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エコ・省エネの環境配慮を設計に
BIMで挑むサステナブルデザイン

省エネルギー法の改正によって300平方メートル以上の建物の新築や増改築時は省エネ措置届け出が求められるようになり、建築の世界でもさらなるエコ・省エネが求められている。これを実現するため、建物の環境評価や着工前評価がクローズアップされている。かつては手間も時間もコストもかかった評価だが、現在はBIMを活用することができる。

エネルギー消費の大きい住宅・建築物
環境性能向上がCO2排出削減のカギとなる

CO2排出削減を目指す世界的な流れの中、あらゆる分野で地球環境への配慮が求められるようになった。もちろん建築分野も例外ではない。実際、建築物が環境に及ぼす影響は想像以上に大きい。

例えばアメリカでの調査では、アメリカが消費している全エネルギー量の4割近くが商業ビルと住宅などの建築物によって使われているという。しかも、それはアメリカの総発電量の7割を消費し、原材料の4割を使い、さらに全体の3割を占める温室効果ガスや膨大な建設廃材をも生み出している。裏を返せば、このような建築物の環境性能の向上こそ、CO2排出削減のカギともいうことができるだろう。

一方、我が国の住宅・建築分野でも2008年の改正省エネ法の施行により、大規模な住宅や建築物の建築主に対して新たな命令規定が導入され、一定の中小規模の住宅、建築物も新たな届け出義務の対象となった。

具体的には、床面積の合計が300平方メートル以上〜2,000平方メートル未満の建築物について、新築・増改築時には省エネルギー措置に関する届け出が義務付けられたのである。300平方メートルといえば、サイズ的には中小規模のビルに相当する。従来では2,000平方メートル以上ある大型の建物だけが対象だった届け出の義務が拡大され、規模の大小にかかわらず、省エネ対策を施すことが求められるようになったのだ。

建築業界では、近年このような動きが拡大している。改正省エネ法施行と機を合わせ、神戸市など多くの自治体が環境性能に優れた建物への優遇措置を打ち出し、建物のオーナーなど発注者も設計者・施工者に対して環境性能に関する配慮を求めることが増え、「CASBEE」などの建物環境評価指標へも注目し始めている。こうした環境性能に優れた建物を、確実に、しかもコストを抑えて効率良く造れるかどうかが、これからの建築設計・施工における他社差別化ポイントとしてクローズアップされるようになったのだ。そこで、登場するのが「サステナブルデザイン」と呼ばれる設計スタイルである。

建築計画の初期に精密な環境評価を行う
「サステナブルデザイン」

サステナブルデザインとは、もともとは「Design for Sustainability」という言葉から来たデザインコンセプトであり、直訳すれば“持続性のためのデザイン”といった意味となる。その目指すものは“将来に渡って、可能な限り持続していける社会を作りだす”デザインだ。

建築物が環境に与える影響の大半は、設計段階で決まる。そこでサステナブルデザインによって建物に優れた環境性能を与え、エネルギー効率を向上させて環境負荷を抑え、省エネ効果で収益性を向上させて、オフィスとして、住まいとして健康的な場所にしていく。さらに、そのような建物を増やし、エネルギー資源を守り、地球環境保護に貢献しようというのだ。

環境性能の向上を目指すサステナブルデザインにおいては、まずプロジェクト当初の建物の設計段階で、計画する建物の環境性や経済性、安全性、社会性など、あらゆるファクターを精密にシミュレーションし、解析していくことが必要となる。こうして得た解析結果を踏まえて設計していくことにより、施工前段階から建物の環境性能を向上させることが可能となる。しかし、従来の建築計画で初期段階に環境解析が行われることはほとんどなかった。それが行われるのは、多くの場合は意匠設計完了後で、その完成した設計を元に専門家が専用の解析ツールを使って行うものだった。

なぜ、建築計画の初期段階で環境解析が行われてこなかったのか。

日本の建築業界で環境評価指標として広く使われているCASBEEには、屋内環境やサービスの質、屋外環境、エネルギー、資源、材料、そして周辺環境まで、極めて幅広い項目の評価が含まれている。また、建物の環境性能は、建物の環境品質を示す「Q値」を、外部に与える環境負荷である「L値」で割った「BEE値」で環境性能を数値化している。

しかし、こうした評価作業は極めて複雑で大変な労力がかかり、意匠設計が固まってない段階では行いようがないという現実的な問題があった。しかし、今やこれを一気に解決する技術が登場した。BIMである。

BIMで実現するサステナブルデザイン
環境配慮の設計で他社差別化を

BIM(Building Information Modeling)は、設計初期段階で3D CADなどのツールを用いて3D建築モデルを作成する。そして、これに空間情報、地理情報、建築部材情報など、多様な情報を持たせて一種の建物データベースとし、設計段階から施工、維持管理までトータルに活用、生産性の向上を図っていこうという手法である。

BIMの先進国であるアメリカに比べると日本はその導入に大きく後れを取っていたが、日本のBIM元年といわれた2009年以降、大手ゼネコンを中心に急速に普及が進み、設計者自身が3D建築モデルを作ることも、最近では普通に行われるようになっている。

当初、このBIMの活用メリットとして、3Dゆえに可能な干渉チェックで図面や建具表などの整合性を高いレベルで確保できることや、3D建築モデルを活かしたプレゼンテーションが挙げられたが、現在注目されているのがシミュレーションや解析への応用である。

すなわち、BIMツールで作成した3D建築モデルを使い、環境シミュレーションを行おうというのだ。これにより意匠設計者は、設計中の建物の環境性能を具体的な数値で比較検討し、評価し、これを踏まえた上で、優れた環境性能を付加していくことが可能になるのである。

こうした流れを受け、CADベンダーもBIMツールに連携する解析ソフトや、BIMツール自体に関連する機能を付加し始めており、CASBEEの各種評価を自動化するソフトも既に登場している。しかも、これらは意匠設計者自身が使うソリューションとして作られており、いずれも使い易さを追求している。

BIMユーザの設計者なら、設計初期段階でこれらを使って設計中の建物のエネルギー消費や光環境、風の流れなどのシミュレーションを行い、そのエネルギーコストやCO2排出量などを、合理的な根拠に基づいて容易かつすばやく計算できるようになった。

このようにして、初期段階でさまざまな環境シミュレーションや評価を繰り返し、その結果を設計へ反映していくことで、意匠設計者はコストと手間を大きくかけずにサステナブルデザインを実行できるだろう。急速に高まる建築物の環境性能ニーズにいち早く応え、明確な他社差別化を実現できるはずだ。

(掲載:2011年5月)

関連リンク

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  • BIMを導入すると、従来の2次元で図面を作成したやり方から、設計の手法が画期的に変化します。図面は3次元モデルを切り出して図面が作成されるので、モデルの作り込みを行えば改めて作図する必要ありません。また、平面図と立面図があわない!といったことも生じません。これからBIMを導入される企業の方はぜひ一度ご覧ください。

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