリを構築する。アセンブリ構成が整理されていれば、組み立て順に合わせて表示させることが容易であるため、組み立て工程をイメージしながらシミュレーションできる。

設計者は、どうしても「どうすれば組み立てられるか?」ということを考えながら設計をしてしまいがちだが、シミュレーション時は三次元計画図を確認しながら「どうなると間違えて組み立てられてしまうか?」「作業性の悪いところは?」といった視点で行うとよい。最終的な判断は、製造部門とデジタルモックアップツールなどを用いながらの組み立て確認になるが、この結果と設計者自身のシミュレーション結果の相違点を考察し、次回の設計につなげることが大切である。「見えやすい計画図」に油断しない設計で、製品と設計者自身のレベルアップを図ろう。

「三次元計画図」と「現物」が
ミスマッチしないために

既存の技術から大きな変更が生じるような製品を開発する場合、どうしても設計変更が多発してしまう。このように一度試作した装置を設計変更しようとした場合、「変更検討中の部品」「実機検証するための部品」など、多数の「確定していない部品(実機の状態と違う部品)」がアセンブリに配置される。複数の設計者により開発を進める場合、常に隣接するユニットがどのような変更を行っているかに注意を払っていないと、同じ空きスペースを使用して設計変更を行ったために、いざ変更部品を組み込もうとするとほかのユニットと干渉していたなどということが起こる。設計者が想定していた「三次元計画図」と「現物」のミスマッチである。

このような事態を回避するためには、構想設計段階で三次元計画図のユニット単位(設計者単位)のスペースを明確にしておくことが大切である。

ただし、大半の製品は小型化が望まれており、設計スペースに限りがあるため、隣接するユニット同士でお互いのスペースを侵略し合いながら詳細設計が進められる。このような場合は、ユニットのアセンブリの配下に、機能ブロックごとに「現状の実機を構成するアセンブリ」「設計変更検討中のアセンブリ」を作成するようにして、ほかの設計者に対して「どの機能ブロックを設計変更しようとしているか」「どのスペースを使用しようとしているか」「現状の実機にはどの部品が付いているか」ということを明確にしておく。

「実機の状態」と「三次元計画図」との差を明確にしておかないと、ほかの設計者からは「設計者の意思」が見えないのである。

(掲載:2010年5月)

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