CAD/設計InfoCAD/設計Info CADを利用して設計を行う際に必要なノウハウを紹介。

CAD/設計Infoのトップへ

分野を超えた「現場」のつながり
今こそ発揮されるBIMの実力

長年にわたり、企業間そして部門間でそれぞれ独自の文化を育み、CAD製品やデータのやりとりが難しかった建設業界。これまでつながりの弱かった現場のCADデータだが、BIM(Building Information Modeling)による連携が生まれ始めている。

「施工図」に代表される
日本の設計/施工現場の特異性

建設業界の企業、特にビッグゼネコンと呼ばれる大手企業では、企画・計画から意匠設計、構造、設備、積算、施工といった建築の多岐にわたる事業フェーズごとに独立した部門を擁している。そして多くの場合、各部門はそれぞれ独自の風土と文化を持ち、部門(=分野)ごとに専門の外注業者を擁している。

このため、図面1つとっても、部門ごとで作成にはそれぞれ別のCADを使い、その作成方法も異なるといった事態が頻出する。これに合わせてCAD製品も、各分野に特化した専用CADが個々に高度な発達を遂げてきた面があるが、同時に、企業内でも部門が違えばCADデータのやりとりが難しいという状況も生まれてしまった。

このような“断絶”ぶりは、企業間ではいっそう大きなものとなる。各社とも図面の作成方法は“自社流”で、各社現場ではその"自社流"の図面が求められる。そのため大手ゼネコンの中には、その自社流の作図スタイルに合うCADをわざわざ自社開発する企業もあった。

このように世界的にもユニークな独自の進化を遂げた日本建築界のCAD/図面環境であるが、建築現場で不可欠な「施工図」は、欧米では全くといっていいほど使われない。むしろ、施工図という概念自体が存在しないのだ。欧米では、実施図に施工図同様の密度を持たせ、あらためて施工図を起こすことはしないのである。

この施工図の例ほど極端ではないにせよ、日本と欧米の「現場」は、実務レベルで相当大きな違いがある。

日本には日本独自の建築基準法という法規が背景にあり、建築や設計自体の考え方や用語、方法論も違う。当然、そこで使われる各分野の専用CADも、日本の法規や業務スタイルに最適化されている。もちろん海外製CADも日本で広く使われているが、その多くは図面作成に特化した汎用CADか、他にない特殊な機能を持った製品が中心だ。設備や構造、積算などの専門性の高いツール類については、やはり建築業界各分野の事情に合わせて開発された国産製品が有利なのだ。

真価が発揮されないBIM
データ連携できない「現場」のCADたち

このような事情から、日本でのBIM普及は当初さまざまな問題に直面した。いうまでもなく、BIMとはプロジェクト初期段階で3D建築モデルを作り、情報を集約して建物のライフサイクル全般で活用し、これにより効率化やコストダウン、品質向上を図ろうというものだ。

そこで、BIM普及はまず最上流の意匠設計分野から始まったが、当時BIMツールはほぼすべて海外製品で、いわば異質なCAD文化の産物を日本独特のCAD環境に適応させる必要があった。さらにこれをクリアしても、構造や設備など下流工程に展開させようとすると、日本の建築業界の特異性と衝突し、大きな問題となってくるのである。

意匠設計の後は、構造、設備、積算、施工と多様な工程が控え、それぞれ独自の図面やデータが必要となる。本来のBIM環境なら、BIMツールで作り情報を加えた3D建築モデルを基に、工程ごとにそのデータを活かしながら専用CADなどで加工・修正し、必要な図面を作っていくのが基本スタイルとなる。

しかし、海外製BIMツールと国産専用CAD類ではストレートなデータ連携が難しく、コンバータなどを介する必要があった。そのため精度の高いデータのやりとりが困難な場合もあった。条件によっては、3D建築モデルデータを活かせないまま、専用CADで1から入力し直して必要な図面を作ることも多かった。

これでは、せっかくの3D建築モデルも単なる完成見本でしかなく、BIM本来のメリットが活かされているとは到底いえないだろう。もちろん、計画や意匠設計レベルに限れば、すばやい可視化による設計品質の向上や効率化、プレゼンテーションへの応用による合意形成のスピードアップといった効果は大いにあった。

しかし、それだけではどこまで行っても意匠設計ツールでしかない。構造や設備、積算、施工など、さまざまな業務現場で本来のBIMとして威力を発揮させるには、これら各分野の専用CADや各種専用ツールとBIMツールとの、より高精度かつスムーズなデータ連携がどうしても必要だったのだ。

整い始めたソフトウェアと共に
異なる部門の「現場」が結ばれるとき

こうした課題は日本の業界固有の問題だけに、欧米のBIMベンダーが対応するのは難しいと思われていたが、近年ではこの流れも変わりつつある。

例えば「IFC(Industry Foundation Classes)」の普及である。3D建物情報をやりとりするには、そのためのデータ交換フォーマットが必要となる。IFCフォーマットとは、BIM普及を推進する非営利国際組織IAI(International Alliance Interoperability)が策定/普及するデータモデルで、BIMによって作られた3Dモデルデータをソフトウェア間で共有するための標準データモデル/データ交換フォーマットと位置づけられている。実際に多くのBIMツールがこのIFCフォーマットに対応している。構造や設備、積算などの下流工程で使われる国産の専用CADなどのツール類がIFCに対応すれば、BIMとのデータ連携が現実のものとなってくるのである。

従来こうした専用CADは、各分野へ専門特化しているだけにBIMとの連携意識は低く、3D対応についても遅れ気味だった。しかし、これもまた流れは急速に変わり始めている。建築業界全体の流れの影響を受けて、専用CAD/ツールの多くが3Dやデータ連携などを視野に入れ始めて“BIM的”進化が動きだしたのだ。既に、具体的なBIMツールとの連携を謳う製品も登場した。もちろん海外ベンダーの方も新たなBIM市場として日本の建築業界にいっそう力を注ぎ、日本の建築業界のローカルなニーズへも柔軟に対応し始めている。

こうした流れを象徴するBIMツールとして、福井コンピュータの「GLOOBE」が登場した。GLOOBEはBIMシステムとしては最後発だが、日本の法規に準じ、日本の設計・施工スタイルに最適化された純国産BIMツールだ。この夏登場の新バージョンで、構造、設備、積算や各種解析との連携も実現し、問題の「施工図」についても、同じく福井コンピュータの「J-BIM施工図CAD」と連携を果たしている。

国内外BIMソフトウェアの登場と進化、専用CADの革新と共に、いよいよすべてがつながり始めた。建築業に関わるあらゆる「現場」で、もう一度BIMの活用について考えるべきときが来たのである。

(掲載:2011年8月)

関連リンク

  • 大塚商会のCADソリューション
  • 2D、3D建築CADからBIMデザインまで建築設計を幅広く支援します。
    木造から大規模建築、日照・日影、外構・造園など建築設計に特化した建築CAD製品をご紹介します。

企業のITセキュリティ講座