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3Dツールを活用し
標準化に流されない設計者を目指す

各企業には、長年の製品開発から生まれた技術的なノウハウが蓄積されている。また、それらの中には、どの設計者でも簡単に流用できるように標準化されているものもある。しかし、それをよいことに、その論理を理解せずに技術流用して、ただノウハウに沿って設計を行っていることはないだろうか。これでは設計者自身がレベルアップできないばかりか、窮屈な設計を強いられる原因や、重大な不具合を生む原因にもなる。そこで、3Dツールを駆使してこのような局面を打開しよう。

見えないノウハウを
見える形に

開発経験が少ない設計者は「A、B、C、Dの機構は成り立ったが、Eの機構が入らなかった(偏り設計)」「Aを成り立たせるためにBを変更し、Bを成り立たせるためにCを変更し……、Eを成り立たせるためにAを変更……(負の循環設計)」という失敗をすることが多い。これはユニット全体のバランスを取りながら設計を進めていないことが原因であり、この状態を抜け出すには大きな手戻りを伴うことがある。

「偏り設計」や「負の循環設計」

このような失敗を避けるには、あらかじめ適用するノウハウや設計標準を頭に入れ、各機構を成り立たせるために必要なスペースを割り出し、部品単体や組み立て時のばらつきを考慮しながら図面に入れる公差までイメージして詳細設計を進める必要がある。豊富な開発経験を持つ設計者であれば、このようなことを頭の中で整理しながら詳細設計を行っている。

特に、あらかじめ技術的なノウハウや設計標準が頭の中に入っているかどうかは重要な点である。しかし、ノウハウを調べた結果「論理的な解説がなく理解できない」「資料によって矛盾がある」「結論が曖昧」などと感じたことや、そもそもノウハウが技術資料になかったということを経験したことはないだろうか。

現実にノウハウは「実験の繰り返しによるつくり込み」に由来するものも多く、「論理的にすべてが解明できていないもの」や「曖昧さを残したもの」、「開発を通して設計者間で受け継がれているもの」などが多数存在する。ベテラン設計者はこのようなことも考慮しつつ、バランスを取りながら詳細設計を行っている。だが、この「バランス取り」能力は経験量に依存するところが大きいため、経験の少ない設計者には大変で根気のいる作業である。

それでは「バランス取り」を若手設計者はどのように行えばよいだろうか。その方法の一つに「見える形で残す」方法がある。ノートを1冊用意して、そこに詳細設計で検討した経過を残していこう。編集のしやすさで言えば電子データで残すのもよいが、さまざまな場面に簡単に持ち運べて手軽に記入できるノートを勧める。この「設計経過整理ノート」を作成するポイントを以下に示す。

  • どんな些細な検討内容も残す
  • 適用したノウハウや設計標準を分かるようにする(「資料名」「聞き取り者」「標準名」など)
  • 検討し却下した内容も残す
  • 設計経過が分かるように計画図を残す
  • 記入した日時やイベントが分かるようにする
  • 少しでも気になる内容は問題点としてピックアップしておく

重要なのは、3D計画図が詳細化されていった経過が確認できることだ。また、このノートは技術資料として他者に示すものではないので、設計者自身が振り返り作業を行えるレベルのものとし、時間をかけずに作成する。正式な技術資料を検索するための目次レベルの内容でも十分である。

設計経過整理ノート

詳細設計が進行すれば、計画図をプリントアウトし次のページに貼り付け、検討内容を追記する。こうすることで各機能ブロックの進捗状況が確認できるため、偏った進め方になりにくい(偏り設計防止)。また、過去に検討した経過を振り返るのに便利であるため、同じような失敗を防止できる(負の循環設計防止)。

3D計画図の特性を生かし「見えないものを見える形に」、「曖昧なものを明確に」して、「偏り設計」「負の循環設計」から脱出だ。

3Dツールで
窮屈な設計を回避する

開発している製品やその部位により差はあるが、詳細設計で頻繁に行き詰るパターンの一つに「スペース上の制約」という問題がある。そもそもスペース上の制約条件がない製品はほとんどなく、機能が同じだとしても小さくつくることが製品の大きな付加価値になる場合が多い。また、構想設計である程度の見込みを立てていたとしても、詳細設計時にはしばしば不測の事態が起こる。そのため、設計者は常に「スペースとの戦い」に多くの時間を費やしている。

ここで言うスペースとは、部品を配置するためのスペース、組み立て時に必要なスペース、メンテナンス時に必要なスペースなどであり、これらをバランスよく設計しなければ、組み立て工数のアップ、組み立て不良の発生、保守性の悪さなど、品質やコスト面に影響が発生する。特に組立性に関しては設計標準やノウハウ集が作成されている場合も多く、それをクリアするのに苦労する。「機能面を考えると、組立性が……。組立性をよくはできるが、部品単価がアップ……。設計標準を守るのは難しい……」といった具合である。

組立性だけに限ったことではないが「設計標準やノウハウに記載されているので、ただそれを守るようにだけ設計した」のでは、設計者の存在意義がないのではないだろうか。時には「標準から外れてはいるが同等のことができる」、「このほうが標準よりも優れている」といったような方向からのアプローチが必要であり、これが窮屈な設計から抜け出す方法でもある。

ただ、このように書くのは簡単である。実際には設計標準やノウハウから外れた作業を認めてもらうために、どのように製造担当者にアプローチするかということが難しい。例え、その案が優れていたとしても、それをうまく伝えられなければ採用されないこともある。

まずは案が固まった時点で、簡単に3D計画図に落とし込む。この時には、部品の詳細まで作り込む必要はなく、組み立てのイメージが分かる程度にとどめておく。デジタルモックアップツールなどを導入していれば組立性を容易に検証しやすいが、3D CADしかない場合でもCAD上に組み立て工具を配置することや、部品を組み立て順に表示することでイメージを伝えられる。

もちろん解決案がないような場合には、製造担当者に3D計画図を確認してもらうことでよいアイデアをもらえることもある。問題解決にはより多くの知恵を入れたほうが早いことは言うまでもない。ただし、設計者が問題点を明確に伝える工夫をする必要はあるが、一人で問題を解決するために費やしている時間を考えれば効率的である。3Dツールを、より多くの意見を取り入れるための手段として活用し、窮屈な設計から抜け出そう。

品質向上からベクトルが
それていないか再確認

当たり前のことではあるが、3Dツールによる検証、設計標準、ノウハウ集などは製品の品質向上・品質保証につながっていなければならない。検証の実施や、標準やノウハウを守るということ自体が目的になっていることはないだろうか。

既存の検討書に合わせて、同じように計算する業務があるとする。ただ単に作業を早く終わらせることだけを考えると数値を置き換えるだけでよいが、多くの設計者は「なぜ、この検証が必要か」、「検証NGの場合はどのような不具合が想定できるか」、「現状の検証方法が最適なのか」など、「なぜ? どうして? もっと!」というようなことを意識しながら業務に取り組んでいることと思う。仮に検証後のアウトプットが同じであるとしても、その検証目的や成り立ちの論理を考えながら遂行するのとしないのとでは、設計者の力のつき方に大きな違いが生じる。これは3D検証にも当てはまる。

例えば、樹脂成形部品を「強度解析した検証結果」と「現物の破壊試験結果」に大きな差があったとする。この時、「強度解析の精度はこんなものか」と考えてはいけない。強度解析すること自体が目的ではないはずである。解析時の条件設定に問題はなかったか、現物が破損した場所がウエルドラインになっていないか、ガラス繊維の流れる方向の影響かなどといった観点で考察し、「品質向上」「品質保証」につながる次のアクションをとる必要がある。

優れた3Dツールが導入され、設計標準やノウハウ集が充実し、設計業務がスムーズに行える環境になったとしても、それを使用する設計者がそれらの目的を忘れないようにしなければならない。

(掲載:2010年9月)

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