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「楽しい! 面白い!」から始める
BIM導入作戦

BIMの普及を急ぐ建築業界各社。しかし、2D CADから3D CADへの移行に戸惑う設計者が操作の修得に手間取り、結局、使われぬままになってしまうケースも少なくない。他方、数日の研修を受けただけで実戦に参加し、たちまちこれを自在に使いこなす若者も多い。それをあと押ししているのが「頭で考えたカタチが、実際に見える」という3Dならではの楽しさと面白さだ。できる部分から使い、ナチュラルに楽しむことで前進する、BIM学習とその効果について紹介する。

BIM導入の最大のハードル

大手ゼネコン各社の活発な動きに牽引される形で、建築業界におけるBIM化の流れが加速している。それまで様子見していた地方ゼネコンや、BIMそのものにも無関心だった中小設計事務所も、いまや確実に拡がりつつあるこの流れを無視できなくなってきたようだ。

しかし、十二分な準備期間や研究を経てBIM化に着手した大手企業とは異なり、こうした“あと追い”組のBIM導入は、現実には思ったほどにはスムーズに進んでいない。多くの場合、こうした企業が最初に行うのはBIMツール/3D CADの導入だが、このツール導入が予想以上に高いハードルとなることが多いのである。

その原因はさまざまだが、こうした企業の多くが“3D CAD導入”をかつての“手書きから2D CADへの移行”と重ね合わせ、当時と同じような流れで導入しようとして頓挫するケースが多い。2D CAD導入も低いハードルとはいえないが、基本的には鉛筆&ドラフタから2D CADへの“作図ツールの持ち替え”であり、慣れの問題という要素も強かった。実際、設計者の多くは数日の操作講習を受けると、あとは実際にCADで作図しながら技術を向上させていくことが多かった。

しかし、同じこのやり方で3D CADを学ぶことは難しい。それは3D CADの操作の難しさだけが原因ではなく、これが作図ツールである2D CADとは全く性格の異なるツールだからである。

3D CADは図面を描くツールではない。より純粋に建物の“形状”そのものを3次元でつくり出すツールだ。建物は本来3次元の立体物だから、そのデザインは3Dで行う方が合理的だし、他者に設計意図を伝えるうえでも3次元の方が的確だ。しかしそれ故に従来の設計スタイルであったアイデアを図面で表すことに慣れた設計者は、その考え方自体が3D化へのハードルとなる。

3D CAD操作を身につけ使いこなすためには、まずその作図中心の設計スタイルを改める必要があるわけだ。そうでないとうまく使いこなせない可能性も高く、結果として2D CAD利用歴の長い経験豊富な設計者ほど、挫折しやすくなってしまう。これでは、BIM導入の原動力となるべき中核スタッフが逆に一番の障壁となりかねない。

2日間の研修で実戦投入された新入社員

もちろん、2D CADユーザ全てにとって3D CAD化が高いハードルとなるわけではない。例えばパソコン好きで、2D CAD操作に長け、好んでCGでパースをつくりたがるような設計者なら、率先して3D CAD導入に取り組み、操作を修得してしまうかもしれない。だがその場合も水平展開で同様の問題が発生しがちで、部門全体への普及に手間やコストが掛かり過ぎることが多いのだ。

BIM先進企業である大手ゼネコンは、事前に十分時間をかけて広報・教育を行い、そのうえでじっくり操作講習を進めるなど段階を踏んで展開していくが、中小企業の多くはそこまで手間を掛けられないのである。だが、中には手間を掛けずに、短時間で3D CADの操作を身につけてしまうケースもある。

「Build Live Tokyo」は、48時間の限られた時間内でBIMを使って課題の建築計画をつくり競う日本唯一のBIMコンペである。毎回多数のBIM先進企業が参集するこの一大イベントで、昨年話題を呼んだのが最優秀賞を受賞した企業の制作体制だった。同チームの中核はBIMに通暁したBIMスペシャリストたちだったが、その指示のもと実際に3D CADでモデリングしたのは、数日前にわずか2日間の3D CADの操作講習を受けただけの新人チームだったのだ。若く実務経験もないこの若者たちは、初めて触れた3D CADを先輩たちが驚くような速さで修得し、精緻な3D建築モデルをつくり上げたのである。

実務経験がなく2D CAD経験も少ない新人たちに図面への執着はなく、むしろゲームや映画を通じて3DやCGに慣れている。そのため3D空間での形づくりを純粋に楽しむことができたのである。実はこの「楽しむ」ことが、3D CAD習得における重要なカギなのだ。前述の、いち早く3D CAD操作を修得した上級者にしても、CAD好き・パソコン好きとして3Dを楽しむ気持ちが強かったはずだ。別の中規模ゼネコンでは、熟練者ぞろいの設計部への3D CAD普及が遅れる一方で、横で見ていた構造や設備の担当者が「面白そう」と3D CADに興味を持ち、見よう見まねで使い始めてしまった例さえある。

3次元空間で自由に形状をつくることのできる3D CADは、つくることが仕事のデザイナーにとって、本来とても便利で楽しいツールだ。図面主体の設計では、思い浮かべた形のアイデアをいったん2Dに置き換えて図化しなければならないが、3Dならそんな手間は掛からない。3Dのアイデアを3Dで出力し3Dで検証できる。極めてストレートかつ自由度も高く、曲面を複雑に組み合わせたデザインなど、2Dでは表現しきれなかった形状も自在に扱える。いわば2D CADというツール自体の限界によって制限されていた設計者の創造力が、3D CADで解放されるのである。クリエータなら楽しくないはずがないだろう。

「3D CADだからこそ」の楽しさを活かして

このように考えていくと、3D CADの導入教育は、新人など若手に対するそれと熟練者に対するそれを分けて考えるべきであることが分かってくる。若手は、前述のように3D CADの基本操作を教えたら、あとはできるだけ自由に使わせ、3D CADによるデザインワークの楽しさを実感させることが大切だ。設計部門の新入社員などは、全員最初から3D CADの修得を必須とすべきだろう。しかし、長年2D CADを使ってきた熟練設計者に対してはそうはいかない。彼らに3D CADの操作を教えても、設計実務に戻った途端、使い慣れた2D CADへ戻ってしまいやすいのである。

では、どうすればよいのか。経験豊富な技術者に対しては、新しいツールやシステムを頭ごなしに押し付けるのでなく、まず“なぜそれが必要なのか”、“それを使うことでどんなメリットが生まれるのか”、“どんな風に業務が変わるのか”など、導入背景から具体的に説明し、BIM化・3D化によって変化する設計手法のあり方全般についてきちんと理解し納得してもらうことが前提となる。また、その研修自体についても、識者の講演や同業他社の事例など、できるだけ具体的な内容で共感しやすくする工夫が必要だ。操作研修はそれらを踏まえて行うべきなのである。

こうした準備が終わればいよいよ実務への展開となる。だが、これも必ずしもBIM設計の流れに沿って進める必要はない。もちろん若手社員には研修が終了次第3D CAD業務に積極的にチャレンジさせるべきだが、熟練者については、無理に3D CADの使用を強制すべきではないだろう。むしろできるだけ負担や抵抗感の少ない作業で3D CADを使ってもらい、その楽しさ・面白さ・便利さを実感させ、さらにそれを設計部門全体で共有していくことを優先すべきなのだ。

そこでお勧めしたい方策の1つが、設計部内など社内のコミュニケーションツールとしての3D CAD活用である。例えば、3D CADを修得した若手がデザイン案をこれで制作し、この3D建築モデルをもとに設計部内での打ち合わせや社内向けデザインレビューも3D CADで行うのだ。先輩と新人が3Dモデルを見ながら意見を交わし、その場で修正を加えるなどしていけば、自ずと3Dの楽しさや分かりやすさも共有される。活発に意見交換が行われれば3D化へ皆のモチベーションが高まる。そこへ営業マンらも巻き込めば、営業部門にも3D CADファンを育てられるから、3D CAD全社普及もよりスムーズに進められるだろう。多少時間はかかるが、より確実な3D CAD水平展開策の1つとして検討してみてはいかがだろうか。

(掲載:2011年3月)

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  • BIMを導入すると、従来の2次元で図面を作成したやり方から、設計の手法が画期的に変化します。図面は3次元モデルを切り出して図面が作成されるので、モデルの作り込みを行えば改めて作図する必要ありません。また、平面図と立面図があわない!といったことも生じません。

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