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設計段階で
環境配慮データを活用する

昨今、環境配慮設計(グリーン設計)が重要だと言われるが、具体的には設計者や設計チームはどのような環境配慮ができるのだろうか。設計者も設計において環境へ配慮をしたいのはやまやまだが、とてもその時間的余裕がない。そもそも設計者が配慮すべき環境要素とはどうやって定量化できるのか。設計段階に環境配慮検証の自動化機能を実現しながら、コスト削減にも役立つような検証ツールが登場しているので紹介する。

環境配慮検証の
絶対評価と相対評価

およそ企業がCSR(企業の社会責任)報告書・環境報告書を定期的に出すようになって、企業内の省エネや廃棄物対策など環境対策への意識が向上したように、製造業の環境配慮に対する意識は、まず企業全体の方針や経営者が定める目標が定まってから動き出すと言ってよい。一般に環境対策は、一設計者や設計チームを超えた問題として受け止められている。

製造業の製品の評価項目としてはこれまで、基本仕様、性能、新技術の取り込みといった品質評価や、材料コスト/製造コスト評価が主だった。だが近年は人の健康や生物などに有害な物質の有無、リサイクル性、大気・水質・土壌への影響など環境に与える影響の評価が厳しく追及されるようになってきている。

製造業の環境対策は当初、欧州RoHS指令、REACHなど諸外国での有害化学物質規制や消費電力規制に対して製品を準拠させることから始まった。電気・電子製品、エレメカ製品をはじめ多くの製造業ではサプライチェーン管理を徹底し、梱包材を含む調達部品の材料から規制対象物質を閉め出すことに努めてきた。部品またはアセンブル製品が含有する化学物質量の判定は測定器による計測をベースとする絶対評価の手法が用いられている。

REACHでは2万点以上の化学物質管理が必要となることから、部品表にひも付く材料の化学物質管理はPDM/PLMツールに取り込まれている。規制物質品目の拡大や、製品仕向け地の地域市場ごとに規制内容が異なることへの対応から、絶対評価のシステムは大規模なものとならざるを得ない。

設計者レベルでは、採用する部品材料からカドミウム、鉛、水銀、六価クロムなど有害物質を排除し、部品点数を減らして省エネ設計を実現するなどの対策を講じてきたが、それ以上の対応は難しかった。

この絶対評価法に対して、豊富な環境負荷データベースをもとに、設計部品に採用した材料の採取、製造、使用から廃棄までの環境への影響の評価パラメータとして二酸化炭素(CO2)排出量、エネルギー消費量などを相対的な評価値で定量化し、その材料を別な代替物質に置き換えた場合の評価値と比較検証することを可能にした相対評価法が実用化されている。

この環境負荷の相対評価では、例えば有害規制化学物質の基準値に対するクロシロ判定はできない。しかし、設計者が設計段階から製品の環境への影響を考慮し、代替材料の検討を可能にするという新しい特徴をもっている。相対評価法は、製品の開発設計から廃棄に至るライフサイクルアセスメント(LCA)検証の仕組みを導入することにより、環境に対する配慮を設計段階から可能にする。

設計CAEと併用して
代替材料を検証

ソリッドワークス・ジャパンが2010年4月にリリースした「SolidWorks Sustainability(サステナビリティ)2010」がその相対評価の最初のツールとなった。このツールは、設計者が解析シミュレーションで複数の構造設計案の相対評価を実施するのと同様に、複数の材料案の環境条件を相対評価するツールとして開発された。

まずアセンブリ部品の条件として、材質、製造場所、移動手段などを指定すると、環境に対する負荷量としてCO2排出量、熱エネルギー量、大気汚染量、水質汚濁量の4つのパラメータにグラフデータが表示される。このデータは設計者が構造を決定するのに採用した特定材料に関して、原産国の採取から製造、加工、廃棄までのCO2排出量などを算出して表示したもので、独PE International社のデータベースをもとにしている。

SolidWorks 2010のアセンブリ可視化機能を活用して、個々の部品にひも付いている材料特性をSustainability 2010で計算すると、CO2排出量などのパラメータが個々の部品データに加わる。これをリスト化してCO2排出量の高い部品モデルからソートし、上位にリストアップされた部品から順に対象を絞り込み、環境に配慮した材料への変更を検討することができる。

設計者が最初に材料を指定したデータは、まず基準値として定義され、その後環境配慮によって部品を変更した場合に前回の基準値と比較して、4つのパラメータごとに良くなった、悪くなったという比較がグラフ表示される。例えば、ポリエチレンを基準に採用した設計を、類似検索の機能を用いて異なる材料特性を持つポリプロピレン材に変更して比較評価できる。これら基準データと代替材料データの比較評価は、レポート作成ボタンをクリックするだけで、社内レポートとして自動作成できる。

さて、構造条件は変わらないが、材料が変わったことにより、その材料でアセンブリ剛性など構造的に問題がないかを確認する必要が生じる。この場合、設計CAEであるSolidWorks Premium またはSimulationの構造解析を併用することで、手間をかけずにこの解析検証ができる。

SolidWorks 2010アセンブリ可視化機能
SolidWorks 2010のアセンブリ可視化機能(画面左部分)と連動して特定アセンブル部品材料の環境評価ファクターを表示中のSolidWorks Sustainability 2010(画面右コラム)(提供:ソリッドワークス・ジャパン)

材料変更は一大事
コスト削減に役立つ場合も

設計者はこの環境配慮検証ツールにより、ベストな材料を選ぶのではなく、これまで自社で採用していた材料に対して、相対的にもっとよい作り方ができないかを検討することができるようになる。

実は設計者にとって、材料を変更することは一大事である。材料の変更はしばしば、供給元の変更、コストや納期など手配の問題を生じさせ、会社として経験値がない場合には、社内でも大きな波紋を引き起こすことがある。ただし、環境に配慮した設計を推進するという会社の命題を満足するために設計者ができる取り組みとしては、この材料変更の検討が要になるだろう。

最終的には原価計算をする必要があるとしても、その手前の段階として、設計者が環境配慮による材料変更によって、技術的に従来とは別の材料がベターであるという判断をほかの部門に対して示すことができる。

また、材料変更後の解析計算により、基準データとの比較で肉厚を薄くしても剛性が十分あることが確認できる場合は、CADに戻り、構造設計に変更を加える。このように、環境配慮設計と構造解析が連動する結果として、場合によってはコスト削減につながることは、十分配慮されてよいだろう。

(掲載:2010年10月)

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