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失敗の振り返りと
3Dツールで設計の勘を養う

十数年前までは「つくる」「実験」「直す」のサイクルで製品をつくり込んでいたため「手戻りの大きい失敗」は多かったが、設計者は「実験の機会」に恵まれ、設計の勘を養うチャンスも多かった。一方、3D開発のスタイルでは「机上で失敗を防ぐ」ことが多くなる。3D開発に移行することで失敗を早期に発見する割合は増えるが、若手設計者は「実機で失敗を確認する機会」に恵まれない状況になってきている。ベテラン設計者に負けない設計力を身につけるために、失敗の振り返りと3Dツールで設計者としての勘を養おう。

構想段階の不採用案や
詳細設計時の失敗も大きな財産

「どのような検証を行って、この部品形状を決定した?」と上司に質問され、「とりあえず、勘でこんなものかと」と回答する設計者はいないはずである。しかし、設計業務において「勘に頼る」こと自体は悪いことではなく、「勘が働く」ことで開発効率がアップすることも多い。

ベテラン設計者と若手設計者の「アウトプットの内容」や「業務遂行のスピード」を比較すると、そこには大きな差がある。開発期間が短くなった今日の開発では、ベテラン設計者といえども膨大な設計業務をこなしていくのは容易ではないが、限られた開発時間をどの部分の検討に費やすかを綿密に計画して設計を進めることにより対応している。そして、これを実行するに欠かせない能力の一つが「勘」である。

例えば、あるユニットの構造体を保持するための補強部材があるとする。製品のコストを下げるためには、その部品に負荷されるさまざまな荷重を予測して強度解析を行い、必要な強度が確保できる最低のコスト形状を見つけて試作を行うことが、その部品自体に対しては手戻りを少なくする方法である。またこれとは別に、製品の品質を左右する重要な機構(失敗した場合に手戻りが大きい機構)が存在したとする。実際の製品開発ではこのような検討項目が何十何百と存在するが、ベテラン設計者は過去の経験から「勘」を働かせて、このような項目に「検討の優先順位」をつけ、「検討時間」を割り当てる。

そして、前者の検討項目に対して「優先順位が低い」と判断ができれば、一旦は補強部材に関しての設計は簡単に「勘」で乗り切ってしまい、「優先順位が高い」と判断した後者の機構検討に時間を費やすことが可能だ。次に、「優先順位の高い設計」を乗り切ったあとに、残りの時間で「優先順位の低い設計」に対して論理的な机上検証や、実機検証による裏づけを行う。場合によっては、次の開発ステップに検証を先伸ばしするという判断もできる。

設計時間は無限にあるわけではない。開発全体の流れを把握し、納期内に仕様を満たす製品に仕上げるために「ベストな業務選択」を行う必要があり、それを計画するにも実行するにも「設計者の勘」が必要不可欠である。「勘で最適な部品は設計できないが、勘により最適な製品開発は行える」ともいえる。

そもそも、どのようにして「設計の勘」が働くようになるのだろう。「設計の勘」は「机上検証結果と実機検証結果の相違点を追求する」ことにより養われると考える。従って、設計経験の浅い若手設計者に「勘が働かない」のは当然ともいえる。また、これは「机上検証」が不十分な「現物主義の設計」や、「実機検証」が不十分な「推測に頼った設計」を行っていたのでは「勘」は養われないことを意味しており、ベテランの設計者といえども長年の設計の進め方がよくなければ「勘」は働かない。

それでは、開発経験の少ない若手設計者が少しでも「勘」を働かせるためにはどうすればよいのであろう。それは、「失敗」から学ぶことである。ベテラン設計者と比較して、若手設計者はどうしても失敗が多くなるが、これを逆に利用する。

例えば、ある機構を設計して実機検証を行ったが、思うような結果が得られなかったとする。これを「ただの失敗」に終わらせないためには、「机上検証結果」と「実機検証結果」の相違点を明確にし、何が悪かったのかを振り返ることが必要だ。これがしっかりとできれば、一つの機構を設計するのに「2回の設計経験ができた」ことに匹敵する。もしくはそれ以上である。

また、「実機検証」するまでもなく「構想設計」や「詳細設計」で机上検証がNGになった内容に対しても、そこまでの経緯を明確に整理しておく。「設計の勘」をつけるための準備だと思おう。「すべての失敗」を「無駄」に終わらせてはならない。

既存部品の強度解析で
レベルアップ

従来、CAEを用いた強度解析などはその専任者が行っていた。しかし、3D CADとCAEの連携が容易になったこと、処理能力の高いコンピュータが比較的安価に入手できるようになったこと、開発のスピード化が進行したことにより、設計者自身がCAEを行う機会が増えている。

ある部品に対して強度検証を行い、「強度解析結果(机上検証結果)」と「実機検証結果」との整合性を確認するためには、「適切な解析」と「適切な実験」が行えなければならない。「適切な解析」を行うためには、その強度解析ソフトの特徴を理解したうえで、部品に対する拘束条件などの解析情報を適切に設定する必要がある。しかし、「適切な解析」を行っていても、「強度解析結果」と「実機検証結果」に大きな差が発生することもある。

例えば、強度解析の対象物が樹脂成形部品であった場合、「成形時に発生するウェルドラインが強度低下を招いた」「金型のエジェクタピン跡を起点にして亀裂が広がった」「成形時のガラス繊維の流れ方向により強度が変化した」など、「解析方法」の知識だけでは「現物」との整合性は取れない。「解析結果」と「実験結果」の差を埋めるには、解析対象物の材質や作製方法についての知識も必要である。そして、作製方法を意識した対象部品のつくり込みや、適切な材質の選定、部品作製に影響する内容を正確に金型業者と摺り合わせが行えなければ設計者が意図した「現物」は作製できない。これらにも設計経験が必要である。

それでは、若手設計者が適切な検証を行うにはどうすればよいであろう。新規開発している製品の強度解析を行うような場合、事前検証として既存製品の類似部品を強度解析してみるとよい。既存製品の部品であれば、既に3Dデータは存在するし、部品も安価に短納期で入手できる。この部品の「解析結果」と「実験結果」にギャップがあった場合は、そのギャップが何によって発生しているのかを突き止める。もちろん既存の類似部品に過去の検証結果がある場合は、それらを確認することも重要である。これにより新規部品を設計する時に「解析結果」と「現物」の整合性を取りながら検証を進めることができる。また、部品作製方法の影響を受けると推測できる場合は、事前に他部門や金型業者に相談することも可能だ。そしてなによりも設計者自身のレベルアップが図れる。

3Dツールで振り返り、
次の開発につなげる

少ない設計経験で実力をアップするためには、日々の業務を振り返って改善を図ることである。しかし、開発の真っ只中では、その余裕もなかなかない。そこで、開発完了時に自分自身やほかの設計者が行った設計業務を振り返ってみるとよい。特に、自分よりも設計経験の長い設計担当者のアウトプットを見直してみる。「構想検討の進め方」「実機検証の進め方」「不具合解析の進め方」などの「製品設計の痕跡」を追うことで学ぶことができる。

振り返りを行う場合は、技術資料だけを確認するのではなく3D計画図も確認しながら行う。ベテランの設計者であれば、設計経過が容易に確認できるようにアウトプットが整理されていることだろう。技術的なノウハウだけではなく、設計のどのようなタイミングで、どのような3Dツールを用いて、どのような検証を行っているのかも確認しておきたい。

実際に、過去に行った3D検証について、疑問点や改善点などがある場合は、再度行ってみるのもよい。特にほかの設計者が行った検証を、実際に自分自身で再現してみると新たな発見がある。

近年の開発のスピード化は、若手設計者が実力をつけるための環境に適しているとはいいにくい。その分、研修などによりフォローする体制も整えられつつあるが、実務からしか養えないものもある。このことを十分に認識し、若手設計者自身が少ない実務経験の中で多くを学べるように工夫して、ベテラン設計者に負けない設計力を身につけよう。

(掲載:2011年2月)

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